英国の軍人で王立地理学協会の支援を受けて1906年から14年にかけてボリビア東部とブラジル国境のアマゾン河源流地帯を探検し、第一次世界大戦で欧州最前線に従軍後、1925年にブラジルのマットグロッソ州でのアマゾン河支流上流地帯の調査に息子とともに赴いたまま行方不明になった、20世紀前半で最も名声を博した探検家のひとり、パーシー・ハリス・フォーセット大佐(自称であって実際は砲兵中佐)の活動とその人となり、そしてついに最も得意とした熱帯雨林の歩行調査の果てに姿を消した生涯を描いている。
フォーセットの生い立ち、軍人として、家庭人としての生活、アマゾン探検に対する並はずれた行動力とその成果を軸に、同じ時期に行われた幾多のアマゾン、アンデス探検の辛苦と犠牲者輩出の軌跡とそれらとの競争を詳述しつつ、行方不明後にこれまた数多く赴いたフォーセット捜索隊の失敗や残された消息に関する情報を生涯追い求めた夫人や家族の尽力、虚偽の遺品・遺骨などの証拠発見例、そして著者自身も試みた地理学協会などの記録文書からのフォーセット隊の軌跡(他のライバルに先行されることを恐れ、ルートは隠され、親族等との手紙も秘された)の推測と現地調査を交錯させている。
「ロスト・シティZ」とは、フォーセットが堅く信じ、探検での発見の目的としたアマゾン上流にあったとされる高度な文明をもった古代集落を意味する。
(日本放送出版協会 2010年6月 338頁 2200円+税)
『ラテンアメリカ時報』2010/11年冬号(No.1393)より