2010年8月5日にチリ北部のサンホセ銅鉱山で起きた落盤事故で、地下700mに33人の鉱山労働者が閉じ込められ、10月13日に全員無事救出されるまで、世界は固唾を呑んで状況の推移を見守った。17日目の8月22日に捜索のために掘削していたドリルが、33人が逃げ込んでいた地下の避難所に届き、生存している旨のメモが引き上げられてから、チリの政府と協力鉱山会社の技術、国民の応援、さらには全世界的な支援によって、救出作戦の立案と実行が見守られた。本書は独占的に常時現場取材を許されたジャーナリストが、救出作業に関わった約120人の関係者へのインタビューを基に、69日間の地下と地上双方の人々の団結と共闘を克明に記録したものである。
この救出活動には2000万ドル前後の費用がかかったと推計されるが、多くの内外の企業、国は提供した資材や要したサービスの請求書を送ってきていない(日本のNTTグループとチリとの通信を駆使した監視システムの合弁企業が、光ファイバーで地上と地下の映像を含む通信手段を設置し、現場に仮設伝送路を設けた)。国を挙げて、世界も関心をもって対応したこの救出劇は、人間的な思いやりの精神と友愛、利他主義にも続く「地球村」の概念を示した世界的出来事であったと結んでいる。
(共同通信社 2011年3月 350頁 2400円+税)
『ラテンアメリカ時報』2011年秋号(No.1396)より