日本から遠いが移民やODAなど意外と深い繋がりがある割には文献の少ないパラグアイの久々の解説書。
?アマゾンからやってきたグアラニー族とスペイン征服者のアスンシオン創設から始まる植民地社会の発展、?植民地下で試みられたキリスト教ユートピア社会、?独立、独裁者と悲惨な結果を招いたブラジル、アルゼンチン、ウルグアイを敵にまわしたパラグアイ戦争と戦後の国民形成、?石油資源をめぐるボリビアとのチャコ戦争、コロラドとリベラル二大政党、1954年から89年まで続いたストロエスネル将軍の独裁、?先住民グアラニー族、ブラジルからの移住者、非暴力のキリスト教徒集団メノナイト、36年に始まり戦後もいち早く再開された日系移民など多民族国家としての諸相、?伝統家屋、近代都市の発展、世界に飛躍するサッカー、女性の地位の変化、スペイン語とグアラニー語のバイリンガル教育などの暮らしと社会、?伝統音楽、料理、刺繍などの伝統工芸、文学、グアラニーの神話など、先住民文化とスペイン文化が織りなす世界、?牧歌的な観光の魅力、歴史的な政権交代となった2008 年の大統領選挙、継続的食料供給力、そして日本が最大の援助国であるODAと、パラグアイの全貌を日本ではそう多くない研究者のみならず、パラグアイと深い関わりをもち活躍している人達を動員してまとめている。
(明石書店 2011年1月 273頁 2000円+税)
『ラテンアメリカ時報』2011年春号(No.1394)より