ラテンアメリカ文学研究者で、ガルシア=マルケスの『予告された殺人の記録』(新潮社 1983年、新潮文庫1997年)、マヌエル・プイグの『蜘蛛女のキス』(集英社1983年、集英社文庫1988年)、バルガス=リョサの『ケルト人の夢』(岩波書店2021年)、ロベルト・ボラーニョの『アメリカ大陸のナチ文学』(白水社2015年)等々、現代ラテンアメリカ文学の代表的な作家の著作の訳書を出し、日本でのラテンアメリカ文学認知に多大な功績を残した野谷東京大学名誉教授が、2013年の東京大学での公開最終講義をはじめ2008年以降様々な媒体に寄稿したラテンアメリカ文学や映画を論じたものを中心に、ラテンアメリカ文化論といえる約60本の評論、エッセイ、コラムを取捨選択して整理した論集。
ガルシア=マルケスやボルヘス、プイグ、コルタサル、バルガス=リョサ、ボラーニョ等作家論、その作品からのラテンアメリカ文化の深読み、ラテンアメリカ文学にも大きな影響を与えたスペインのセルバンテスの評価、学生時代からのラテンアメリカ文学探究の道などを述べ、読者に人間の持つ多様な可能性を深いところから表現しているラテンアメリカの文学や映画を受け止め、咀嚼し他者に発信してほしいと結んでいる。
〔桜井 敏浩〕
(五柳書院 2023年1月 432頁 3,300円+税 ISBN978-4-901646-40-6)
〔『ラテンアメリカ時報』 2023年春号(No.1442)より〕