アルゼンチンの首都ブエノスアイレス近郊の、日本人コロニアがあって日系花卉栽培者が多い町エスコバルで生まれ育った佐和子(カリーナ)とミカエラの姉妹の、幼い頃から40歳代に入った今に至るまでを、日本とブエノスアイレスの間の行き来と生活を描いた、ひと味違った恋愛小説。
姉妹は、少女時代からお互い “共有する”ことをルールにして、多くの男友達と付き合ってきたが、二人が日本留学をした時に知り合った達哉とだけは、結局佐和子が結婚するに及び、カリーナは妊娠の身で突然アルゼンチンに帰国してしまう。レストランなどをいくつか経営し、身体を鍛え、相変わらず笑顔が魅力的で浮気も多い達哉でも、佐和子は円満な夫婦関係を維持しているかに見えたが、ある時スペイン語教師をしていた時の教え子であった商社マンの田淵が欧州勤務から帰ってきて会った時から、平穏な生活は一変する。田淵は妻・子供と別れ会社を辞め、ブエノスアイレスでのワイン輸出会社への転職を決め、佐和子は達哉に判を押した離婚届を置いて、彼とともに帰国する。
初めは軽い出来心と高を括っていた達哉も、日が経つにしたがい佐和子への思いから、年末年始の休みにブエノスアイレスへ飛び、佐和子に復縁を迫る。一方、ミカエラの大学生になった娘アジェレンは、事もあろうにミカエラの勤務先の上司で38歳も年上のファクンドと不倫関係を深めている。佐和子と田淵、達哉と依然好意を寄せているミカエラとの四角関係、ミカエラとも親しい妻に関係が発覚した二人の絡み合った人間模様を、ブエノスアイレス、エスコバルと東京での生活、佐和子と田淵が休暇に訪れたウルグアイの漁村への達哉の往訪などを交叉させながら、それそれの心中の揺れ動く綾を描いている。
(小学館2011年10月349頁1600円+税)