執筆者:ピーター藤尾(在チリ。サンテイアゴ)
「政治」
1)ボリッチ動向
大統領府の発表では最後の日は2月17日で彼はもう2週間も仕事をしていません。やっとこの月曜日から事務所に戻りました。モネダ宮殿の事です。しかし先週もマスコミには彼の動きが出てきます。ということはバケーション中に個人的に仕事をしているのでしょうか?話題になったのはツカぺル・ヒメネスの追悼式で彼は演説しました。ヒメネスは労働組合のリーダーでピノチェットの軍事政権の時に軍隊に殺されました。
ボリッチは「労働者のいない社会はない。世界は動かない。ヒメネスの素晴らしい仕事を讃えたい」としました。その事件は40年ほど前のことです。その事件の時、私はチリにいました。
私は反軍事政権だったのですが、日本での大学紛争の時のように反政府運動をすればここでは殺されると思い、参加するのを控えました。それほど雰囲気は厳しかったですよ。
さて今話題になっているのは3月に就任2年目に入ると言うことですが、それもお祝いというより大臣の交代に関してです。私が大統領なら、大臣職につけば4年の任期中全員が手を組んで働こうとしますが、今のチリではだれが変わるのかを見守っているようです。野党がボリッチに大臣交代をお願いしますと頼んでいます。もちろん馬鹿にしているのでしょうね。ボリッチの奥さんがスペインに行って女性の人権を守ると言うことで面談しましたが、その中でチリの現状として話をしたのをユーチューブで見ました。彼女はインテリなのでしょうが、話をするのに慣れていないのか、聞いている人を説得することはなかったようです。
北部のボリビアとの国境で不法に入国してくる外人をチェックする役割で配置した軍隊を撤退することにしましたが、それを見守る仕事を内務大臣が実行しました。彼女はボリビア政府と不法移民の件で話をしたいとしています。ボリビアの国会議員が私たちはいつでもその件についてチリ政府と話し合えるとしています。チリ側としてはボリビア側から
自由にチリ側に越境してくるのを何とか抑えられないか、不法移民を追放するときボリビア領土に行かすことは可能かなどを話ししたいのでしょうね。
前大統領のピニェラが「現与党(そのころは野党ですが)は私の政策に反対運動をしていました。その一例は軍隊の使用で、緊急・特別の場合は軍隊を使用するのは当然です。私が軍隊を使用すれば彼らは反対でしたが、この1年間、ボリッチはあちこちで軍隊を使用していて、自分の言っていたことは間違いだったと思っているのでしょうか?」とコメント。当たっていますね。
2)失業率
11月から1月の失業率は8%で1年前より0.7%アップになっています。まだ下がる傾向がはっきりしないわけですね。民間健康保険イサプレの会社の一つのバンメディカがこのままでは全イサプレの会社が経営困難になるだろうとコメントしました。そこは経営危機なのでしょうね。イサプレがつぶれると国の健康保険に重圧がかかりますが、保険料は下がるけれどサービスの質も落ちるわけできっと社会騒乱になるでしょう。
「経済」
1)銅価格と為替
1日は 1ポンド4.11ドルと大きくジャンプしました。残念その翌日、今日ですが4.03ドルと落ち込みました。そのためペソは818ペソになっています。
2)物価上昇率
昨年は12.8%で終わりましたが、それは過去31年で最高の数字でした。最悪の数字かな?2月の予想は0.3か0.4%の予想で、過去12か月では12.5%とほとんど動かない状態です。もう一つは経済成長率です。ここでは中銀発表のイマセック指数ですが、1月の数字の予想は0.4%とプラスでした。4か月間連続でマイナスでしたが、やっとプラスに。
今年はマイナス成長と言われていたので、嬉しいニュースです。プロの人の予想も当たらないのですね。IMFの発表では今年マイナス成長が予想されるのはラテンアメリカでは2か国だけ。それはハイチとチリです。それほどチリがひどいなんて、ボリッチがんばってくれと言いたいです。関係ありませんが旅行業界もコロナの前に戻ってきているとか。この夏シーズンで12月から2月ですが、サンティアゴの空港を利用した乗客は590万人にもなっています。チリ人の国内旅行はコロナ以前に戻ったとか。なんでもコロナ問題以前に戻ってきたと言うのはうれしい知らせです。
「一般」
1)山火事
あまりパッとしたニュースはありません。ほとんどの山火事は消えましたと言いたいですが、そんなニュースは出てきません。消火活動中は26ですから、先週より増えていますね。死亡者が25名から26名に増えました。家に火がついたとき逃げられなくて重症になり、病院で死亡したとか。厳しいですね。簡易ハウスを週に100軒建設して被災者に渡したいとコメントされています。延焼した家屋は2000以上ですから、簡易ハウスを完成させて渡すのに半年以上かかりますね。秋・冬になって雨が降り出せば火事は消滅しますが、被災者の苦しい生活は継続ですね。
2)テントの撤去
町の中心地には、公園や道路わきで、多くの人が路上生活をしています。テントを張るか木材や鉄板で簡易住宅を作っています。最近の事ではなくかなり前からですが、それを政府は撤去するよう指示を出し、今週実施されました。なんでも92%が撤去されたとか。昨年は何も手を付けず、急にそれを実行したのはどういうことなのでしょうか?よくわかりませんが。ホームレスの人がすんでいたホームを失ったわけです。
3)コロナ問題
先週と同じで2000名を超える患者、10%を超える陽性率が記録されています。
4)社会騒乱
3日の金曜日からまた昔の騒乱が戻りそうです。ほとんどサンティアゴですが、各地でデモがあり暴動が予想されています。そのころ、ピニェラが警官を前面に出すと、そのグループは警官は市民に暴行を加えるのが仕事かとクレームしましたが、今回はその暴動グループが放火略奪などを始めればボリッチは警官を使ってるのか黙って見守るのかどうでしょう。で、その後の世論調査では、ボリッチを支持するとするのが激減でしょうね。
「政治]
1)ボリッチ動向
大臣・政府高官の入れ替えが話題になっていましたが、ボリッチは週の始め「必要があればそれを私は実施する。与野党の政党の要請でそれを実施するつもりはない」ときっぱりとコメントしました。その通りですね。しかし彼の場合は、自分の意志ではなく政党の言うように動きますよ・・・ その時点で、人気のある大臣は1位がマルセル大蔵大臣(59%の支持)、2位がトア内務大臣(54%)でした。逆にひどいのがグラウ経済大臣とウレフォラ外務大臣で30%と低迷です。上記を木曜日に書きましたが、金曜日には大臣変更のニュースがマスコミに溢れました。それは素人の私でも想像できることでした。
交替したのは(させられたのは)5名でした。しかし笑ってしまうのは、その新大臣就任式の会場に、当初7つ並んでいた椅子を係員が二つしまったことです。つまり7名の交替を準備していたのに最後の段階で急に二人減らしたのですね。新大臣に関し、注目されるのは年齢が上がったことです。もう若手バリバリは止めて経験のある中高年を使おうと言うわけですね。共産党・新左翼から中道左派への変換もあるようです。その5名の中では外務大臣が注目されました。あちこちで問題を起こしていた前大臣はあっさり退いたようです。その他に15名の次官も交替されました。外務省は大臣・次官の交替で大掃除の様です。公共事業省の前大臣は、「私は仕事ぶりから交替されたのではなく、党の間の話し合いで外されたようだ」とコメント。そうでしょうね。悲しい事実。
それと同じように重要な事項は、昨年、政府が準備した税制改正案が国会下院で拒否されました。ボリッチは「政府は国民のために税制改正を用意したが、国会はそれを拒否をする」とし、責任は自分たちではないとしています。これは昨年新憲法案が否決されたときと同じ調子です。共産党・新左翼が金持ちから金をとり、貧乏人に渡すのだとしますが、それが通らないわけです。そこで、今年の政府支出は大きく制限され、種々の計画の実施をやめるか国債を増やすかしか手はありません。もちろんこの否定議決を喜んでいる層もたくさんいるでしょうね。
これでボリッチの公約は大きく変更されることになりそうです。もちろん政治問題になりますね。この事態にボリッチは自分は諦めない、再度挑戦すると言っていますが、与党の中の分裂を終わらせる(軽減する)ことが出来ないと国会で彼のアイデアが承認されるわけがないです。新左翼・共産党と中道左派の対立はまるで敵対関係の様です。この先の可能性として上院で審議をさせれば、成立するのは過半数ではなく5分の3以上の賛成がいるのでほぼ不可能でしょう。ということは新法案の内容を入れ替え、多くの議員の賛成が得られるようにして再提案することでしょう。与党議員全員が賛成すれば勝てるですが。
さてその拒否された税制改正案を作ったマルセル大蔵大臣は今まで高い評価を得ています。この1年間、2022年を何とか凌ぎ、予想ではマイナスだったのですが、今年もプラス成長をする可能性が出てきています。TPP11に再加入したことも評価されています。各自の積み立てた年金を引き出す案は否定されたのはチリ経済には好影響でしょう。インフレ指数や高金利の問題も少しづつ改善しています。もっとも政治の不安定はチリの外部からの評価には否定的に見られます。彼がこの改正案否決にどう対処するのか注目されます。
ボリッチ政権の1年目が終わりますが、新憲法可否の投票で惨敗、囚人の恩赦問題、彼の近くで働いていた高官が麻薬問題でFBIに調べられた事件、今回の新税法否決など、惨めな問題が続いています。
2)新憲法委員会
委員の選挙が近づいてきました。5月7日です。今週、地下鉄の駅の外で誰かが候補者のパンフレットを配っていました。その近くで他のメンバーが大きな旗を振りまわしていました。それをもらってきて後で読みましたが、一番右のグループで、先の大統領候補になったのがリーダーでした。この選挙は国会議員の選挙と同じではありませんが、市民は同じように考えるので、自分の好きな政党から出た委員候補に投票します。そこで私の予想は共産党・新左翼系の当選は前回より少なくなるです。さぁ、どうかな?それから右翼は統一候補ですが、左翼は二つに分かれているようです。
「経済」
1)銅価格と為替
中国の銅の輸入が、この1・2月に88万トンと前年同期にくらべ9.3%減少でした。それが影響しているのか今週の銅価格は1ポンド当たり3.97ドルと先週より下がり、ドルは公式レートで1ドル801ペソでした。銅価格の低迷でボリッチの公約がますます実施困難になります。銅が駄目ならリチウムで行くとされますが、どうでしょう。
2)インフレIPC
2月のIPCがなんとマイナスになりました。マイナス0.1%でした。ガソリンと食品の価格が下がったのがその原因のようですが、26か月ぶりのマイナス成長でした。過去12か月では11.9%の上昇です。ただ次の3月、4月は再度プラス成長になるだろうと予想されています。元チリ中銀総裁が一か月くらいマイナスでも大喜びするのは間違いだとしています。
3)新車の販売
2月の新車の販売は24491台で前年対比17%の減少。1-2月合計も22%減と、雰囲気は悪いですね。
4)株式市場
そのIPSA指数はボリッチが政権を取ってからの1年で17.4%の上昇です。多くの人がきっと喜んでいますね。
「一般」
1)強盗
水曜日に飛行場で強盗事件が発生。マイアミから来た飛行機に巨額のドルが搭載されていたのですが、それを知っていたグループ10名が、重火器をもって襲い掛かりました。警備団がそれに反応したので、銃撃戦になり、かなりの発砲がされたとか。それぞれのグループから一人ずつ死亡者が出ました。犯人グループは警備団が執拗に抵抗するのであきらめて逃走しました。私が空港にいた翌日の話です。危ないですね。同じような事件が2014年にもあり60億ペソが盗まれました。それは世紀の犯罪と言われますが、今世紀最大の被害額でした。今回のグループはそのグループの真似をしたのか、一部が重なっているのでしょう。警備員の抵抗が予想以上だったのでしょうね。射殺された警備員の家族は警備員の安全について政府の見解を疑問視するコメントを発表しています。
南部の地区で放火事件が起き、それに関連してトラックが銃撃され負傷者が出ました。トラックのフロントガラスが銃弾で崩壊されました。怖いでしょうね、そんな地区で働くのは。マプチェのグループの犯行と言われています。
サンティアゴでINBA高校の前で、数十名の高校生が道路に物を置きそれに火をつけました。通行遮断です。一部の学生は真っ白のオーバーオール服を着ていました。今までと同じような事件です。
2)山火事
44万ヘクタールが燃えました。2500軒が延焼とか。早く雨が降ってほしいです。学校の授業が始まりましたが、延焼した学校での授業は困難なようです。南部の消防グループが発表しましたが、消火活動中に120名の消防員が攻撃を受けたとか。消火せずに燃やしてしまえと言うことでしょう。
3)コロナ問題
今まで新規陽性者が1000名ほどでしたが、今週はそれが水曜日から今日まで5日連続で3000名を超え、陽性率も14%を超えるほどです。しかし政府も市民も全く憂慮していません、
4)8日は国際女性の日でした。
チリの各地でその女性デモがありました。もちろん暴力的なデモではなかったですが、デモの参加者の数は半端な数でなくサンティアゴ中心街の道路はデモ隊であふれていました。女性省の大臣もサンティアゴでそのデモに参加しました。モネダ宮殿でも記念式典があり、政府はバチェレット元大統領を招待しました。そのバチェレットは政界などの表舞台に戻るだろうと予想されています。
さて世界でどの国の男性がよく家事を手伝うかというのが記事になりました。1番はキューバで平均2.8時間。次いでスイスとニュージーランドの2.6時間。チリは2.4時間と上位でした。最少が日本で43分。韓国が57分で下から2番目でした。どうやって測定するのか知りませんが、何となく当たっているような気がします。
「政治」
1)ボリッチ動向
先週に続いて違法移民が入ってくる北部のボリビアとの国境の町コルチャネを視察しました。なぜ2週間連続でと思いますが、先週は大臣交替があったのでちゃんと現地で仕事が出来なかったようです。それならなぜ先週そこに行ったのと聞きたいですね。軍隊はもう引き上げたと思っていましたが、国境線にまだ兵隊がいました。
それから先週の新税制法案拒否に関し、彼は経営者たちと面談しました。何とかそれを実現させたいわけですね。日曜日の新聞にその新税制はチリにとって自殺行為だとする企業家のコメントが載りました。
また2か月前に彼は囚人を大統領恩赦で釈放しましたが、野党議員がそれを疑問視して憲法法廷に持ち込み、今週から裁判が始まりました。凶悪事件を何件も起こしている人間がどうして釈放されるのかと言うわけです。しかし両者のコメントを聞いた裁判官はそれでは結論を出すのは不十分としてさらなる調査を要求しました。きっと、ボリッチの異常な決断が明らかになってくるでしょう。刑務所の組織が恩赦された人間の半数はそれを認められないとコメントしていたとか。ボリッチはそれを無視したのでしょうね。そして何とボリッチは二回目の恩赦を計画していることが発表されました。もう駄目ですね、彼の頭はおかしいです。通常ではないでしょう。これだけ疑問視されている・批判されていることを無視して同じことを繰り返すなんて。憲法裁判所でボリッチの行為は違憲だとされれば、国会で彼を処罰する議論が始まるでしょう。それから世論調査で今一番話題になっているのは犯罪の増加ですが、ボリッチは有効な手段をとることができていません。
さて、いつも言われることですが、市民調査の結果で、彼は歴代大統領の中で最も人気のないことになっています。大統領が1年の任期を終えたときどれだけの市民の支持を得ていたかの比較です。民政化が始まってから、最高の人気があったのは初代大統領のエイルウィンで67%の人気。最近の二人は、バチェレットとピニェラですが、45%と47%。
今年のボリッチは32%でした。不支持は62%。それがますます落ちていく可能性があるのですね。
2)警官の死亡
ビオビオ州で、取り調べをしていた警官が車に引かれ死亡しました。犯人は逃げようとしましたが、逮捕されました。彼は飲酒していたようで、即時に刑務所に収容されました。その警官の葬式に内務大臣が出席し家族に追悼の言葉を告げました。犯人はベネスエラ人でした。全く別の件ですが、サンティアゴの中心街で警察の尋問にカルネ(チリの身分証明書)を出した3人を調べるとカルネが異常でした。それで彼らの車を調べると
なんと100枚ほどのカルネが用意されていました。偽のカルネを作って販売するのですね。もちろん即時に逮捕されました。その3人はベネスエラ人でした。
ベネスエラ政府はチリの非正規移民の国外追放システムは非人間的だと抗議しました。???ボリッチが行ったコルチャネから不法移民をボリビア側に追放するのは認められないと言うのでしょう。ボリビア政府はその追放移民がボリビア人ならただちに入国を認めるでしょうが、その他の国民などうするのでしょうか。出るのは良いが入るのはダメかな?ボリッチはベネスエラとはうまく会話が出来ないとしています。チリ政府がベネスエラ政府を批判するとチリの共産党からクレームが来るわけですね。
3)大統領選挙
ボリッチ政権が始まってまだ1年ですが、ももう次の選挙の話が出ています。右翼側は、最右翼の候補を出すと負けると今回の選挙でわかったので中道右翼を狙い、なんとピニェラを3回目の候補者にする動きがあるとか。新聞にピニェラの動きをフォローするニュースが出始めました。すると同じように左翼も共産党や新左翼なら勝てるわけがないから、昔懐かしいバチェレットを3回目の候補にするのかな?(日曜日にバチェレットの動きが特集記事になっています)しかしそれは大半のチリ人は厭きたと思うでしょうね。
ボリッチは与党のバラバラの状態を何とかまとめようとしていますが、全くその方向に向かう様子はありません。同じく右翼側もチリ・バモスと呼ばれるグループを中心に統一を図る動きが出ています。
新左翼のパメラ・ヒレスは髪を金髪に染めて化粧ギンギンの女性議員ですが、各自の厚生年金基金を引き出して自由に使えるよう提案し、初期のころはそれが法律になりました。私は皆さんのために働いていますと大声を出していますが、その彼女が大統領候補になりそうだとか。新左翼の一部は彼女を熱狂的に応援するでしょうね。もちろん第1次選挙で、彼女は3%ほどの投票を得て落選するでしょうが。しかしまだ彼女の話題はあります。なんでも6回目の引き出しを議会に提出するらしい。それは4月で、新憲法委員の選挙の前です。つまりその提案が出されれば、与野党の争いではなく与党内で中道左翼と新左翼・共産党の争いになり、さらなる引き出しを拒否するボリッチ政権には大きな打撃になります。彼女をどう抑えるか、仲良くするかをボリッチは考える必要があるわけです。
2001年には議会に6の政党がありました。その20年後の2021年には21に急増です。多くが新左翼グループです。昔はすべての政党の動きが私の頭の中に入っていましたが、20にもなるとその政党名もよく分かりません。その新左翼が、合併して勢力をつけようとする動きとそれを拒否するグループに分かれています。次の選挙で彼らは半減すると言うのが私の予想です。
新憲法委員会の選挙の日が近づいていますが、市民の間では全く盛り上がりません。
「経済」
1)銅価格と為替
大変なことになりました。銅価格が急落です。先週より下がって1ポンド3.91ドルでした。一日、火曜日ですが、4.04ドルに上がったのですが一日だけでまた下がりました。4ドルのラインが遠くなっていきます。このため為替も1ドル832ペソと大幅なペソ安になりました。するとチリの誇る世界最大級のリチウムの採掘をどう図るか話題になっています。ソキミチなどに渡している採掘権をどうするか、銅鉱山のように国営鉱山に
すると言うアイデアもあるそうです。
2)労働時間
週40時間が国会で討議されていましたが、合意に達したようで、チリも世界レベルの週40時間労働 が法的に認められました。
3)株式市場
アメリカやスイスの銀行破綻から金融市場は混乱の極みですが、そのため株式市場も厳しい状況になっています。世界の株式市場は今週落ち込みましたが
チリのIPSAも5.2%下がりました。
「一般」
1)コロナ問題
新規患者は4000人を超えています。先週に比べて患者数は25%上昇です。
しかし入院患者、緊急病棟患者などは減少の方向で、最悪状態の患者数は最高だった時期の10000人超から88人まで激減とか。病気になっても重症にはならないと言うことですね。
2)山火事
モネダ宮殿で山火事対応策が政府と民間機関の間で検討されました。どのように復興をしていくかの議論ですね。火事は今まで43万7千ヘクタールが消失し8000人ほどが被害にあっています。焼死者は26名です。既に256か所がコントロールされ、5か所にまだ火が残っているとか。
3)空港利用
2月の空港利用客は前年より27%アップですが、それでもコロナ以前のレベルにはまだ到達しません。それほど落ち込んだわけですが、元に戻りつつあるのは明白ですね。
4)ロラパロサ
金曜日からサンテイアゴでロックコンサートが始まりました。若者でごった返し、土曜日は7万5千人の入場者とか。私はそこに行ってみたいとか、その演奏を聴いてみたいと全く思いませんが、それは多分、50年以上前にアメリカでウッドストックがあったとき若者が殺到し大人が嫌がったのと同じでしょうね。
「政治」
1)ボリッチ動向
ボリッチは南部のニュブレ州に向かい、火事の後に建築された避難者のための家屋を見学しました。それから週末はドミニカ共和国を訪問しイベロアメリカ会議に参加しました。 サンティアゴにいたくなかったのでしょうね。その国際会議ですが、ボリッチの演説は移民のコントロール問題とニカラグア批判がメインでした。ニカラグアの独裁政治で国民が苦しんでいるとしましたが、その国の外相から他国のことに干渉するのは止めてもらえないかとクレームを受けました。移民問題に関しチリの外相はボリビア・ベネスエラの外相と面談した由。その他に、チリにいるときテレビ電話でウクライナのゼレンスキー大統領と話をしました。
さて今週は、彼の周辺に大きな出来事が二つありました。まず、彼の実施した大統領恩赦に関し憲法法廷で、それは違法ではないと言う結論になりました。もちろん裁判官の中でもいろんな見解がありますが多数決でボリッチに憲法違反はなかったとされました。左翼の大勝利と言われます。右翼側はすぐに諦めないでさらなる動きを用意しているとか。
強盗を何回もした人間が、左翼として右翼と戦ったので左翼の大統領が恩赦するは不自然ですね。この結審が出る前に、今までの政府のコメントとは違う話が出ました。それは内務省次官のマヌエル・モンサルべがテレビの番組でボリッチは恩赦された人間の過去の歴史をすべて把握していたと言うものです。政府側は彼はすべての過去を知らなかったとして彼に責任が行かないようにしていたのですが、その次官はボリッチはすべてを知ったうえで恩赦の手続きをしたとしました。
元大統領のラゴスはこの恩赦についてボリッチを批判するコメントしています。いつものように与党内の対立です。共産党・新左翼と中道左派の争いですね。歴史的に見て民政化してからの32年間、毎年のように恩赦は行われています。合計で1665人ですが、最初は極端でした。初代大統領のエイルウィンは943人を恩赦しました。軍事政権に逮捕された左翼活動家の釈放ですね。これはエイルウィンにとって一大事でした。表向きに軍事政権を批判すればピノチェットがどう反応するか心配だったからです。それに比べると今年のボリッチの15名はそれほどの重要性はありませんが、これほど話題になるのは彼の大統領としての能力が低い証拠ですね。しかし識者からこの問題に関し二つの見解が出されました。恩赦という制度はチリにとって必要なのか、またそれが必要ならどうして大統領が決断するのか、政治的判断になる大統領より検察長官にそれを任せれば国民が納得する結論をとれるのではないかとされました。確かに新見解ですね。
もう一つの話題は各自が積み立てた年金基金の一部を自己貸し出しとして引き出すことを認める議論が国会でありました。政府は、大蔵大臣を先頭に多くの大臣を議会に送りこみ、 それはチリ国にとっても市民各自にも悪い影響を与えるから拒否するように呼びかけました。ボリッチはその呼びかけをするヒレス議員を恐れているかのように彼女に厳しい批判をしません。確かにボリッチは議員をしているとき、例えば4回目の引き出し時に、議会で、「私は市民のために働いている。なんとかこの4回目の引き出しを成功させたい」としています。ボリッチは今言っていることと全く逆のことをしていたわけです。ピニェラは笑っているでしょうね。共産党の議員は賛成に回ったようですが、多数決で 否決され、政府は勝ちましたが、与党の分裂は一層ひどくなりました。ヒレス議員はまだあきらめないで新しい作戦を考えるとか。先の税制改正案が否決されたのと同じような状況が、国会を動かすのですね。右に行ったり左に行ったり。いつも言うように与党対野党の争いではありません、
2)国会のスキャンダル
野党のコルデロ下院議員は与党の上院議員カンビジャスは噓つきだと批判しました。3年半前の社会騒乱の時、デモ隊に入っていたカンビジャスは警官の撃った催涙ガスのようなものが目に当たり失明しました。その警官が判明し、裁判の結果有罪になっています。彼女は失明したが国民のため政界に入りたいとしたところ、新左翼系が応援し、当選しました。コルデロは彼女は両眼を失明したとするが、事故の後、携帯を一つの目で見ているビデオがあり彼女が嘘をついているのは明白だとしました。ボリッチはこの問題で、私は常にカンビジャスの横にいることを誓うとしました。
評論家のコメントですが、カンビジャスがデモ隊の前で、この近くのすべてのビル・家屋に火をつけよう、私たちを守ろうとしない現在のシステムを壊しにかかろうと煽っていたとか。最右翼のUDI党の党首が極左に殺されましたが、ボリッチはその殺された人をおちょくったTシャツを喜んで着ていた時期があったとか。新左翼のレベルが分かりますね。
3)厚生年金
フランスで年金受領の時期を変えるとした政府に国民が大規模な反対運動をしていますが、同じ問題でチリの労働大臣は私たちは年金受領の年代を変更するつもりは全くありませんと確認しました。ただ厚生年金システムAFPが今までの様に順調に進んでいないと言うのがニュースになっています。
4)移民問題
外務省はボリビアとベネスエラ政府とこの面に関してドミニカでの国際会議でコンタクトを始めました。ボリビアはチリがボリビアの海を返せば話に乗ると言っているとか。両方の国のレベルはかなり理解しがたいですね。
隣のアルゼンチンが再度、チリの司法を批判しました。アルゼンチン大統領フェルナンデスがチリのソキミチ鉱山の不正関連でマルコ・エンリケ・オミナミMEOを裁判にしているのは根拠のない言いがかりだとするわけです。チリが拒否してもまたクレームを出しましたが、どういう頭なのでしょうか。しかしフェルナンデスもニカラグアを批判するボリッチも同じレベルの人間ですね。
「経済」
1)銅価格と為替
銅の価格は1ポンド4.05ドルに上がりました。また4ドルを超えました。良かった。それでペソが強くなり1ドル805ペソになりました。アメリカ・スイス・ドイツの銀行が困難な状況にあるようですが、チリ中銀総裁はチリの銀行にその問題がどう影響するか検討を始めているらしい。
2)リチウム
10年前はリチウムの輸出は2.5億ドル(GDPの0.1%)でした。それが価格が上がり量が増えたので、昨年は78億ドル(2.5%)と急上昇。したがってこれをどうコントロールするかが政府の最重要項目になっているとか。来月中に政府案が発表されるとか。中国の名前がまた出てきますね。それとは関係ありませんが、中国のTIK TOKが世界で問題になっていますが、チリではその活動を制約することはないと政府はコメントしています。
「一般」
1)麻薬
チリの大きな問題ですが、今週の話題として次の二つがあります。先ずバルパライソで麻薬組織の大物の葬式がありました。その組織の人間が怪しい・危ない行動を起こす可能性があると予想されたので近くの15の学校(小学校から大学まで)がその日休校になりました。それに関し内務大臣が遺憾の意を表明しました。すると学校の授業を保証するのは政府の責任で、「授業が出来なかったのは残念です」と他人事の様にコメントするのは何事かと厳しい批判の声が上がりました。確かにそうですね。もう一つはサンティアゴのフロリダ区で「麻薬の家」を壊す作業があり、組織の人間ともめました。もう今年に入って4軒目の処置ですが、住民が警官とぶつかったのは初めてです。なんでもその麻薬組織が近くの住民にいろんなプレゼントをしていたとか。例えばパーティを企画したり。麻薬組織が力をつけているのは明白で、それを抑える・つぶす仕事を政府は実施するべきですね。その区長カーテルは右翼で、次の大統領選挙に出馬したいとか。同じような関係で麻薬組織から4人の区長が脅迫を受けていて、警察はその4人を援護する係をつけているとか。
2)山火事
44万ヘクタールが燃え、2514軒が消失とか。火事の合計は290か所でまだ5か所の火が消えていません。
3)コロナ問題
今週は新規患者数は3000人台、陽性率は12%ほどでした。PCR検査数が低め安定なので、患者数も伸びることはないでしょう。厚生省も市民ももう病気のことは忘れたみたい。本稿の筆者は本年2月にラパヌイ(イースター島)に出張したので、その関連の原稿も掲載する。
「ラパ・ヌイ訪問の記」
この島は通常イースター島と呼ばれている。しかし、1000年以上の歴史を持つ島が、先住民が使っていた言語の名前ラパ・ヌイを後から来た西欧人に変えられるのは島民にとっては不愉快なことだろう。
そこはチリ本土から3700キロも離れた太平洋の孤島で、その大きさは北海道の利尻島と同じくらいらしい。ポリネシアから来たと言われる先住民が長い間、そこで生活していた。最大時は1万数千人が生存していたようだ。
さて島の文化が崩壊したのは1600年代に起きた内部戦争のためで、森林が伐採され、木が無くなったので自然が破壊して農業・牧畜さらに漁業にも影響したとされるが、そうではなかったと言いう説もある。
1722年にオランダの船がこの島を発見した。それがちょうどイースターの日だったので、それを島の名前にしたとされる。ラパ・ヌイ、広い大地の方が島のイメージを表している。それ以降、西欧人はこの島を訪問するが、それが島の文化を崩壊させたとも言われる。極端な例だが西欧人がこの島に来て、島民を誘拐し、ペルーの鉱山に奴隷として売っている。なんと1877年には島民の数が111人になったと言われる。人口の99%が消えたわけだ。イギリスはそこからモアイを取り出し、大英博物館に展示している。
この島の先住民はロンゴロンゴと呼ばれる文字を使用していたが、西欧人の誘拐でそれを理解する人が連れ去られ、島民はそれを読めなく・書けなくなった。モアイがこの島の象徴になっているが、その奴隷事件で、誰もどのようにそれを作って運んだのか経験・記憶が消えてしまったとか。
その少しあと、1888年にチリがその島を自分たちの領土だと宣言した。島で独立運動は起きていないようだが、チリを愛国心をもって支持しているようには見えない。チリ政府は、一時、島民に皆さんはチリ国民だからスペイン語を話してくださいとしたが、いつからか島民にラパ・ヌイ語を使うように勧め、町役場に働く人はラパ・ヌイ語を知っている人を優先したとか。
さて1000体近くあるモアイのどれが古いものか新しいものか良くわかっていない。内部戦争があったなら部族間でモアイの顔・身体に違いがあるはずだが、それも良く分かっていない。つまり研究はそれほど進んでいないことになる。
モアイの下にアフと呼ばれる石組がある。土台のアフの上にモアイを置くわけだ。その石組みがインカの石組みと同じだ。それは一回や二回ではなくペルーとラパ・ヌイの間にコンタクトがあったことを示している。潮流に載れば南米からこの島にそれほどの問題はなく来れたのだろう。
現在の人口は数千人で、最大時の半分ほどになっている。コロナ問題で観光客がゼロになったとき、島民の生活は困窮したが、それは自給自足の方向と借金を増やすことで切り抜けたらしい。つまり銀行が各自のクレヂットカードの上限を外し、必要な金額を渡したからだ。コロナが収まって観光客が戻ってきたので最近は正常生活に戻っている。借金を毎月少しづつ返しているのだろう。
ただこの島の町長は、飛行機の便を増やすことに賛成していないらしい。日本の観光客が増えても島民に悪い影響はないだろうが、サンティアゴ市民がなだれ込んでくるとすぐに犯罪問題が自分たちの首を絞めるとするわけだろう。
幾つかのモアイの背中に日本の神代文字が書かれていると言われるが、その研究が進むのが楽しみだ。
モアイを遠くから見るのは問題ないが、近づいて触ろうとすると警備官か警察に警告されるらしい。そしてその後は法律違反で逮捕される。従って私たちもそれを遠くから見ることにしなければ。