『グローバル化時代を生きるマヤの人々—宗教・文化・社会』 桜井 三枝子 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『グローバル化時代を生きるマヤの人々—宗教・文化・社会』 桜井 三枝子


スペインの征服と植民地政策によって強制されたカトリック信仰が、現在の先住民マヤの集落における文化にいかなる習合現象や文化の変容をもたらしてきたか? そして政情不安や天候災害が続き内戦を経て、マヤの人々がグローバルな手法に訴えて主体化を実現しているか?を、文化人類学、メソアメリカ研究者が現地調査を踏まえて論じた博士論文に加筆修正を加えたものである。

前者については、マヤ地域全体の概説、マヤ研究史、グアテマラの歴史と社会的背景を述べた後に、調査フィールドであるサンティアゴ市の概観を示し、同市での儀礼過程、カトリック改革派とプロテスタントの布教のせめぎ合い、他のマヤ村落での先住民と下層民の信ずる神について考察している。後者については、グアテマラ内戦後起きたマヤ語復活運動と土地奪還運動、マヤ女性世界での村落閉鎖社会からローカル→ナショナル→グローバル化への変容のなかでのジェンダー意識の芽ばえ、そしてマヤ先住民、グアテマラ、エルサルバドル人の米国への移住プロセスを追い、ロサンゼルスの中米系ヒスパニック社会の声を紹介している。これまでマヤというと“ 謎に満ちた文明” という決まり文句で見られていたが、グローバル化時代に対応して生きようとしているエスニック集団としてのマヤの実像を明らかにしている。

(明石書店 2010年2月 334頁4700円+税)

『ラテンアメリカ時報』2010年春号(No.1390)より