『現代メキシコの国家と政治—グローバル化と市民社会の交差から』 松下 洌 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『現代メキシコの国家と政治—グローバル化と市民社会の交差から』 松下 洌


『現代メキシコの国家と政治—グローバル化と市民社会の交差から』 松下 洌

南米ではポスト新自由主義のガバナンスや新たなグローバル化時代への対応を模索する枠組みと方向性への歩みがみられるが、メキシコは新自由主義型モデルの呪縛から脱却出来ておらず、「市民社会」が成長し始めているがまだ権威主義的「政治空間」に押さえ込まれていると著者は見る。長くメキシコをはじめ開発途上国の政治を研究してきた著者( 立命館大学教授)が、現代メキシコの政治システムの形成、発展、変容を、「国家−社会」「国家−労働」「国家−社会」関係と官僚制の展開と変容から考察し、グローバル化・脱権威主義・市民社会を、グローバリゼーションと権力構造の再編、社会変容にともないPRI( 制度的革命党)が独裁を維持してきたコーポラティズム型動員選挙の衰退し、農村部において「国家−社会」関係が崩壊してきたこと、民主的移行期のおける一つの枠組みとしてサリーナス政権期の試行、そして「政治空間としての分権化」により脱権威主義に向かいつつあり、分権化と市民社会が相互発展に向かっていることを、克明に考察した事例研究である。

(御茶の水書房 2010年3月 469頁 8400円+税)

『ラテンアメリカ時報』2010/11年冬号(No.1393)より