『キューバの歴史−キューバ中学校歴史教科書 先史時代から現代まで』 キューバ教育省 後藤政子訳 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『キューバの歴史−キューバ中学校歴史教科書 先史時代から現代まで』 キューバ教育省 後藤政子訳


すでにラテンアメリカではブラジル、コスタリカ、メキシコが出ている世界の教科書シリーズの第28巻で、日本では中学3年生にあたる9年生の歴史教科書の全訳。2年生で学んだ世界史の知識を踏まえて義務教育の最終年に自国史を学び、市民としての基礎教育を終わることになっており、国語( スペイン語) とともに重点科目になっている。

スペイン人到来前の先住民原始共同体から始まり、スペインの植民地化、民族解放運動と今日まで国の理念の支柱となっているホセ・マルティの思想、独立戦争と米国の占領、独立はしたもののその新植民地共和国であった20世紀前半、バチスタ独裁政権を倒した1959年1月のキューバ革命の勝利、革命政権下で社会主義共和国となり、内外の反革命との闘争、革命初期の65年までの幾多の経済・社会的困難と発展実現に向けた65 年以降の努力に至るキューバ通史となっている。

国定教科書だが社会主義を賛美しマスクス・レーニン主義を説き、フィデル・カストロの絶対的なリーダーシップを神格化するというような教条的記述はなく、革命政権は長い間の脱植民地運動の継承としている。巻末の訳者の解説は的確であり、革命関連以外の歴史史料の乏しいキューバの歴史を知るうえでも、まとまった参考文献として読める。

(明石書店 2011年2月 528頁 4800円+税)

『ラテンアメリカ時報』2011年春号(No.1394)より