『2020年のブラジル経済』 鈴木 孝憲 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『2020年のブラジル経済』 鈴木 孝憲


40年余の間ブラジルとの金融ビジネスに関わり、現在もサンパウロに在住してビジネス・コンサルタントとして日本企業の進出に助言を行っている著者が、1994年のレアル・プラン以来長年続いてきたインフレを克服し、その経済政策を継承して2期8年の在職期間中高支持率を維持したルーラ政権が実施した所得格差是正策によって貧困層が消費市場に参入してきたこともあって立ち上がってきた大きな国内市場、広大な大地での近代農業と畜産の拡大によって大きな輸出余力をもつ食料やエタノール等のアグロビジネス、深海油田の開発で自給を達成し輸出国に転換しようとしている石油、鉄鉱石からウランにいたる豊富な鉱物資源、ガソリンとエタノールを自在に使えるフレックス車をはじめ工業力をも持つ巨大なポテンシャリティ、それらに着目してブラジルに重点シフトする欧米中韓企業などを生き生きと紹介する。

経済も社会も安定し、成長軌道に乗ったブラジルだが、財政や税負担、まだまだ不足しているインフラやレアル高、労働法制や治安などの課題も指摘し、ルーラの後継者であるジルマ・ロウセフ女性大統領の登場に至る経緯とポスト・ルーラの政治情勢、そして2014年のサッカー・ワールドカップ、2016年のリオデジャネイロ・オリンピックを経ての2020年のブラジル経済の予測と課題にも言及し、欧米等に比べて立ち後れた日本とブラジルとの関係についての提案を述べている。現代ブラジル経済の実情と展望を知る上できわめて有用な解説書となっている。

(日本経済新聞出版社 2010年11月 236頁 2100円+税)

『ラテンアメリカ時報』2010/11年冬号(No.1393)より