『「出稼ぎ」から「デカセギ」へ —ブラジル移民100年にみる人と文化のダイナミズム』 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『「出稼ぎ」から「デカセギ」へ —ブラジル移民100年にみる人と文化のダイナミズム』


古から人の移動は文化に計り知れない大きなダイナミズムを及ぼす。日本にとってブラジルは70年にわたって制度的に日本移民を受け入れ、100年の人的交流の歴史をもつ唯一の国である。

「ブラジルの日本人—去しり者」では、明治新政府以来の海外移民政策、ブラジルの移民受け入れ政策と日本移民の歴史、1920〜50年代のサンパウロ日本人共同体とその経済活動、ブラジルの「国民国家」形成と外国移民、第二次世界大戦後の日本移民の意識の変化とブラジルの「多人種多民族国家」受容を、「日本のブラジル人—来たりし者」では、デカセギ現象にみる両国の新たな関係の展開、神奈川県綾瀬市を例に在日日系ブラジル人社会とその文化の実情、デカセギ・ブラジル人の分布と多様な生活戦略、教育問題、そのデカセギを多く送り出しているサンパウロ州バストス市の「日本人村」の経済活動と社会組織、エスニシティの変化を論じ、最後にブラジルの日本人、日本のブラジル人について、もう一度概括している。

ブラジル社会人類学者である著者が、両国間の移民の社会文化史を追うことにより、ヒトの移動によってもたらされた社会と文化の変容を考察した力作である。

(三田 千代子不二出版2009年3月288頁2000円+税)