『ラテンに学ぶ幸せな生き方』 八木 啓代 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『ラテンに学ぶ幸せな生き方』 八木 啓代


ラテン歌手にしてチリの国民的な歌手が軍事クーデタの混乱の中で惨殺された真相を追った『ビクトル・ハラはなぜ死んだか』( 晶文社)などの著作もあって、日本とメキシコを往復する生活を送っている著者が、ラテンの人と日本人の生活、価値観、生き方などの違いを様々な切り口から説いたエッセィ集。

日本の自殺者数はメキシコの麻薬戦争や中米内戦による死者を上回り、はるかに低いラテンアメリカの自殺率にみられるように豊かさと幸福感とは別である。家庭内の引きこもりなどは考えらない強い家族の絆、日本人が誤解しがちな日常的なハグ(抱擁)のある文化、ピローポ(通りすがりの女性を褒める投げ言葉)の意味、計画性には欠けるが最後には辻褄を合わせる土壇場の集中力、家族はもとより友人間の「絆」が社会の安全網になっていること、イソップの寓話「蟻とキリギリス」のラテンならではのポジティブな解釈などなど、ラテンアメリカとの付き合いが長く、ラテン人の気質に通暁している著者ならではの文化比較の事例が小さな新書版に詰まっていて、国際化の時代とかけ声ばかりで異文化を知ろうとしない日本人には有用なお薦め本。

(講談社 (α新書) 2010年7月 182頁 838円+税)

『ラテンアメリカ時報』2010/11年冬号(No.1393)より