『アマゾンに鉄道を作る ―大成建設秘録 電気がないから幸せだった。』 風樹 茂 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『アマゾンに鉄道を作る ―大成建設秘録 電気がないから幸せだった。』  風樹 茂


本書は、ボリビア東部のサンタクルスからブラジルのコルンバに向かうボリビア国鉄(ENFE)路線が豪雨被害で寸断された時の鉄道復旧工事のために、大成建設が1986年にChochis に工事事務所を設けた際に、6人の工事技術者とともに通訳兼総務管理者として派遣され働いた著者の経験を述べたもの。1979年1月に記録的な豪雨で盛り土流失、土砂堆積、橋梁破損で120日間運休して応急工事で復旧したものの、本格的復旧(69kmの区間に延べ325mの橋梁を9か所建設)のために国際協力機構(JICA)が1979年4月に予備調査し、7月に一般社団法人海外鉄道技術協力協会(JARTS)のフィージビリティ調査を経て在来ルートの改良復旧のためにコンサルティングフィーを含む 55.44億円の円借款案件となり、1985年に国際入札で大成+日建ボリビアが落札、上記工事が行われたという経緯が詳しく書かれている。
当時の関係者からの聞き取りと資料によって、ODA工事の裏側、現地貨ポーションの回収の苦労などの挿話も含めて記述している。あえて言えば現地はちょうどアマゾン河水系とラプラタ河水系の最上流で入り組んでいる地域なので、「アマゾンに鉄道を作る」という表題は些か違和感を感じるが、40年近く前の話とはいえかかる海外建設工事現場の実態が詳細に紹介されている興味深いドキュメンタリーである。

〔桜井 敏浩〕

(2023年2月 五月書房新社 349頁 2,000円+税 ISBN978-4-909542-46-5 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2023年春号(No.1442)より〕