『アマゾンからの贈り物−矢毒クラーレの旅』 天木 嘉清 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『アマゾンからの贈り物−矢毒クラーレの旅』 天木 嘉清


アマゾン河流域に踏み込んだ西欧人が先住民の使っている矢毒に異常な興味を持った。狙った小動物を瞬時に動けなくする猛毒であるが、その肉を食べるに問題なく、しかも獲物の心臓は暫く活動しているので腐敗を遅らせる効果まであるその毒の原料は何か、どうやって作るのか、体内でどのように効き目が生じるのかなどについては、多くの探険家や科学者が解明を競った。

これがやがて筋肉弛緩と神経の関係を解き明かすことにつながり、手術の際の麻酔に利用出来ることになって、近代医学の発展に大きな役割を果たすまでに至ったのである。

本書は麻酔の専門医が、一般読者に分かりやすく解説したもので、南米熱帯雨林の先住民が作り出し矢毒として使ってきたクラーレの使われ方、作り方、欧米で生理学者がその毒の効能の仕組みについて探求し、筋肉と神経との関係が解明される過程を描き、これが外科手術の麻酔として用いることが出来るようになった医師と患者の挑戦と、その後のクラーレに代わる新薬や筋弛緩拮抗薬の発見に努める研究者の姿を紹介している。

2010年10月には名古屋で第10回生物多様性条約締結国会議(COP10)が開催されたが、このクラーレこそ、世界的に利用されるまで発展したマラリアの特効薬キニーネと同様に、先住民の自然利用の知恵の中からもたらされた恵みの好例であり、同時に多くの未知なるものへの好奇心とその解明に努める人々の飽くなき挑戦のドラマとしても一読に値する。

(真興交易医書出版部 2010年4月 207頁 2000円+税)

『ラテンアメリカ時報』2010/11年冬号(No.1393)より