2008年の日本人ブラジル移住100周年に、日本とブラジルの10人の研究者が、立教大学ラテンアメリカ研究所で行った共同研究での日本人のブラジル移民研究史、ブラジルに渡った日本移民とその日系社会の歴史、そして日本移民関係史資料の概要やそのデジタル化によるデジタルアーカイブ化の試みを総括したものである。
第一部「ブラジル日本移民研究の回顧と展望」では人文・社会科学分野を中心にした研究史の紹介と両国の研究者の共同討議での論議を、第二部「ブラジル日本人移民史・日系社会史」では日本移民の軌跡とカンポ・グランデ市における日系社会の発展例、原始林の開拓から始められたアリアンサ移住地の歴史、日系コロニアの変遷と日伯学園創設の提言、第三部「ブラジル日本人移民関係史資料とデジタルアーカイブ」では、外交史料館所蔵資料と写真資料のデジタル化、アーカイブ構築の可能性、その意義などを扱っている。これら一連の取り組みによって、日本人がブラジルで辿ったもうひとつの近現代史に注目し、そこから見えてくるものを日本人、ブラジル日系人が再検証することの重要性を訴えている。
(明石書店 2010年7月 350頁 4500円+税)
『ラテンアメリカ時報』2010年秋号(No.1392)より