明石書店のシリーズのうち、ラテンアメリカについては14カ国目の刊行。内戦、暴力、麻薬戦争による治安の悪い国という、これまでの偏ったイメージをもたれている国に付いて、出来るだけ全体像を紹介しようという意欲と執筆者12人と2人のコロンビア女性(ジャーナリストと日本研究者)のコロンビアへの愛着が感じられる。
自然と資源(エメラルド、コーヒーから近年輸出産業に育った花卉栽培など)、先スペイン期から1950年代の軍事政権に至る歴史、二大政党による交替制政権時代と多党制以降、豪腕により治安を大幅に改善したウリベ大統領の2期8年と親米路線と近隣左派国との狭間での外交、ウリベ政権下で復調著しい経済と企業家達、近年の反政府ゲリラ、コカイン・カルテル、右翼軍事組織(パラミリターレス)と軍警が四つどもえに戦い、それらによって多くの殺人と国内難民を生んだ暴力についてまでを33の章で概説している。
後半は、民族、日本人移住者、都市住民組織、宗教、教育などの人々と社会、食文化や美人が多いといわれる理由、サッカーなど、人々の生活、マスメディア、多彩かつレベルの高い文学と芸術、各地の観光資源の紹介に至るまでを紹介している。さらに詳しく知りたいという読者のために文献ガイドも付いており、コロンビアを概観し知識を得るための格好の一冊になっている。
(明石書店 2011年6月 388頁 2000円+税)
『ラテンアメリカ時報』2011年秋号(No.1396)より