『反米大統領チャベス —評伝と政治思想』  本間 圭一 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『反米大統領チャベス —評伝と政治思想』  本間 圭一


読売新聞リオデジャネイロ特派員(2001〜04年)による評伝。チャベス自身(2002年8月於ラパス)、その母エレナはじめ多くの友人・知人へ取材、チリのマルクス主義を信奉する心理学者マルタ・アルネッカーのチャベスへの長時間インタビューの引用を通じ、その少年時代から軍人になった経緯、シモン・ボリバルへの傾倒、中佐時代の1992年に起こし失敗したクーデタ、1994年の出獄後の政治活動による政権獲得への転換、1998年の大統領選挙での当選、大統領就任後も激しい反チャベス勢力との闘い、貧富の格差是正を謳う「ボリバル2000計画」等の開始と新憲法の制定を軸にした反撃、側近の離反など、そしてチャベス政権存続の一大危機であった2002年4月のクーデタ未遂事件と拘束先からの劇的な復帰、2004年8月の大統領罷免国民投票を乗り越え、反対派の分裂・活動低下により独裁体制を確立していく様を詳細に紹介している。

今日チャベス政権がなお貧困層を対象としたポピュリズム政治をベースにその支持を受けて権力を維持し、反米姿勢と石油供与を通じてキューバはもとより中米やボリビア、エクアドル、アルゼンチンなどへの影響力を強めている様の経緯がよく分かる。

全般にチャベス側の言い分の紹介が多く、反チャベス勢力の後退は、多くの支持を集められる指導者に欠け、チャベス打倒以後の貧民対策を含む社会改革案を示せないこと、強烈な反米言動も米国との互いの石油依存関係を考慮して、決して虎の尾を踏まないことについても言及はしているが、チャベス体制の経済、財政、そして国際外交での問題と展望、さらには分断されたベネズエラの政治・社会の今後の修復が誰によって、どのようにすれば出来るのであろうかについてもさらなる続編が望まれる。

(高文研2006年10月254頁1700円+税)