執筆者:ピーター藤尾(在チリ。サンテイアゴ)
2023年3月27日ー4月2日
「政治」
1)ボリッチ動向
国際会議から戻って来たボリッチが最初にしたのは警察官の葬儀への参加でした。警官殺害は先日もありましたが、今回の場合は犯罪グループの発砲した弾丸が女性警官に当たり 死亡しました。ボリッチは警察を全力を挙げて支持・援護するとしました。市民の安全のための法案を国会で議論し、犯罪者の罰則強化など早急に成立するよう努力するとか。
世論調査で市民の関心は犯罪の増加を抑えることと以前から言われていました。ボリッチの警察への接近は与党内の分裂を拡大しているとか。3年半前の社会騒乱の時、新左翼・共産党は右翼政権は警察を使って市民を虐待すると批判していたのですから、それを自分たちがやるのは受け入れ難いでしょうね。
この件で新聞の記事になったのはボリッチの変身の件です。動物で皮膚の色を変える種類がありますが、ボリッチもその一種だろうとしています。しかし何と新左翼のメンバーの一人があの社会騒乱の時、警察に嚙みついたのは過ちだった、自己批判するとコメントしました。?
その女性警官を殺害した事件の犯人の一人は大統領恩赦で刑務所から出た人間でした。2020年ですから、ピニェラの時の恩赦です。右翼がボリッチの恩赦を批判するなら自分たちの側のピニェラの恩赦も批判すべきですね。ところでそのピニェラは3年半前の社会騒乱の時に人権侵害があったか調べるために検察に呼ばれるとか。彼だけでなく、当時の政府中枢も呼び出されそうです。右翼が左翼を責めるのに対抗して左翼もこうした嫌がらせをするのですね。
今年は軍事革命50周年です。各種の催し物があるでしょうが、この問題は左右の諍いを拡大し、社会問題になることは間違いないです。ボリッチが上手く抑えることは不可能でしょうから2回目の社会騒乱になりそうです。ボリッチは4年の任期をちゃんと収めることができるのでしょうか。その話をしていると友だちが、ペルーの例と同じですが、国会と大統領が対立してボリッチは 4年間その職を続けることはないだろうとのこと。どうでしょう?
2)国会
国会で大統領は2回しかその職に就けないと言う法案が検討されています。つまりバチェレットやピニェラは3回目の挑戦はできない可能性があるわけです。ピニェラは候補者になるのを喜んでいるようですし、バチェレットは首都圏の区長とベトナム訪問とかニュースになっています。もっともバチェレットに関して日本から彼女は無作為と責任転嫁を続けて、チリをジリ貧に追い込んだ張本人だとするコメントがありました。
さてチリの外相はベネスエラ政府は不法移民としてチリから国際追放になった同国人が飛行機でベネスエラ領土に送られてきたら、それを受け入れると確認したとコメントしました。その費用はだれが払うのかな?
また先週拒否された厚生年金の6回目の引き出しが実現すれば、約500万人もの人の年金基金がゼロになるとか。政府がアホなのか本人が馬鹿なのか?しかし何と今月の中ごろに再度国会でこの問題を議論するとか。議員のレベルが低すぎる?
「経済)
1)銅価格と為替
1ポンド4.05ペソと先週とほとんど変わらず。ただ週の半ばに4.1まで上がったのですが、残念なことに最後に下がりました。為替は1ドル789ペソとペソが少し強くなっています。コデルコ銅公社は世界最大級の銅の生産会社ですが、昨年の国庫への納入額は27.5億ドルと前年対比63%の減少になりました。生産額の減少と価格が下がった事が原因ですが、国にとっては厳しい状況ですね。と書くと大問題のようですが、一昨年が良すぎたので、過去10年間で、昨年は3番目に良い年でした。
もちろん私営の企業も同じだったでしょう。今年はどうなるかな?銅に並んだ重要品目になってきたリチウムですが、昨年の生産量は1位がオーストラリアの32万トン、チリは2位の21万トンでした。次いで中国、アルゼンチンです。しかし埋蔵量は1位はチリで4950万トン、2位はオーストラリアの3300万トンです。チリはまだまだ生産量を上げられそうですね。
同じような例ですが、チリ株式市場を代表する30社IPSAは前年より128%も上がり250億ドルの利益を計上とか。確かに昨年は良かったのですね。
2)生活費の比較
OECD諸国の生活費の比較が行われました。住居費・交通費・教育費・食費…などの総合比較です。チリの価格は安い方から6番目。平均より低いレベルでした。日本やドイツはチリの価格より33%ほど高いとか。
3)求人
2月の求人は9.7万人と前年対比56%のマイナス。景気が落ち込んでいるのは明白ですね。今年のGDPは大丈夫かな?
「一般」
1)社会騒乱
29日は青年闘士の日でした。1985年に軍事政権に反抗して暴れた青年が殺されたわけですが、同じようにその日首都圏のあちこちで暴動騒ぎがあり75人が逮捕され、8名が負傷しました。その中に警官も入っています。その事件の前にアプリアシオン高校の前で道路の封鎖があり、警察にモロトフ爆弾が投げられ交通渋滞が起きました。同じようにIN高校の前でも事件が起こり3人が逮捕されました。
南部のラ・アラウカニア州で木造の橋が燃やされ、マプチェの暴力活動を批判する二人の議員に脅迫状が届けられました。犯罪の増加という件では、殺人は2004年から2021年までに約3倍に上がっています。
2)コロナ問題
新規感染者数は一日2000人程度、感染率は10%以下と落ち着いた状況が継続です。緊急病棟などは空きベッドがたくさんあるとか。
3)タダ乗り
サンティアゴの公共バスのタダ乗りはMTTの発表で44%でした。大雑把に言うと二人に一人は料金を払わずバスに乗るわけですね。私は日本人学校に行く時と山岳公園に行く時、バスを使います。いつもタダ乗りする人がいるのを見ます。公共運送が利益が上がらず赤字なのでバス代を上げると言われると悲しいですね。それを防ぐのは簡単です。バス代を払ったかどうかビップカードを調べればよいわけです。係員をバスに派遣して各自のカードを調べ払っていなければ罰金を取るようにすれば、すぐに無料乗車は無くなります。ピニェラもボリッチもそれをしませんけど。
4)山火事
先日ボリッチが火事の後に建てている簡易住宅を見に行きましたが、今週のニュースでは現場の人ががっかりとか。政府は冬が来る前に簡易住宅を建て終えると約束したのに全然進んでいないと言うわけです。ボリッチが悪いのか部下が悪いのかですね。 以 上
4月3日ー4月9日
「政治」
1)ボリッチ動向
アルゼンチンの大統領フェルナンデスが来ました。訪問の詳しい理由は分かりませんが、破産が噂されるアルゼンチンは大変ですね。その面談の後にボリッチは「今回の山火事でチリが危機になったとき、彼と電話で話をすると助けてやるよとヘリコプター・消防隊員をチリに送ってくれた。それが危機を乗り越える大きな助けになった・・・・」と感謝のコメントをしました。
ウクライナのゼレンスキー大統領がテレビ面談でチリの国会議員と話しました。「皆さんの協力を感謝します。特に大統領のボリッチさんに」与野党が彼を応援していたのに新左翼と共産党は知らん顔???犯罪を抑える新法案が討議されていますが、警官が自衛のために銃を使えるようにする点でもめています。一応法案は成立しましたが、それに反対する新左翼はそのクレームを憲法裁判所に持ち込むとか。新左翼と共産党はボリッチにとって最悪の仲間です。政府と与党が争うのは世界でチリだけですね。
ボリッチは市民の安全を守るため15億ドルを用意して実施したいとしました。その計画の一つに安全省の設立があります。大蔵大臣はその財源をどこから出すか検討中です。ガソリン税を上げると言う話がありましたが、それは中止(延期かな?)になりました。
何と警官がまた射殺されました。この一か月で3人目です。警官を守れとするデモがありモネダ宮殿の近くの道路を埋めました。少ない人数ではなかったです。その犯人はまだ逮捕されていませんが、外人の名前が挙がっています。彼の警察軍の葬式に大統領経験者がほぼ全員参加しました。ボリッチがそこに行くと「何もできない大統領」と集まった人から暴言を受けました。
この件に関し政府は警察軍(私服と制服の2グループ)の長官と面談しただけでなく、与野党の代表とも面談し、これに関しては与野党の声を合わせて対応したいとしました。
ただ毎週書いているように与党側の分裂は深刻ですね。今週は社会党の党首が、サンティアゴ区の区長を批判しましたが、その区長は共産党です。ボリッチの人気は下位低迷ですが、新左翼・共産党を政府から外すと発表すると人気が急上昇するかもしれませんよ。毎週、これからチリはどうなるのかドキドキします。
来月の新憲法委員会の選挙はどうなるのでしょうか?テレビでその選挙の各グループの宣伝が始まりました。 全然盛り上がりませんが。
「経済」
1)銅価格と為替
1ポンド4.01ドルと何とか4ドル台を維持。為替はペソ安で1ドル818ペソでした。
2)中銀予想
今年のGDP予想は前回の発表ではマイナス1.75%からマイナス0.75%でした。それが今回は少し上向きになりマイナス0.5%からプラス0.5%です。しかし中銀発表の2月の成長率は0.5%のマイナス成長だったので、為替が一気に20ペソもペソ安になりました。過去12か月ではマイナス0.6%でした。世銀の予想では今年のチリはマイナス0.7%になるだろうとのこと。
物価上昇率は3月は1.1%と厳しいですが、5月に過去12か月の数字が10%を割って一桁台に戻るとか。ただ前回の中銀予想の今年の数字は3.6%から4.6%と悪くなりました。このため中銀は公定金利を維持することにしています。政府の政策によってこれらの予想は大きく変わりますね。中銀と大蔵省の意見が合わないとのコメントがありますが、考え方が違うのではなく世界の経済の動きに対応するだけでなくボリッチの意見をどう実現させるかでニュアンスが異なってくるわけです。
3)新車の販売
昨年の新車の販売は新記録になりました。日本からの車は前年よりかなり下がって5.5%で5位でした。中国が40%と圧倒的にトップです。私はいつも道路で車のブランドを見る癖があるのでおかしいな、10%以上は間違いないはずだがと思いました。調べると日本のブランドでもタイ・インドネシア・メキシコとか世界各地からチリに送り込まれていました。なるほど。
「一般)
1)移民問題
犯罪組織の増大が問題ですが、特に麻薬関係はほとんどが外国から来た組織です。したがって移民問題と言ってもその中の犯罪組織が注目されるわけです。そこで街の中で歩いている人を無差別にチェックをして不法移民の場合は逮捕できるとするアイデアが出ています。もちろんそれをやり始めるともっと警官が殺されますね???
今週、北部のアントファガスタで不法建築の家屋が壊されました。ほとんど雨の降らない地区なので屋根はトタンを置いているだけと言う感じでしたが、何ヘクタールもの大きな公共の土地に何十という家屋が建設されていました。それを警官の護衛でブルドーザーが壊していきます。反抗する人間がいて、何人か逮捕されました。家族が外に出て私たちの住む家を壊してどうするの?夜になれば私たちはどこに寝るのと泣き叫んでいました。全員が外国人でした。何でもその公共の土地に 家を建てるのを許すとマフィアの組織が金をとって認めていたとか。2022年の数字でチリには140万人の移民がいて、一番多いのはベネスエラ人で30%とか。そのうち半分くらいは不法移民なのでしょうか?
この週末に警官のコントロールを無視して逃げようとした車が警官をひき逃げしそうになったので警官がそれを止めようと発砲しました。犯人グループの一人が死亡、2名が逮捕されました。これは移民とは関係ありませんが。
2)コロナ問題
今週は新規患者数は1000人前後、陽性率は6%くらいで低め安定です。 以 上
4月10日ー4月16日
「政治」
1)ボリッチ動向
犯罪をどう抑えるかが現在のチリの緊急・最大の問題ですが、今週も事件が続いています。その対策がまるで右翼対左翼の争いという雰囲気です。犯罪グループを抑え込むために首都圏のいくつかの区を特別地区にして警察・軍隊を派遣する動きがあります。その作戦の名称は「暴力のない通り」ですが、もちろん首都圏だけでなくチリ各地で同じ動きをしています。対象の区(市)は首都圏の22区、各州の州都、それに第8州の3市です。
南部のマプチェ問題と北部の違法移民問題の対策と似たようなケースになります。それを新左翼・共産党は良く思わないので揉めます。その特別区に入らなかった(つまり犯罪が少なく正常と思われる)プロビデンシア区の区長が、その方針を批判し、その特別地区の犯罪者が私のところに流れ込むでしょうとコメント。どうなるかな?評論家のコメントですが、「ボリッチは全く大統領として機能していない。何がしたいのか何ができるのかわからない」確かにそうですね。4年の任期を完了できないかな?
その論文ではボリッチの終焉は新左翼・共産党の没落と連携するだろうとしています。私がいつも感じていることと同じです。それから共産党員のサンティアゴ区長が病院を購入した件で不正があったと問題になっています。チリで初めて区が病院を所有して区民に提供するとされていましたが、正常価格よりかなり高い金額でその病院を購入したので、その差額がどこに行ったのかというわけです。その契約は取り消されたようですが、区長は区の人事に手を付け大幅な人事異動を考えているとか。もっとも彼女の辞任を要求する声が大きくなっています。彼女は共産党のシンボルの様ですから、大事件ですね。共産党はまたいつものように右翼が私たちに場違いな非難をしているとコメントしています。
2)選挙
新憲法委員会の選挙はもう一か月を切りましたが。全く盛り上がりません。3年半前の社会騒乱の時は新憲法がチリを変えると国民が熱狂したのですが・・・ 昨年の9月の新憲法是非の投票でノーが圧勝しましたが、政府として国民が新憲法を承認すると信じていたボリッチはその結果に関し、何が間違ったのかを見極めることが出来ず、はっきりした見解を出しませんでした。今回もどっちが(誰が)勝つか分かりませんが、国民の熱気はありません。右翼側は今までの統一グループのチレ・バモスとそれに対抗するグループの共和党に分かれ混沌としています。共和党は先の大統領選挙で右翼代表になったカストが率いるグループです。左翼側と同じですね。左翼は新左翼・共産党と、従来の中道左翼に分裂していますから。
「経済」
1)チリ経済成長率の予想
IMFはチリの今年度の成長率をマイナス1.5%と予想していましたが、それを変更してマイナス1%に変更しました。少し良くなるわけですね。当たるかな?
2)銅価格と為替
何と銅の価格は1ポンド当たり4.11ドルとこの1か月で最高になりました。このため為替もペソ高になり1ドル795ペソでした。中国の3月の銅の輸入は前年同月の19%減少と厳しい状況です。この先どうなるのかな?
3)リチウム
それから,人気のリチウムですが、イメージと違って価格が急激に下がっています。昨年末は1トン8.8万ドルでしたが、先月は4万ドル。半分以下に落ちています。需要供給がどうなっているのかな? それはともかくSQMソキミチ社は20%のシェアーで昨年度世界1位の座を確保しました。
3)インフレ
チリの大きな問題がそれですが、電気代が10-16%近日中に値上がりします。冬に電気ストーブを使えなくなる人が出ますね。
「一般」
1)犯罪行為
先日警官が殺された事件に関連して2名が逮捕されました。しっかり調査してどんな組織が警官を狙っているのか明らかにしてほしいですね。そのほか、それからまた警官が負傷する事件が起きました。その殺人事件の葬儀の席でボリッチは警官の母親を固く抱きしめ、政府として警官を保護・援助すると確認しました。しかし、以前の社会騒乱の時、警察は暴力をふるって国民を傷つけるとボリッチはコメントしていました。つまり彼の仲間の新左翼はボリッチに俺たちを裏切るなと言うわけですね。それから盗難された車が見つかり、その車を捕獲しようとするパトカーとの競争になり、その盗難車が停車していた車など数台にぶつかるなどの大事故になりました。犯人はその時、麻薬を使っていたとか。
つまり犯罪を抑える政策が緊急に必要ですね。
検察庁の高官が、何かの理由で逮捕された外国人が(交通事故でも強盗事件でも)チリの身分証明書を持っていなければ、不法移民ということですが、裁判の結果を待たず、すぐに刑務所に入れるよう指示を出しました。これが実施されるとまた揉めますね。
南部のマプチェの問題ですが、カニェテで家屋の放火がありました。家屋が2軒燃やされ、マプチェのパンフレットが置かれていました。
チリからの海外送金は昨年はその前年の23%ダウンでした。しかし歴史上では2番目の数字。外国から来た移民が本国に収入の一部を送金するわけですね。麻薬の売り上げの利益も入っているのかな?上記の警官殺害事件の犯人がベネスエラ人と言われていますが、それに関連して新聞にベネスエラ人移民の特集記事が出ました。彼らは以前はチリ人に温かい目で見られ、歓迎されていたが、今はひっそり生きていくしかない状態で、恥ずかしい・悲しい気持ちが大きくなり苦しい毎日とか。大変ですね。
2)コロナ問題
毎週のように新規患者数と陽性率が減少しています。もうチリでは病気はコントロールされたのかな?
3月17日ー4月23日
「政治」
1)ボリッチ動向
「今までの政権と同じく、私も問題山積の中で、どう解決していくか日夜努力をしているところです」と言ったスピーチをテレビカメラの前でしました。しかし最悪だったのは、モネダ宮殿の2階の彼の事務所で働いているとき、ドアを閉めていなかったので、下からカメラマンが彼の写真を撮りました。もちろんその人は政府公認のカメラマンで写真を撮るのは許可されています。ところが誰かが彼に写真を撮っていると連絡すると部屋から出て1階に降り、そのカメラマンに悪口雑言を浴びせました。それがテレビ・新聞に報道されました。かなり苛立った毎日を送っているのでしょうね。しかし今週の彼の動向のトップはリチウム関連です。全テレビ番組で、リチウムにチリは国として参入するとしました。現行の契約は尊重するとしていますからアジェンデの時のように直ぐに国有化をするのではないようですが、銅の場合のコデルコ銅公社のような企業を作り、順次に参入していくようです。北部のアントファガスタを訪問し、「リチウムが世界で注目されるこの機会を利用し今までと違ったやり方でリチウム市場に参入したい」とコメントしました。もちろん資本家は彼の考えを厳しく批判しています。新聞の社説に政府方針は方向に疑問があると書かれました。
彼の中道左派への方向転換は極左(新左翼と共産党)から問題視されていますが、このリチウムに関しては極左方式を採用しました。(させられましたかな?)その事項をどうするか彼の頭の中で混乱しているときに写真を撮られたのでコントロールを失ったのでしょう。カデムの最新世論調査ですがボリッチを支持するは30%、反対は64%と変わりません。
大臣変更
大統領府の大臣だったウリアルテが病気で1か月以上、職に就けなかったので、彼女の辞任を受け新大臣エリサルデを任命しました。彼は社会党の主要メンバーで現在は上院議員で少し前に上院議長をしていました。両者とも社会党員です。中道左翼が政府中枢に入るわけです。ところでそのエリサルデ議員の後任を誰にするか揉めています。結局、ボダノビッチになりました。彼女は社会党の党首です。
2)国会
厚生年金の積み立て分から6回目の引き出しをすると言う提案がまた議論されます。大蔵大臣がそれはチリ経済に最悪の状況をもたらすから止めるように要請を出しています。
それを提案して実行しようとしているのは野党ではありません。与党の新左翼です。
3)選挙
新憲法委員会の委員を選ぶ選挙があと2週間と近いですが全く盛り上がりません。素人の私が言うのではなく識者のコメントでも同じことが言われています。世論調査では半数以上の国民が興味を示していません。あの社会騒乱のころ、ピノチェットの作った憲法をぶっ潰し自分たちの手で新憲法を作ると盛り上がったのが噓の様です。
「経済」
1)銅価格と為替
銅価格は1ポンド4ドルと先週より少し下がりました。1ドルは795ペソとそこそこ安定です。チリの銅の生産量は昨年は前年対比5.3%のマイナスでしたが、順調に元に戻っているとか。この先、銅の需要は大きくなるとみられているので銅の将来は明るいです。
2)リチウム
ボリッチが国営企業がリチウムの分野に入るとコメントすると、その分野で世界最大のSQM社の株価が15%も下がりました。国営企業には勝てないとするわけでしょうか。リチウム産業はこの先、情勢が落ち着くまで大きく動く(揺れる)でしょうね。ボリッチは現行契約は尊重すると言っていますから、それが終わった段階で、所有権は国に戻り、それを国と民間の会社が共同で運営することになるのでしょう。国にはまだリチウムの事業の経験はないですから。それで大蔵大臣はテレビ番組で民間が51%を占める可能性はあるのかと聞かれると、それはネゴをしなければなりませんと回答しました。極左の中では「自分たちに経験がなくても現行会社の幹部を引き抜けば問題ない。国が過半数の資本を出しても問題ない」としているかも。
「一般)
1)犯罪
学校の先生が逮捕されました。彼は聖フランシスコ教会の壁に警官を殺せとか落書きしていました。初めての逮捕ではなく、3年半前の社会騒乱の時、地下鉄の駅の改札口を壊すのがカメラに写っていて後で逮捕されました。もうどうしようもないですね。昔はボリッチの仲間でやってきたのでしょうが、頭の中を変えれないなら教師の職は止めるべきですね。
マイプでゴミ箱に頭が入っていました。誰かを殺して首を取り、ごみ箱に捨てたわけですね、多分、チリで初めての事件でしょう。犯人はすぐに捕まると思いますが。北部のカラマでデモが起きました。今週、犯罪行為が続き死亡2名負傷5名となりましたが、それに反応してボリッチでは何も出来ない。彼を辞めさせようとする動きになっています。その先頭を走るのは同市の市長ですが、彼は新左翼です。それが拡大して市民のデモだけでなく、トラックなどの運送関係、近くの銅鉱山チェキカマタ労働者も反応しているようです。
同じようなデモがサンティアゴでもあり、「犯罪を抑えるには警察の力が必要だが、政府はまだ1973年の軍事クーデターのころのように警察を嫌がっている」と市民のコメント。ボリッチはそれを知って新左翼・共産党と別れ、中道左派と手を組み、警官を守ろうとしているのでしょうね。
2)コロナ問題
もうチリでは終焉したようです。新規感染者は500人ほど、陽性率は3%ほどと昔の派手な時代とは全く異なっています。私もマスクを使うのをやめています。
3月24日ー4月30日
「政治」
1)ボリッチ動向
先週はリチウム国有化で世界中に話題を投げかけましたが、今週は静かに姿をひそめています。南部のプエルト・モンを訪問し、地方の自治権の拡大を図るとしました。さてリチウムのニュースは世界中に、政治・経済の両分野で広がりましたが、それが今週は姿を消しました。政府がチリのマスコミに少しボリュームを落としてくれと頼んだのでしょうか?
ボリッチの頭の痛い問題の一つは民間の健康保険イサプレが上手く機能していないことですが、イサプレを運営する会社の一部は倒産の可能性もあるとされます。そんなことが起きれば、その会社を使っている人は健康保険が使えなくなるのか、他の会社に移すのかなどはっきりさせる必要があります。イサプレから国が運営する健康保険会社フォナサに大量に移動してくればフォナサが能力を超えて機能しなくなる可能性もありそうです。
2)移民問題
ペルーとチリの問題になり、国連の人権委員会から両国の真摯な会話を願うと言うコメントが出ました。チリ最北端のペルーとの国境で、チリに不法に入国してくる移民をチリ警察が阻止し、ペルー側に送り返そうとしている実態に関し、ペルーのタクナ市長はチリ警察のやっていることは正常とは思えないとし、ボリッチ政権を批判しました。それに関してチリの外務省はペルー大使を呼び出しチリ政府を批判するのは受け入れがたいとクレームしました。ボリッチはそれに関し、全くコメントしていません。不法移民の一人が「私も私の子供もここで苦しんでいますが、チリ政府は私たちの人権も考えていただけませんか?」とコメントしました。もちろん、その人に「人権を大事にするなら不法に他国に入国しようとしてここにいるのは止めるべきですね」と言うべきでしょうね。そこに多くのベネスエラ人がいます。その国の大使館から係員が派遣され、その難民?と話し合ったとか。彼らは帰国したいと言っているようです。その近くの飛行場に飛行機を用意して彼らを本国に送り返す案がありますが、難民に費用を払う力はないしベネスエラ政府にもその費用を払う能力はないでしょう。今回のチリ政府の不正移民に対する姿勢は昨年と大きく違いますね。
3)新憲法委員選挙
新左翼の議員が次の選挙で新左翼・共産党の委員数が前回より減少すればボリッチ政権に悪影響するだろうとコメント。現状を見れば、市民が自分たちを嫌っているのが感じられるので、減少は避けられないと言うわけですね。50の議席を353人の候補者が争っています。識者の予想として与党側は38%(新左翼・共産党グループと中道左派)、野党側(中道右派と極右)は60%の得票が見込まれるとか。
前回の委員選挙で与党側は勝利を収めましたが、そこで出来上がった新憲法は昨年9月4日に国民の大多数に拒否されました。それを政府・与党側政党は分析が出来ず、同じことを繰り返そうとしていると書かれています。学習効果がないわけです。その予想は当たるでしょうね。つまりピノチェットの作った憲法を変えるんだと言うのではなく、その憲法のどこを変えたいのかを検討することが必要なのでしょう。今回の選挙の候補者が高等教育や医療費の無償化とか言うのは全く無意味ですね。それを実施できる財源がなければどんな政権でも憲法違反になりますから。
「経済」
1)銅価格と為替
銅の価格は1ポンド当たり3.99ドルと4ドルを割りました。銅の価格は当面安泰だとするプロの意見もありましたが、4ドルを割るのは残念です。それでも為替は1ドル795ペソと落ち着いています。
さてリチウムの価格が大きく下がり、昨年対比半額になったと少し前に書きましたが、今週は3分の1まで激減しています。チリの国有化宣言がどう影響したのでしょうか。隣国ボリビアとアルゼンチンのリチウム鉱山は好機が来たと喜んでいますね。新聞のリチウム特集で現在チリのリチウム鉱業に参加している若しくは参加希望の企業が紹介されました。その16か国の内訳はチリが4社、アメリカと中国がそれぞれ3社、そして豪州とカナダが2社などですが、日本の名前は出ていません。
2)失業率
失業率は1ー3月で8.8%と上がりました。前年同期の7.8%より1%アップ。昨年の元気が今年は減少しているわけですね。今年のGDPはマイナス成長と言われています。これに関して、大蔵大臣はチリの経済危機は最悪期を超え、徐々に良くなってきているとコメントしていますが、識者は全くそれとは違って状況は極限に近いとしています。失業率が上がり、市民の生活に影響を与えている例として、統計がとり始められてから初めて昨年の個人の貯蓄額が減少したとか。それで新左翼が各自の積み立てている厚生年金を引き下ろさせようとするわけですね。最低賃金を毎年のように上げようとする動きも経済の停滞に関連すると言われます。さぁ、どうなるでしょう。
「一般」
1)マプチェの攻撃
毎週のようにこの問題が出ますが、今週も家屋への放火、重機・トラックへの放火など問題継続です。マプチェの過激派グループCAMのリーダーが裁判になっていますが、他のグループが「一人のリーダーが裁判になったから私たちの抗議活動が消えることはない」としているとか。彼らにすれば、「チリが独立したとき、このアラウカニア州はチリの領土ではなかった。私たちマプチェのものだった。そこへ暴力的にチリ人が侵入してきて、自分たちのものと言い始めたのだ。私たちを犯罪者として裁判にかけるなら、まず自分たちの犯罪を見直すべきだ」でしょうね。
それとは別の問題ですが、先日、政府が確認した全国の問題のある地区の歩行者安全計画ですが、各市が警察のバックアップを受けて取り調べを始めた結果ですが13000人を取り調べたら、337人が犯罪に関連していることが分かり逮捕されました。同じように警察が独自で全国各地で取り調べをしたら、裁判所から逃げている犯罪者が619人いました。つまりこうした取り調べは有効ということが確認されたわけです。もっともそうした取り調べは共産党・新左翼は嫌いますが。
2)コロナ問題
もうチリではコロナ問題は終焉しているようです。先週と同じく、今週も新規感染者数は500人を割り、陽性率は2%とごく少数でした。 以 上