『月と農業 —中南米農民の有機農法と暮らしの技術』  ハイロ・レストレポ・リベラ | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『月と農業 —中南米農民の有機農法と暮らしの技術』  ハイロ・レストレポ・リベラ


日本ではどこでも見られるというものではなくなった満天の星と月の微妙な満ち欠け。特に新月から満月、そしてまた新月への推移は農業暦で中心であった。農民も漁民もかつては月齢を取り入れて農事を決め、海岸での魚介の採取を行ってきた。中南米の農村では今も月と農業の関係は作物の種まきから始まり、あらゆる農作業の手順の決め手になっている。「月齢が農業に及ぼす影響を知らない者は収入を減らすか、破産するだけ」とさえいわれる所以である。

本書はまず世界各地の暦の歴史、なかでもマヤ、アステカ、インカが使っていた暦を概説し、月の誕生の起源、月の動き、太陰周期と月齢を解説した後、月齢が植物、動物の繁殖、潮の干満への影響を述べているが、特に著者がブラジル、コロンビア、ニカラグアなどの小農から聞いてまとめた月と農林漁業の関わりを、作物などの種類毎の収穫や家畜の繁殖・解体時期に至るまで、伝統的な作業手順の解説と月齢に応じた作業の実施を図解で明らかにし、実際に根ざす知恵や技術、発想を紹介している。

本書で示された月齢と播種や施肥、剪定などの時期が科学的に正しいか? その科学的根拠はあるのか? と問われれば、必ずしもすべて正しいか疑問があると監修者もいうが、ラテンアメリカの農民が経験を集積したこれらの技術や知識の中から、読者は取捨選択して楽しんで欲しいという。監修者はいずれも青年海外協力隊などでラテンアメリカで活動した経験があり、訳者もまたJICAの現地調整員として在勤経験を有する。

〔桜井 敏浩〕

(福岡正行・小寺義郎監修、近藤恵美訳   農文協(農山漁村文化協会)  2008年3月 174頁 2,400円+税)