『メキシコ革命の100年 歴史的総括と現代的意義』  堀坂 浩太郎、岸川 毅編 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『メキシコ革命の100年 歴史的総括と現代的意義』  堀坂 浩太郎、岸川 毅編


今年は、1910年にそれまで34年間にわたって続いたッポルフィオ・ディアスの独裁政権にフランシスコ・マデロが反再選運動を起こしたことを契機にしたメキシコ革命から100年になる。現代メキシコ史とは、メキシコ革命の歴史であるといっても差し支えないほど、今日まで続くその流れは政治はもとより軍事、社会、経済、文化など多面的な現象をもっている。このイベロアメリカ研究所ラテンアメリカ・モノグラフ・シリーズの1冊は、メキシコ革命の位置づけ、現代メキシコに至る政治、経済、文化への影響と他国の革命体制との比較研究をまとめたものである。

まず「革命」の定義を行った上で、メキシコ革命がそのような革命であったか、本書がどのような視点でまとめた序章(岸川)から始まり、メキシコ革命の申し子であった石油産業に忍び寄る石油危機とその背景を分析することによってメキシコ国民が革命の大義を問われている状況を述べた第?章(堀坂)、革命の成果として生まれたPRI(制度的革命党)体制に対して体制外のPAN(国民行動党)に革命の端緒となった政治的民主主義が引き継がれ、2000年のフォックス政権の発足により皮肉なことに「未完の革命」が成就したとする第?章(箕輪 茂)、メキシコ映画に描かれた革命が政治や社会の変化を反映して、PRI体制が安定化するとともに理想化された公的な側面から描写されたが、1960年代からは公式見解から離れて現実的な描写が行われたものの80年代の経済危機以降はほとんど主題としては無くなったことを指摘した第?章(マウロ・ネーヴェス)、革命後100年間の経済を概観し、長期的にはメキシコの経済政策がその時々に「米国経済」モデルで策定されてきたという第?章(谷 洋之)と続く。

最後の2章は革命体制ないし革命目標の変化の比較研究で、メキシコのPRI体制と台湾の国民党体制の結成から解体までの過程を比較した第?章(岸川)、キューバのカストロ革命が当初から社会主義化や反帝国主義を目標にしていたのではなく、議会制民主主義の復活と資本主義の枠内での社会経済改革を目指していたのが、米国の冷戦構造に組み込まれたなかでソ連型を採用せざるを得なくなったのであり、革命推進勢力が当初の想定と異なる政治体制を形成するという点でメキシコと共通点があるとする第?章(尾尻 希和)から成る。

6人の執筆者はいずれもメキシコ革命史の専門家ではないが、それゆえにそれぞれがメキシコ革命を分析することによってあらたな知的発見をしたようにみえる。

(上智大学イベロアメリカ研究所2010年3月135頁頒価送料・税込み1200円

申込先:上智大学イベロアメリカ研究所 電話 03-3238-3530 メール ibero@sophia.ac.jp )