『アメリカス世界を生きるマヤ人—向こう岸からのメキシコ史』初谷 譲次 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『アメリカス世界を生きるマヤ人—向こう岸からのメキシコ史』初谷 譲次


メキシコ南東部ユカタン半島に住む低地マヤ人が、スペイン人による征服以降、過酷な状況下におかれ、マヤ人が白人支配下での差別と抑圧に対して繰り返した反乱を起こした。

第一次大戦時米国でチュウインガム消費が拡大し、その原料であるチクル栽培のため、カランサ政権はマヤ指導者の一人を取り込み、連邦直轄領として本格的に開発出来るようにした。これを外資と結託した国家に先住民指導者が取り込まれ、先住民は低賃金労働の搾取に喘ぐ敗者との見方に対し、それだけでは先住民の歴史的主体性が見過ごされるとの観点から、ユカタン農村社会の変化を征服から20 世紀初頭に至るまでを考察し、また公共施設の大壁画から今も伝えられている「反乱するマヤ」のイメージ、階級闘争探しとしてのマヤ史観をとらえるマルクス主義的歴史学や、マヤを一つの集団としてみるメキシコ文化人類学への批判を述べている。

これまでややもすると「敗者」と見なすことが多かったこの地の先住民を、支配者の強制する枠組みに拒絶し、受け入れざるを得なくなっても自らの文化を発展させてきたマヤ人と見て、その歴史的主体性を描こうとした労作である。

(天理大学出版部 2009年12月 288頁 3000円+税)

『ラテンアメリカ時報』2010年春号(No.1390)より