『地球時代の多文化共生の諸相-人が繋ぐ国際関係』 浅香 幸枝編著 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『地球時代の多文化共生の諸相-人が繋ぐ国際関係』 浅香 幸枝編著


日本における外国人登録者数が2005年に180カ国200万人を超え、ラテンアメリカからも日系人を多く受け入れていることから、多文化共生のモデルを解明するために南山大学の研究者を中心に組まれた共同研究の成果。

「第1部 多文化共生政策」では、日本と移民受け入れ国であるブラジル、アルゼンチンの多文化共生政策の比較、「第2部 多文化共生の諸相」では、実際に試みられている多文化共生教育、在日日系南米国籍者のビジネスへの挑戦、定住化にともなう日本の制度との共生、地域社会の南米出身者による宗教行事の受容に至る過程、日本からの創作民謡のブラジル文化との共生実現、「第3部 多文化共生の歴史と概念」では、インカ、アステカそれぞれの周辺諸民族との関係かの古代国家の特質、メキシコの地方先住民の地域アイデンティティと多文化共生の歴史、江戸時代の国学形成による異相との共生を探求している。「第4部 多文化共生の懸け橋」は、現在パラグアイ、ベネズエラ、ボリビアと3人いる日系人大使との対話を通じて、多文化共生の中で生きてきた日系人の体験を語らせている。外国人との共生が本格的に始まろうとしている日本が、ラテンアメリカの多文化共生の経験からモデルないし知恵をくみ取る手がかりを得ようとする15本の論考はそれぞれに興味深く、編者の適切な解説がより理解を深めてくれる。

(行路社 2009年3月 373頁 2800円+税)

『ラテンアメリカ時報』2009年夏号(No.1387)より