著者(元東京都、現長野県農業大学校勤務)によるキューバに学ぶシリーズも、『200万都市が有機野菜で自給できるわけ』、『1000万人が反グローバリズムで自給・自立できるわけ』、『世界がキューバ医療を手本にするわけ』、『世界がキューバの高学力に注目するわけ』(いずれも築地書館刊)に続く5冊目になる。取材のための往訪も13度になり、これら一連の著作はキューバの仕組みの欠点をいかに前向きに対応しているかという良い事例を取り上げて、ややもするとキューバ礼賛の読後感を与えてきたのは否めない。
本書はそういった傾向を考慮して、キューバの住宅や食料不足、非効率な官僚制度、拡大する所得格差といったマイナス面にも重点を絞った取材を行ったというものの、全般的には巨大ハリケーン襲来で大きな物的損害を受けながらも、死傷者がほとんど出ず被災者が路頭に迷うことがない、恒常的な物質的困窮にもかかわらず、多くの人が明るく幸せそうに生きている“質素な社会”キューバは、日本が参考にしてよいモデルの一つと結論付けている。
絶対的な生活物資や食料不足、機能不全の役人天国の実態なども明らかにしつつ、地球環境の制約の中で“持続可能な”省エネ、環境革命を実現し、粗末な造りの家ながら食料自給やエコ資材を活用し、食料増産のための工夫を行い、ハリケーンに備えての社会造り、教育と文化を大切にした国造りなどを紹介している。
(築地書館2009年10月319頁2000円+税)