『ブラジルの日系人』 原田 清編著 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『ブラジルの日系人』 原田 清編著


移住100周年記念刊行書 “O Nikkei no Brasil” の日本語訳版。

第1章「世界における日本移民の歴史的発展」(吉岡黎明)は、ラテンアメリカ、ブラジル各地域の日系移民の歴史的進展を、第2章「日系人の発展および同化の過程」(原田 清)は、本書の大きな部分を占め、各分野の専門家の協力を得て、戦前、戦後、現在の進化と統合のプロセス、各分野における日系人の役割とその影響を分析、多文化・多人種社会にあって多少の差別が残存する中での日系人の進化の段階、各分野別に活動する協会、組織、人物などについても紹介、第3章「第二次世界大戦がもたらした緊迫状態」(原田 清)は、戦中・戦後の日系社会での対立を臣道連盟の事例などで述べている。

第4章「ブラジル社会における日系人の地位」(原田 清)は、日系人の社会学的プロフィール、ブラジル社会のピラミッド型階級制の中における日系の位置づけと将来の日系人像を、第5章「農業における日系人の影響」(山中イジドーロ)は、ブラジル農業のおける日本人移民の歴史を意義、戦前戦後の日本政府の援助、セラード開発を含む両国の協力、日系人の実績を詳述し、第6章「商業、工業、サービス業における日系人の影響」(西田ロッケ・ツグオ)は、サンパウロ市を中心に日本人移民の商業・工業・サービス業活動への参加を述べている。

第7章「日系社会の社会福祉事業」(吉岡黎明)は、マルガリータ・ワタナベの戦中戦後の「救済会」をはじめ「サンパウロ日伯援護会」、知的障害者施設「こどものその」、「希望の家」など日系社会における福祉の将来を、第8章「医療衛生分野への日系人の関わり」(山田レナト・ツネヤス)は、移民を苦しめた風土病、病気・怪我、妊娠にともなう問題などと医療援護の進展、診療施設や病院の建設などを紹介している。

第9章「デカセギ現象の過去、現在および未来」(二宮正人)ではその経緯、日本の入管法改正による影響、CIATE(国外就労者情報援護センター)の活動、在日ブラジル人に対するブラジル政府の支援にまで言及している。第10章「日本における日系ブラジル人」(中川デシオ勇、中川・柳田郷子)は、デカセギの健康問題、ブラジルに残された子供たち、ブラジルに帰国する子供たち、日本で定住化する子供たちの問題にも触れ、一種の二重アイデンティティを作りあげる子供たちの順応への困難などを取り上げている。

第11章「都道府県県人会の貢献」(林アンドレー亮)は、日系人団体と県人会の役割とブラジル社会への貢献、県人会の将来を、第12章「法律分野における日伯交流」(渡部和夫)では、伯日比較法学会の設立・活動、在日ブラジル人就労者問題への取り組みを、第13章「日本政府の日系社会への支援」(大原 毅)は、日本政府のそもそもの海外移住問題の始まりから戦前・戦中・戦後の政策と支援を辿っている。

第14章「日系社会の将来」(上田雅三)は、顔と現在を視野に入れた日系社会とブラジル社会の文化の相互作用から将来展望への前提、日本へのデカセギ現象、日本移民子孫のブラジル人としての自覚、文化の覚醒伝承を分析し将来展望を述べている。第15章は「日系社会の著名人へのインタビュー」、第16章には2008年の「主だった日本移民百周年記念関連行事」を多くのカラー写真とともに紹介している。

ブラジルでの日本人移民の100年の歴史と、様々な問題と課題の断面、過去と現在から将来展望に至るまで、ブラジル日系社会の多くの専門家を動員して纏められた優れた総合解説書であり、関心をもつ日本の読者にも是非一読を薦めたい。

(二宮正人監訳 2010年 404頁 サンパウロのニッケイ新聞社 電話+55-11-3208-3977 nikkeybr@nikkeyshimbun.com.br で入手可能、70レアル。日本では(社)日本ブラジル中央協会が受託販売を行っている。6000円+送料。連絡先 info@nipo-brasil.org Fax 03-3597-8008へ)