『サンバの町それから ―外国人と共に生きる群馬・大泉』 上毛新聞社 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『サンバの町それから ―外国人と共に生きる群馬・大泉』  上毛新聞社


 1990年に出入国管理が改正され日系三世、四世が就労出来るようになっていわゆる出稼ぎブームが起きた。群馬県大泉町では近くの電器・自動車関連産業で働くブラジル等中南米からの日系人が集住したことから、地元紙の上毛新聞社が『サンバの町から』を1997年に刊行した。本書では、当時は若くて独身者が多かった日系人も定年を迎える歳となり、一時的なデカセギの筈だったのが定住することにした者も多くなった今、この30年をあらためて俯瞰すると10年毎に大きな節目があったと振り返る。1990年代の町民との蜜月時代、サンバ・パレードがスポンサー減と警備難で中止になったことに象徴される離反の2000年初頭、2011年の東日本大震災の影響を受けた2010年代、住民・ボランティア等との協調が進んできたもののすべての人が艱難辛苦に見舞われた新型コロナウイルス禍の住民とブラジル等外国籍移住者との協働の現在の時代まで概観している。中南米日系人が急増した大泉町で得られた教訓は「労働力だけ都合よく使うことはできない」ということであり、違う文化、宗教等の背景を持つ外国籍者は家族を守るためにコミュニティを形成するがそれが内向き志向を強めれば地域社会に背を向けることも有り得るとの指摘は的を射ている。国や地方自治体はどう対応すべきかなど、地元紙ならではの綿密な取材の積み上げは説得力がある。

〔桜井 敏浩〕

 (上毛新聞社営業局出版編集部 2022年3月 233頁 1,400円+税 ISBN978-4-86352-306-7)
〔『ラテンアメリカ時報』 2023年春号(No.1442)より〕