連載エッセイ235:新井賢一「南米コロンビア・雲と星が近い町から」その11 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ235:新井賢一「南米コロンビア・雲と星が近い町から」その11


連載エッセイ 232

南米コロンビア・雲と星が近い町から」その11

カリ出張の記 -2-

執筆者:新井 賢一(Andes Tours Colombia代表 ボゴタ在住)

先日の事になりますがコロンビア第三の都市カリ市に出張しました。昨年12月にも出張したのですが今回は日本から来訪されたお客様をご案内しての「本番出張」でした。前回の出張で下準備を整えた事もありとても良い結果を残す事が出来、お客様もとてもご満足されました。

前回出張時に事前視察先として訪れた「カリ動物園」ここがお客様の訪問希望先でした。今回の訪問にあたり先方のご希望でカリ市動物園側に対し希少動物達の保護目的で多額の寄付をされた事が特筆されます(先方が希望されていませんのでお名前等は非公表とさせて頂きます)カリ動物園側から園長直々にお礼の言葉を頂きました。


今回ご来訪されたお客様が見学を強く希望されていたのが「Pacaranas(若しくはGuagua・大型ネズミの一種)」と「Mapache(カニクイアライグマ)」です。いずれも南米大陸固有種の動物らしく、近年その数がどんどん減ってきています。世界中の動物園を訪れ希少動物達を見学させている先方のコロンビア・カリ市訪問はまさにこの二つの動物を見る為だけのようなものでした。いずれも夜行性動物で日中は熟睡している事が殆どです。今回の訪問時も例外なくそうでした。

カリ動物園側からは事前に「特別の案内は出来ない」と言われていたのですが、先方が多額の寄付をされた事もあり結果としては係員二人を専属ガイドとして充て、一般入場者は決して立ち入る事が出来ない「バックヤード」と呼ばれる非公開エリアまで案内してくれました。全く期待していなかった分、先方もとても喜ばれていました。こちらではペアのPacaranasを至近距離で見学する事が出来ました。このバックヤードは普段は真っ暗にしているのでたまたま起きていた所を訪問する事が出来ました。

カリ動物園にはこのPacaranasが三匹保護されていて、もう一匹は単独で誰でも見られるエリアにいました。日中はやはり爆睡していて全く動かず夕方まで全く起きる気配がなく、閉園時間が迫る中で先方も「もう諦めましょう」と仰ったのですが私には何か感じるものがありもう少し待ちましょうと粘った結果、何と目を覚ましました。この偶然には我々もビックリでした。そして係員が置いた餌の香りを感じてのそのそと動き出したのです。これには先方もとても歓喜されていました。諦めて帰らなくて良かったです。

カニクイアライグマの方は凶暴性があるという理由から、こちらは専属としてついてくれた係員も含めさすがに至近距離まで近づく事は出来ませんでした。こちらもやはり閉園時間ぎりぎりまで起きる気配がなく諦めようとしたのですが、こちらも私が何となく気掛かりですと待って頂いたところ、何と二匹共に奇跡的に目を覚まし、ついに動き出してくれました。これには正直驚きました。先方が今日は無理でしょうと諦めた所を引き留めた甲斐がありました。

結果として先方が強く見学を希望されていた二種類の夜行性希少動物の動く姿を捉える事が出来、とても感謝されたのは光栄でした。

今回訪問したカリ動物園にはこの他、コロンビアの国鳥であるアンデスコンドルやジャガーその他、今やコロンビア国内では絶滅危惧種に指定されている希少動物が多数保護されている他、小さいながら水族館もあります。コロンビア国内では最も整備された動物園と言えようかと思います。

カリでは先方のご希望もあり、ちょっと変わった「コロンビア料理」もご案内しました。こちらはその一つ「Calentao」と呼ばれているものです。ライス・豆・豚肉・ソーセージなどが入っています。調べた所これはご飯と残り物のおかずを混ぜ合わせた「残り物飯」が起源のようです。スペイン語でCalentarは温めるという意味合いがありますのでまさに残り物飯を温め直したという感じそのものです。目玉焼きやアレパと呼ばれるトウモロコシ粉を使ったおやきが上に載っています。このCalentao、美味しいかと聞かれたら「うーん」と戸惑ってしまう味でした(汗)ちなみにこのCalentaoは通常「朝食」として食べるそうです。朝からなかなかすごいボリュームです。

こちらは先日NHK WORLDの番組「BENTO EXPO」でも紹介した「コロンビアのお弁当」であるFiambreです。この店では何とボコボコ状態のアルミ製の弁当箱(当地ではこれは本当に使用されています)で提供されました。カリでもFiambreは知られたお弁当スタイルですが、これはリアルでした(苦笑)中の具は様々ですが、今まで何度か食べたFiambreの中でこの店のものが一番味付けが濃かったです。

カリを訪れる機会があり懐具合と時間に余裕があれば是非とも入って頂きたいのがこちらのレストラン・Hacienda del Bosqueです。門をくぐった途端別世界で100年以上前に戻ったような錯覚に襲われました。それほど全く異なる空間でした。ここはカリ動物園に隣接していて、川をまたいで隣はまさに動物園の敷地でした。

平日のメニューはインターナショナル風のものでした。とても洗練された味で美味しく、何より昔の富豪の屋敷を改装したものと思われる建物と敷地内が素晴らしかったです。カリ市内のレストランでは総合No.1と言えます。

4日間のカリ市滞在を終えて離陸した直後の風景です。カリ市郊外にはこのような広大な平野が広がっています。肥沃な土地として知られているこの地に日系移民の方々が多いのも納得出来る素晴らしい風景です。私自身はこのカリに着くと何となくホッとします。長らくその理由が分かりませんでしたがようやく納得出来ました。広大な平野と周囲の山々の風景が「日本」に似ているのです。

今回の出張、二種類の動物を見たい・その為に日本から遙々来訪された先方の願いを叶える事が出来、私自身も肩の荷が下りました。