『アマゾン文明の研究 —古代人はいかにして自然との共生をなし遂げたのか』  実松 克義 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

 『アマゾン文明の研究 —古代人はいかにして自然との共生をなし遂げたのか』  実松 克義


南米の古代文明はアンデス地帯と西海岸だけでなく、アマゾン各地で古代人の大規模な居住地、道路網、運河網、堤防システム、農耕地あるいは養魚場が発見されているが、その他地域の文明との違いはアマゾンの自然環境を大きく改変しながらも、それを破壊することなく自然との共生を図ったことで、その伝統は現在のアマゾン先住民にも伝わっているというのが本書の主題である。

本書はまずアマゾン文明の背景となる自然環境、先住民民族の文化と世界観を説明し、アマゾン古代史に関わる一連の発見、偏見と論争の歴史、近年のアマゾンについての一般的な考えが変化したのかをのべ、うち最大級の文明があったボリビア・アマゾンのモホス平原の自然環境とモホス文明の痕跡、独特の構想で創られたこのモホス文明について考察し、著者が行ったモホス平原での発掘と民族調査のデータを分析し、この古代文明の再現を試みる。そしてアマゾン各地の文明の痕跡を概括し、アマゾン地域における農業の発達と古代人の社会構想や自然観を解明し、それが示唆する文明とは何かを考察するという構成になっている。

宗教人類学を専門とする著者(立教大学教授)が内外の膨大な文献資料を解読し、ボリビアの地元研究家等との意見交換、そして考古学者と組んだ2006年から08年の3回の合同発掘調査によりモホス文明が存在したこと、民族調査によって現在のモホス先住民の伝統はキリスト教により大きく影響を受けたものの、「自然への畏怖」を引き継いでいること、他のアマゾン地域でも古代農業を始め定着されたという共通点があるとしている。

著者がいうように、ボリビア・アマゾンに大規模な古代文明が実在したことを疑う研究者は多い。アマゾン地域はその自然条件から遺物が遺り難く実証的な判断が難しい。モホスに古代の社会があったのは確かであろうが、本書の指摘する多数の土塁、運河網、農耕跡地を人工の建造物であり高度な文明の痕跡といい切るにはさらなる現地調査の成果が待たれよう。

(現代書館2010年3月374頁3800円+税)