連載エッセイ226:新井賢一「南米コロンビア・雲と星が近い町から」その10 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ226:新井賢一「南米コロンビア・雲と星が近い町から」その10


連載エッセイ 223

「南米コロンビア・雲と星が近い町から」その10
コロンビア旅行博覧会2023開催

執筆者:新井 賢一(Andes Tours Colombia代表 ボゴタ在住)

業界関係者にとっては年に一度のお祭りであるコロンビア旅行博覧会が今年も開催されました。毎年2月最終週に開催される旅行博は国内外から多くの旅行業界関係者が集結する一大イベントです。

今年のコロンビア旅行博はコロナ禍の影響はもはや片隅にもないという程のすごい熱気に包まれていました。会場内は歩くのも困難な程の入場者で賑わい、活況を呈していました。私は長年コロンビア国内において常勤している唯一の日本人旅行業者という事もあり、一体どれだけの入場者数か分からないほどごった返していた中においても会場内にいた唯一の日本人(含むアジア系)でした。

近年コロンビアを訪れる外国人観光客は増加傾向にあり、新しいデスティネーションとして注目されています。日本人の方々のコロンビアに対するイメージは未だに「麻薬組織・テロ・ゲリラ」と言ったネガティブな印象が根強く残っているようですが、欧米や南北アメリカ大陸各国の人々にとってそれはもはや昔の話として認識されており、事実国内の主要観光地では非常に多くの外国人観光客の姿を見かけます。

コロンビア国内の観光事情は昨年来インフレ率の高さ(ベネズエラ・アルゼンチンに次いで中南米では三番目の高率)と通貨安・移動費用(航空券やバスなどの運賃)高騰などでなかなか厳しい状況下にありますが、国外から来訪される方々にとって特に通貨安は逆にコロンビアを旅行するのに割安になっています。その事もあってか昨今では国外からの観光客誘致に更に力を入れています。私もそれは同様であり、コロンビア国内唯一の日本人旅行業関係者として近隣諸国・そして日本から来訪される方々の為に日々コロンビアの見どころなどを情報発信しています。

コロンビアの観光的魅力は何と言っても変化に富んだ地形・地域でしょう。カリブ海から標高5,000m級の雪山まであり、砂漠地帯もあればアマゾンジャングルもあり、世界遺産・コーヒー地帯や五色の川あり、先住民の人々に容易に接する事も出来る。コロンビアに全てがあるという事ではないですが他の国々にはこれはあってもこれはない、それがコロンビアはかなり多く「凝縮」されているように思います。赤道に近い為一年を通じて気候が安定していて四季がない(雨季と乾季の違いのみ)ので一年を通じて旅行し易い環境にもあります。

コロンビア国内では地域によって異なる多くの民族舞踊・音楽・お祭りなどが盛んなのも特筆されます。気候帯により伝統音楽のテンポが違い民族衣装も全く異なる、その違いを知ってみるのも良いでしょう。コロンビアの伝統音楽・舞踊などは日本の方々には全くと言えるほど知られていないのが現状だと思います。

花や鳥・蝶などに興味がある方にとってもコロンビアは魅力的な国です。鳥や蝶類の種類では世界屈指の数を誇るコロンビア。バードウオッチングツアーなども盛んです。日本から来訪されたお客様と共に先日訪れたカリ市内の動物園内にはとても多くの蝶が舞うエリアがあり、日本でもよく知られているモルフォ蝶他多くの蝶達がまさに乱舞していました。

ほかにも国内東部・メタ川流域ではスポーツフィッシングも盛んで世界中からマニアが訪れるフィッシングスポットです。現地は国立公園・且つ厳密に管理されていて認定業者による事前立ち入り許可申請が条件とされている事、個人の単独行動は一切禁止されている事などもあり、スポーツフィッシングの場としては整備されています。それもあってか大型の魚・怪魚(ピラニアでは今や個体数が激減している赤い目が不気味な”レッドアイ”など)等、様々な種類を釣り上げる事が出来るようです(スポーツフィッシングですから勿論その場ですぐリリース)

コロンビアは時間的・距離的に日本から最も近い「南米大陸の国」です。アマゾンエリアにも空路移動では最短時間でたどり着く事が出来ます。コロンビアアマゾンはブラジル・ペルーと国境を接する三国国境地帯という珍しい地域でもあり、且つ普通に暮らしている先住民の人々に接する事も出来ます。コロンビアアマゾンエリアは開発の手が殆ど及んでおらず、自然のままの状態が未だ多く残っています。

前述の通り私はコロンビア国内唯一の日本人旅行業関係者という存在ですが、コロンビア政府から何かの支援・協力を頂いた事などは一度もなく、全て個人で長年コロンビアの魅力を発信し続けています。勿論支援や協力があればもっと力を入れる事も可能かと思いますが、それがない現状、個人単位で出来る事は資金面的にも限られています。その中で少しでも日本人の方々にコロンビアという国を観光地的魅力の点から知って頂ければと常々思っています。