今著作や講演などで活躍している脳科学者である著者は、昆虫少年だった頃の熱帯への憧れを実現すべく、動物行動学者の日高敏隆京都大学名誉教授夫妻や写真家の中野義樹氏等とともに、2008年夏にコスタリカを訪れる。
コスタリカはエコロジー観光に力をいれていて、熱帯雨林の多様な生態系観察には打って付けであり、首都サン・ホセの北方にあるブラウリオ・カリージョ国立公園、その北端近くにあるラ・セルバ生物学ステーションを基地に動植物の観察と昆虫採集に熱中し、アレナル火山山麓、モンテベルデ自然保護区などを回る旅をした。
少年の頃に取り憑かれた「熱帯の夢」、夢は時間が経つと色褪せてしまい、自分はなぜあれほど熱狂したのか判然としなくなるものだが、日常を脱しコスタリカの自然の中に身を置くことで少年の時の夢を心身で思い起こしていく旅の記録。美しいカラー写真の数々が、読者に旅の臨場感を与えてくれる。
(集英社(新書ヴィジュアル版)2009年8月211頁1100円+税)