メキシコ国立自治大学教授が「憲法の裁判権、組織および権利保障を体系的に研究する」憲法訴訟法の学問について、欧州にその起源を探り、ラテンアメリカでどのように成長発展して現在に至ったかを論じた、2008年刊行書の日本語訳。
ラテンアメリカ諸国はその多くが19世紀前半には独立して立憲主義の道を歩み始めたが、以後自由主義と権威主義、連邦制と中央集権、共産主義と軍事政権などの原理が試行され、20世紀末近くに軍政が倒れ民主化される過程で広く行われた憲法改定により「社会的法治国家」理念が採用されるにつれ、これを担保するための機関として憲法裁判所が設置・強化され、憲法訴訟学制度の展開があったのである。
それ以前にも立憲主義の定着のため、ラテンアメリカ型の憲法制度を造る動きがあり、例えば1841年のメキシコでのamparo(
救済)訴訟例があり、本書ではそれらからラテンアメリカでの憲法訴訟学の起源と成長発展を簡潔にまとめている。
(北原 仁訳成文堂2010年6月205頁3300円+税)