『チェンジメーカー −社会起業家が世の中を変える』  渡邊 奈々 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『チェンジメーカー −社会起業家が世の中を変える』  渡邊 奈々


「社会の“おかしなこと”を少しでもよくしようと、自ら動き出し、普通なら“そんなことが仕事になるはずがない”と思われることを、情熱とひたむきさと冷静なプランニングによって、事業として成立させている人たち」を、18団体の創立者などのプロフィールと活動の経緯、実績を紹介している。それぞれの章の冒頭にはその主人公の素晴らしい表情のポートレートが載っているが、一つの社会事業を成した被写体の迫力とともに、撮影した著者がニューヨークを中心に活躍している在米30年の写真家だからである。

ラテンアメリカからは、メキシコから今やラテンアメリカ各地に事業展開している大手セメントメーカーのセメックス社と組んで、人口の40%に相当する極貧層の人たちに30%引きのセメントを販売し、少しずつ家を造らせる「セルフヘルプ・ハウジング」を仲介するアショカ財団(本拠地は米国)、同財団のブエノスアイレス支部勤務から始めて、アルゼンチン、チリ、ブラジル、ウルグアイの優良な中小企業事業者を発掘し、小さなビジネスを発展させるために経営スキルを教え投資家を紹介することによって、開発途上国援助では無視されている中間層の力を経済成長に貢献させている、ハーバート大学とイェール大学院を卒業した若き米国女性の中小企業診断士が代表を務める米国の団体エンデヴァー、ラテンアメリカを中心に2500万人もいる貧しいコーヒー生産者の生活向上のために、オランダを拠点にフェアートレード運動を行っているオランダの団体マックスハベラーのマ−ケッティングマネージャーの女性が取り上げられている。ほとんどの場合、フェアートレードの対象となるのは小作の小さな農園で育成された有機豆で、人造肥料の使用を抑えた有機栽培、自然環境への配慮、農夫が正当な労賃を受け取り強制労働や児童労働でない作業などが求められ、この「有機栽培、環境留意」そしてフェアートレードの三大条件が揃ったものは「サスティナブル・コーヒー」と呼ばれる。

その他、活動地域はラテンアメリカに関係ないが、世界各地で活躍している4人の日本女性も含めて、社会的使命感をもって従来のビジネス手法を積極的に採り入れて経済的リターンと社会的リターンの両立を追求する起業家の姿を紹介している。巻末には18団体の連絡先、その他のソーシャルベンチャー28団体の概要紹介も付いている。ラテンアメリカ関係の記述は本書の中ではごく一部に限られるが、社会貢献とビジネスを結びつけた運動のうねりが世界各地で広がり始めたことを知ることが出来る。

(日経BP社発行日経BP出版センター発売 2010年8月 222頁1600円+税)