『アメリカ新大陸の略奪と近代資本主義の誕生 —イラク戦争批判序説』  土井 淑平 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『アメリカ新大陸の略奪と近代資本主義の誕生 —イラク戦争批判序説』  土井 淑平


著者は元共同通信勤務、反原発運動など市民運動に取り組み、その分野の著書多数がある。本書は、「米国の前ブッシュ政権が強行した米一極主義にもとづくアフガン、イラク戦争が、国際秩序を破壊し世界に災忌をもたらしたばかりでなく、米国自身にもはね返り財政赤字の肥大化と金融危機をもたらし、21世紀の石油争奪戦と世界経済、国際政治の混乱、破局を告知するものだったいう認識の基に、欧米中心史観とオリエンタリズムの根本的克服を課題として、欧州世界とイスラム世界との出会いに始まり、コロンブスの航海からの新大陸での略奪、近代資本主義の成立と西欧近代思想の出現、インディアン戦争の延長または拡大としてのイラク戦争まで、いわゆる“アメリカなるもの”の正体を私なりに徹底的に追求した」ものである。

7章から構成される大部な内容は、序章と第一章はヨーロッパ世界とイスラム世界の関係史、第二章は大航海時代の幕開けとコロンブスの到達による先住民虐殺、奴隷化の始まり、第三章はスペイン征服者によるアステカとインカ文明の崩壊、第四章は新大陸での略奪と奴隷貿易、近代資本主義の誕生、第五章はラス・カサスなどによる新大陸の征服戦争批判や先住民人権保護の芽ばえに始まる新世界の衝撃と西欧近代思想の出現、そして終章として米国での西部開拓時代のインディアン虐殺やインディアン保留地での石炭やウラン等地下資源をめぐる攻防などから、やがてベトナム戦争を経てイラク戦争へ至ったことを、膨大な資料を基に詳述している。

著者のもつ米国史観、信念を述べたいという明確な執筆動機によるものであり、その論旨上で一貫してラテンアメリカ史も見ているが、ラテンアメリカの専門家ではない著者がよくここまで調べ上げたと思う労作であることは間違いない。

(編集工房 朔発行、星雲社発売2009年12月475頁3200円+税)