講演会報告:三浦 聡氏 経済産業省通商政策局 中南米室長「中南米との通商政策」2023年3月7日 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

講演会報告:三浦 聡氏 経済産業省通商政策局 中南米室長「中南米との通商政策」2023年3月7日


【演題】中南米との通商政策
【講師】三浦 聡氏 経済産業省通商政策局 中南米室長
【日時】2023年3月7日(火)10:00~11:30
【場所】オンライン
【参加者】42名

 三浦氏は、経済産業省の通商政策は国際情勢の変化に応じて変わってきた、として、現状はコロナ禍の下で、「外に出るべき」という意見と「国内回帰すべき」という意見がせめぎ合っている状態にある、とする。そして、国際収支の発展段階からみて、日本は成熟債権国から債権取崩国に向かっており、今後、外貨を稼がねばならなくなるが、その手段の一つとして中南米のポテンシャルと日本の底力を掛け合わせる必要がある、と結論づけられた。

日本では中南米についてマイナスのイメージがあるが、新しいビジネスが台頭しつつあり、地域経済統合の動きが活発化している中南米で、欧米中韓がこの地域を押さえ始めている。中南米は、豊富な金属資源と食糧・飼料資源、世界最大の日系社会の存在、太平洋同盟を主とする経済連携ネットワーク、ASEANの1.5倍の市場規模、2050年の世界経済におけるプレゼンスの大きさ(ブラジル、メキシコはGDP規模で日本より上位に位置する)、といった利点を有している。そこで、日本の対中南米戦略として、①欧米中韓に後れをとってはならない、②経済・エネルギー安全保障の確保、③地球規模の課題解決、国際ルールの形成、の3本柱が示された。さらに政策の方向性として、①ビジネス環境の枠組み構築、②二国間/多国間協議によるビジネス環境の改善、③旧来の経済補完関係からグローバル課題解決のための経済産業パートナー関係への進展、の3点を挙げ、現在中南米で採られている/計画中の様々な支援策が紹介された。

 講演に用いられた詳細な資料は協会ホームページに掲載するので参考にされたい。講演後の質疑応答では、太平洋同盟のオブザーバー国であるコスタリカが懸念していること、中国とは競合ではなく、共存してゆくという考え方、メキシコ、チリ、コロンビアでの左派政権、ペルーの政治的混乱が太平洋同盟に与える影響、中南米におけるODA分野、チリにおける水素・アンモニア事業、等についての質問が出されたが、三浦氏は私見を含めて丁寧にお答え下さった。

※会員様限定の資料となります。
講演会資料 「中南米との通商政策」三浦 聡氏 経済産業省通商政策局中南米室長