『ブラジルにおける経済自由化の実証研究』 西島 章次・浜口 伸明 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『ブラジルにおける経済自由化の実証研究』 西島 章次・浜口 伸明


1980年代のブラジルといえばハイパーインフレーションと対外債務累積問題をかかえる国、政府が経済や産業に介入し、自国産業の保護を行っている国という記憶が強いが、1990年代の経済改革によって、市場メカニズム重視の経済政策に劇的に転換し、貿易、資本の自由化を行い、公営企業の民営化、規制緩和、金融改革を実行し、為替の変動相場制に移行したことが、資源輸出の拡大と相俟って近年の好調な経済を実現したことの基盤になっている。

本書はブラジルの経済改革と貿易自由化の効果を経済成長との関係、生産性と産業賃金への影響、国内人口移動と成長地域、事例としての砂糖黍産業における機械化と雇用、そしてインフレ収束にともない爆発的に拡大した国内市場の姿を自動車需要から消費者金融の役割を分析した、計7本の研究論文から構成されている。

資源輸出の拡大と旺盛な国内市場の拡大を背景に、世界的に注目を浴びているブラジル経済のパフォーマンスが、今後も継続出来るのか? 社会的公正を担保した経済成長を実現出来るのか? その制約はどこにあるのか? という問題意識の基としての優れた実証研究の試みであるが、非売品であり大学等の図書館でしか見られないのは残念であるが、幸い神戸大学経済経営研究所のサイトから、全編のpdfファイルが閲覧出来るようになった。

http://www.rieb.kobe-u.ac.jp/academic/ra/researchseries/research_ser-j.html

(神戸大学経済経営研究所2011年3月159頁非売品)