『サヨナラ —自ら娼婦となった少女』  ラウラ・レストレーポ | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『サヨナラ —自ら娼婦となった少女』  ラウラ・レストレーポ


コロンビアの女流作家によるノンフィクションと歴史が入り混じった独特の文体による小説。本書も一女性ジャーナリストが関係者に丹念に聞き取りを行うという形を取っている。マグダレナ川沿いに拓かれたコロンビア最大の石油掘削の基地トーラ(バランカベルメがモデル)近くの娼家街に、娼婦を志望する野育ちの少女がやってくる。船着き場から荷車に乗せてあげた少年サクラメントは、以後娼館に連れていったことを悔いる気持ちからいつかは少女を助け出したいと思い続けるが、異邦人の面影をもつ少女は日本語のサヨナラという名で人気を集める。

過酷な重労働を強いられる石油労働者にとって、娼婦買いはたまの安らぎであり、娼婦達とある種の連帯感を共有しているが、劣悪な労働条件に憤慨した労働者のストライキが発生し、会社の意を受けた軍が鎮圧に乗り出す。娼婦街に潜んだ労働組合幹部や匿った娼婦達が次々に摘発され、サヨナラは初めて唯一恋愛感情をもったスト指導グループの石油労働者パヤネスが戻るのを待つが、数ヶ月後にパヤネスはサヨナラと別れる。会社側の懐柔にスト・グループと決別したサクラメントは、彼女とその妹たちを救おうとサヨナラと結婚するが、サヨナラを誰も知らない土地に移って元の名アマンダに戻った彼女を貞節な妻にしようとしたものの、強い嫉妬心によって破局する。トーラに戻ったサヨナラは、石油会社の管理強化ですっかり変わった町を後にして、パヤネスと町を出て行ったが、パヤネスが戻ったというのは幻想で、一人で出たという者もいる。

焦熱の石油採掘最前線の町に、ともに極限の生活の日々を過ごす娼婦と労働者たち、現在の生活にさよならを言って何かを追い求めるサヨナラの姿は、外資による会社の搾取、軍やゲリラによるビオレンシア(政治的暴力)の横行、社会の混乱の中で、安定した平和を模索するコロンビアの姿が重なると訳者も指摘している。

(松本楚子、サンドラ・モラーレス・ムニョス訳現代企画室2010年1月488頁3000円+税)