『インディアス史』 ラス・カサス | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

 『インディアス史』 ラス・カサス


バルトロメー・デ・ラス・カサス(1484−1566年)は、スペインの司祭でドメニコ会士。新大陸のスペイン人征服者が先住民(インディオ)に対して行った虐待、非情な圧政を糾弾した『インディアス破壊を弾劾する簡潔な報告』(染田秀藤訳 1976年 岩波文庫ならびに『インディアス破壊を弾劾する簡略なる陳述』石原保徳訳 1987年 現代企画室)で名高い。1527年に書き始めおよそ35年をかけて執筆、改訂を加えたカリブ海島嶼とその周辺の大陸の同時代史である本書は、岩波書店が1981〜92年に刊行した『大航海時代叢書』第二期21〜25巻を圧縮編集した文庫版。

ラス・カサスの父親、叔父自身がクリストバル・コロン(コロンブス)の航海に参加しており、1502年から軍人として、植民者として、後に従軍司祭として新大陸征服に関わり、その功によりエンコミエンダを得ていたラス・カサスだが、次第にスペイン人の非情なやり方に気がつき、インディオの保護を主張し、本国にも訴えるようになる。

コロンブスによる新世界の“発見”から説き起こし、次第にコロンブスがエスパニョーラ島(現在のドミニカ共和国、ハイチのある島)の先住民を裏切り、農奴化し収奪により彼らの土地と社会を壊滅させる一方でスペイン人同士の内紛発生、植民地化の進展により先住民の植民者への分配制拡大、植民者のみならず修道士までが圧政が当たり前の感覚に麻痺していく中で、ラス・カサスは自身がもつエンコミエンダとその隷属住民を返上し、インディオ救済を目指して本国での国王の統治機構との闘いに向かうが、その間にもエスパニョーラ島での生存先住島民による“正義の”闘いが起こり、ベネズエラ北岸に平和的布教をめざすねばり強い運動とその挫折に至るまでを克明に書き残した。

スペインの征服と植民地化初期の過程での悲惨な実情を理解する上で最も基礎的な史料が文庫本で手軽に読めようになったのは嬉しい。上記『インディアス破壊を弾劾する簡略なる陳述』と同じ訳者の共著『インディアスを<読む>』(現代企画室 1984年)などと合わせ読めば、さらに本書への理解が深まろう。

(全7冊長南 実訳・石原保徳編岩波書店(文庫)2009年3月320〜512頁800〜1100円+税)