『身近なニョモのきざし −アルゼンチンのこびとたち』 本間 善久 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『身近なニョモのきざし −アルゼンチンのこびとたち』 本間 善久


世界各地の伝承の中にいわゆる森のこびとの物語が数多くある。日本ではコロポックル、北欧ではノームといった主人公が、昔から現在に至るまで人々の間で語り継がれている。アルゼンチンにもニョモと呼ばれるこびとの人形などの土産物はどこの街でも見かけられ、広大な大自然のあちこちでここがニョモの故郷と思わせる雰囲気を感じることが出来る。

本書は、単身赴任した農学者がパンパのど真ん中の街からアルゼンチン各地への旅行で訪ねた先々で、だんだんニョモの存在を感じ、沸き立ってきたもののイメージを膨らませて綴った、異色の紀行エッセィであり、著者がパンパの中で感じたファンタジーの世界を楽しめる小品である。ちなみに著者は、植物病理学を専門とする農学者で、国内外での長い研究生活の間に、アルゼンチンに約5年滞在した。「アルゼンチンにおけるダイズ急性枯死症の病原」(2002年)ほか多数の専門分野での研究成果があり、またわが国とアルゼンチンを比べながら自然観察の楽しみを紹介した『右巻きの朝顔−地球の裏側ネーチャーウオッチング』(新風舎2007年)などの著書もある。

〔桜井 敏浩〕

(柏艪舎発行・星雲社発売 2011年5月 189頁 1,300円+税)