『絆と権力−ガルシア=マルケスとカストロ』アンヘル・エステバン、スデファニー・パニチェリ 野谷文昭訳 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『絆と権力−ガルシア=マルケスとカストロ』アンヘル・エステバン、スデファニー・パニチェリ 野谷文昭訳


1959 年の革命成功以来今日に至るまでキューバを率いてきたフィデル・カストロと、82年のノーベル文学賞受賞者であるコロンビアの作家ガルシア=マルケス(ガボ)との間には長い「ある友情の風景」(原題)が続いている。『百年の孤独』により名声を得て70年代半ばから、ガボはラテンアメリカの社会的正義実現のために積極的にパナマのトリホス将軍の運河返還条約やニカラグア支援等に関わるとともに、フィデルとの親密な信頼関係を築いた。

本書は、スペインのグラナダ大学の二人のキューバ文学研究者が、二人の間の友情とキューバ情勢に関わるガボのその時々の言動を、多くの関係者の証言、報道記事などを交えて検証したものである。

キューバ革命体制とその政策の熱心な擁護者として知られるガボだが、カストロ政権下での言論抑制やアンゴラ出兵などの際の言動を詳細に辿ることにより、ガボの国際的な影響力の大きさ、フィデルとの結びつきがあまりの強い故に公的に非難することを拒み続けている姿勢に対して、あらためて“ 作家の責任” を問いかけている。

(新潮社 2010年4月 383頁 2300円+税)

『ラテンアメリカ時報』2010年秋号(No.1392)より