執筆者:硯田一弘(アディルザス代表取締役)
先週の日曜日から冬時間に戻って、日本との時差は13時間になりました。即ち、日本の朝9時はパラグアイの前日夜8時ということで、12時間時差だった夏時間と比べると、少しややこしくなりました。とは言っても、アスンシオンに住んでいた時は自動的に携帯の表示時間が変わって、それに慣れれば良い、という感じでしたが、ブラジル国境のエステ市(正確にはHernandarias市)に引っ越して迎えた時間切替は思わぬややこしさを生じています。というのも、直ぐ傍を流れるパラナ川の向こう岸はブラジルで、今まで同じ時間帯だったのに、向こうは冬時間の調整をしていないのです。週末には川向うのスーパーに買い物に行くパターンの生活を送っていると、携帯が向こう岸の電波のままロックされていたりして、実際のパラグアイ時間より1時間進んだ時間を表示することが起きたりします。
実は大国ブラジルには国内に3つの時間帯があって地域によってパラグアイとの時差が異なっています。中心都市サンパウロの時間は2019年10月にサマータイムを取りやめて通年で同じ時間になったことで、それまでほぼ一年中パラグアイとは時差1時間という感覚であったものが、パラグアイが夏時間を実施している間は時差が無い状態が4年続いていました。
政権が変わった今年は10月から以前のようにサマータイムを実施するという説もあるのでハッキリしませんが、いずれにしてもブラジルに大きく依存しているエステ市周辺では、朝の始業は今まで通り=ブラジル時間、夕方の終業はパラグアイ時間で結局1時間長く働くという店舗なども出てきています。
実はエステの店舗は朝6時頃から始業しているところが多く、何故かと思っていましたが、昔から続くブラジルとの1時間時差による商機を取りこぼすまいというパラグアイ商人の心意気によるものということを、こちらに移り住んで体感することが出来た訳です。
アスンシオンも川向うはアルゼンチンですが、両国の間に時差は無いのでこんなややこしさは発生しませんでした。また、ブラジルと同じ時間を採用している南米大陸西端のチリとパラグアイでは1時間チリが先行するという変な時間帯(日が沈む方が時間が早い)という珍現象も生じています。
それと、アラブ系の人達が多く暮らすエステ市周辺では、今はラマダン=断食のタイミングでもあり、多くの人達が日の出から日没まで、水すら接種しないという生活を送っています。これもアスンシオンでは知り得なかったことですが、先週夕食に招いてくれたレバノン系ブラジル人の一家から、イスラムの生活のパターンを教えて貰いました。
下の表はラマダンの期間中(今年は3月23日から4月21日まで)の30日間の日の出と日の入りの時間を示す断食カレンダーで、イスラム教徒の皆さんはこのカレンダーに沿って、12時間以上の間飲み食いを断って生活をされます。相当体力を使いそうですが、友人によると、この期間はお腹は空くものの、集中力が増して頭がスッキリするそうです。
1988年に初めてベネズエラに赴任した時、当時ベネズエラの石油化学公団の始業時間が朝7時で驚きました。今回はイスラム教という新たな異文化との共存を経験していますが、これはこれで驚きに富むと共に、知ることの愉しみを味合わせてもらっています。
ところで、先週の言葉repunte紹介の中で、パラグアイの二つの水力発電所の能力と発電実績についてご紹介し、パラグアイの水力発電は日本の水力の約3割に匹敵する量の電力を供給している、とご紹介しましたが、日本の電力中央研究所に勤める友人から、イタイプ発電所単体で、日本の総発電量の1割に匹敵する電力を作っていると言って良い、とのコメントを頂きました。イタイプの14,000mwという発電力は700mwの発電機20基が生み出すものですが、日本最大の水力発電所である奥只見発電所の出力が560mwですから、イタイプの規模が如何に大きいか、改めて感じて頂けるものと思います。
時間も規模も日本とは随分違うパラグアイですが、違った文化や社会構造を吸収してこその貿易立国日本とも言える筈。是非パラグアイに「違い」を実感しにお運びください。
昨日4月8日はお釈迦様の誕生日=花祭り、今日4月9日はキリストの復活を祝うPascuaでした。お釈迦様の生誕は今から2647年前の西暦紀元前624年なのだそうです。
一方でキリストの生誕年を紀元とするとされる西暦ですから、2023年前が生誕年なのか?というと、そうでもなさそうです。キリストの生誕年には諸説があって何とも言えないというのが実態のようです。ただ、この復活祭を理解するのに判り易い解説を見つけましたので、一見解としてお読みください。
https://turkish.jp/blog/%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%AD%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88/
今週後半のパラグアイは復活祭休みでしたから、あちこち出掛けました。その一つが国境を超えたブラジル側にある巴西承天寺。パラグアイやブラジルの台湾系華僑の浄財で1999年に建立された仏教寺院です。
ここのところ毎週触れている世界最大の勢力発電ダムであるItaipuダムのブラジル側の手前にあり、復活祭の週末にもかかわらず観光客で賑わっていました。そして以前もご紹介した大観覧車Yup Star Roda Gigante。高さ88m、一周22分の観覧車からはブラジル・パラグアイ・アルゼンチンが一望に見渡せ、完成したばかりのブラジル・パラグアイの新橋Puente Integralが間近に見られる絶景スポット。
この観覧車は完成して1年以上が経っていますが、コロナの最中の完成であったことや、新橋の両側の道路整備が出来ていないことなどから、大連休の最中であるにも関わらず観光客の数はまばらでした。
今月30日はいよいよパラグアイ大統領選挙と統一地方選挙の投票日、街中が選挙一色という雰囲気にもなっており、新聞やテレビなどの媒体では各陣営が相手陣営を誹謗中傷する選挙お馴染みのシーンが展開されていますが、今日のabc color紙では、復活祭のミサの中で大司教が「相手を誹謗中傷することをやめよう」と呼びかける説教をしたという記事が目を惹きました。
https://www.abc.com.py/nacionales/2023/04/09/misa-de-pascua-difamacion-entre-politicos-no-es-el-camino-para-construir-dijo-cardenal/
日本でも地方選挙が終わって勢力地図が塗り替わっているようですが、敵対勢力を攻撃するばかりでなく、如何に協調して物事を前向きに進めるか?についての議論を重ねてほしいと期待します。
パラグアイの主要な穀物は年産1000万トンを超える大豆ですが、二番目に多いのが今日の言葉maízです。maízを訳してトウモロコシと書きましたが、日本ではトウモロコシと言えば茹でたり焼いたりして食べるSweet Cornを指しますが、米国や南米で主に作られているのは飼料用の作物で、見た目はトウモロコシですが、そのまま茹でても美味しくもなんともない別物と言えます。
このマイスの輸出量が今年456万トンとなって昨年比300万トンも増えたというのが今日のニュース。https://www.ultimahora.com/se-exportaron-3-millones-toneladas-mas-maiz-n3057987.html
主な輸出先は隣国ブラジルで、輸出数量の45%が陸路を通じて出荷されています。
パラグアイの地域別農産物を示した絵地図
ブラジルに輸出されたマイスは、ニワトリの餌としても使われますから、パラグアイの餌を食べた鶏の肉が日本で消費されている40万トン以上の鶏肉の原料となっている訳です。
昨日はイグアス市という日本人移住地の移住資料館で1960年頃の移住当時の模様を館長から伺いました。今まで何度もイグアス市には出入りしていましたが、資料館でシッカリ話を伺ったのはこれが初めてで、大いに勉強になりました。
https://sibatabi.com/history-colonia-iguazu/
http://tabi-taka.com/?p=18411
これらのブログの筆者たちが判り易く説明してくれています。
今週のパラグアイは全国的に雨模様、しかも気温が低めで、朝晩は肌寒いこともあって風邪を引いた人も大勢います。一方でアルゼンチンではデング熱の犠牲者が35人となって過去最高となったそうで、雨の後に気温が上がるとまた蚊の活動も活発になるでしょうから、気の抜けない状況が続くことになりそうです。
https://www.lanacion.com.py/mundo/2023/04/16/records-de-muertes-por-dengue-en-la-argentina/
大統領と国会議員の選挙を一週間後に控え、街中が選挙一色といった雰囲気になってきました。これまで単独首位・圧勝と言われたサンティこと与党ペニャ候補は、野党のエフライン候補の猛追を受けて、いまや薄氷を踏む闘いと言われています。
これは今日のUltima Hora紙の一面ですが、Elecciones en la recta final y no se vislumbra un claro ganador(選挙は最終直線に入ったものの、未だに明確な勝者は見えず)ということで、大接戦となっている模様です。
ただ、ペニャ氏は前回2018年の大統領選を前にした2017年の予備選で、党内で圧勝と言われていたにもかかわらず、蓋を開けてみたら二番手のベニテス氏(現大統領)に軍配が上がる、という失態を演じたため、今回も極力自陣の優位を隠し、懸命な戦いぶりを内外に示すことで、支持者離れを食い止めようとしているようにも思われます。
今回の選挙では、自分が勝てば台湾と断交して中国と国交を結ぶ、と公言したエフライン氏が世界的な注目を集め、恐らく大陸政府からも相当な裏の肩入れがなされているものと想像されます。
民主党政権の米国は、共和党と友好関係にあったオラシオ・カルテス前大統領をマネーロンダリング等の罪で米国への入国を禁止とすると攻撃、1953年以降70年にもわたって南米で最も親米と言われるパラグアイを、親中国家に切り替えるリスクのタネを蒔いてしまった訳で、今回の選挙においても米国からの目だった応援の気配は見られないものの、水面下でどのような動きを見せているのか気になります。
そうした中、日本の林外務大臣が四月末からの連休を利用して中南米歴訪を予定され、パラグアイも訪問先に含まれるとの報道がなされました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA12CVL0S3A410C2000000/
5月に広島で開催されるサミットの地ならしとのことですが、正に次期政権がどうなるか?という微妙なタイミングでの御来訪であり、外務大臣という要職者がパラグアイに来られる訳なので、選挙の結果がどちらに転ぶにせよ、台湾との関係維持という独自性の堅持を強力に説得して欲しいところです。
昨夜9時過ぎに不明の番号から電話が鳴って、出てみると「テレビ朝日のものだが、明日の大統領選挙に関して話を訊きたい」とのこと。なんだか訝しく感じたものの、断る理由もないので承諾すると、一旦電話は切れて、今度はちゃんとした日本の電話番号が表示されてテレビ局の人と思しき話し方で、パラグアイの大統領選挙の報道番組を作るので、パラグアイ時間の日曜朝にZoomで取材したいので、協力してください、と丁重に頼まれました。コッチが寝ている夜中に質問票が送られてきて、パラグアイの産業構造や台湾と中国の立ち位置などについて世論がどういう傾向か?という趣旨のインタビューとなりました。
https://www.tv-asahi.co.jp/scramble/
この番組で5月1日=日本時間では既に今日、放送されるそうなので、御興味のある方は御視聴ください。
パラグアイの産業構造については、今までもお知らせして来た通り、農業が中心の大農産国であり、食糧自給率は340%と世界で一番。古来から民を食べさせることが為政者の最大の役割としてきた中国にとっては、何としても押さえておきたい重要拠点なので、今回の大統領選挙でも台湾との友好関係を切り崩して、南米オセロを真っ赤に塗り替えようという魂胆見え見えの露骨な圧力を主要産業である農業関係者にかけ続けてきた訳です。
これに対して、パラグアイの経済発展に大きく寄与してきた与党コロラド党ことANR(Asociación Nacional Republicana)は、前政権で経済政策の中心的役割を果たしたSantiago Peña氏を擁立して、台湾との関係を維持し、発展を継続的なものにしようと訴えてきました。
今回の選挙での一つの注目点は、国民の支持を広く得ている与党の党員票がどこまで伸びるか?ということで、午後5時を回った時点でのテレビニュースでは、過去の選挙と比べて接戦と言われるために、党員の投票率が60%を上回っている、と報じられています。
このままいけば、台湾との断交方針を示唆する野党候補Efraín Alegre氏を破って次期政権に就くことになると期待されますが、まだ気は抜けない状況です。
カルテス氏を激しく批判することで知られる販売部数最大の全国紙abc colorの電子版でも、Peña氏優勢としていますから、このまま行けばパラグアイの安定は約束されるものと思われます。
比較的中立的と言われるUltima Hora紙の電子版は、現時点ではまだ具体的な数字を挙げることは避けています。
そしてカルテス新聞とも言われるLa Nacion紙電子版でも、abc color同様の予想値が掲載されていますが、日本でのみ話題となった元サッカー選手Chilavert氏の名前も出ています。具体的な結果はパラグアイ時間の今夜遅くに判明する筈で、これを受けて日本でも正午頃からニュースが流れると思います。
滅多に取り上げられることのなかったパラグアイですが、ウクライナ侵攻の台湾への影響などが取りざたされる今、ホットな話題として日本でも報じられるようですから、お時間のある方の御視聴、ご意見をお待ちします。https://www.tv-asahi.co.jp/bangumi/