『世界の中のラテンアメリカ政治』 舛方 周一郎・宮地 隆廣 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『世界の中のラテンアメリカ政治』   舛方 周一郎・宮地 隆廣


 ラテンアメリカの独立前の先植民地期、植民地業績、独立への道と独立直後の国家形成、ポピュリズムの時代、メキシコ、アルゼンチン、ペルー、ブラジルでのポピュリズム政治と課題、軍による政治支配と米国の介入、冷戦による米国外交の変化、ペルー等の軍事政権の多様性と脆弱性、南米および中米での民主制への展開と民政移管・和平交渉、対外債務問題から国際金融機関が求めた構造調整政策から始まった新自由主義改革、それによる不平等の未解決を要因とする穏健型のブラジル、急進型のベネズエラ、その例外であるアルゼンチン、ニカラグアの左傾化に至るまでのラテンアメリカ政治の基調を概説し、最終章で民主制の後退と脆弱を左右する中間層と三権・統治機構の独立性、一国に収まらなくなってきた汚職と租税回避地によるロンダリングなどの多岐にわたる問題を解説している。最後に今後の民主制にとって重要なイシューとして多様性の尊重、環境保護、保守カトリックと新興勢力の福音派という宗教組織の政治への影響、政府への信頼を削ぐ国際犯罪組織という問題の存在を指摘している。
 ラテンアメリカの歴史を世界史の流れの中に位置付け、その特質を的確に捉えた個々のテーマがよく整理され、全体像が俯瞰されている。具体的視点で国毎に解説した24本のコラムもラテンアメリカ政治の理解を助けてくれる。    

〔桜井 敏浩〕

(東京外国語大学出版会 2023年3月 328頁 2,400円+税 ISBN978-4-910635-04-0 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2023年春号(No.1442)より〕