連載エッセイ251:ピーター藤尾「チリの風」その15 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ251:ピーター藤尾「チリの風」その15


連載エッセイ 248

「チリの風」その15

執筆者:ピーター藤尾(在チリ・サンティアゴ)

「2023年5月29日ー6月4日」

「政治」

1)ボリッチ動向

ボリッチはブラジル訪問しました。その理由は南米12か国会議に出席するためでした。ブラジルとアルゼンチン大統領はラテンアメリカに共通の貨幣を作ろうと意気込んでいますが、そう言ったシステムが出来ればラ米では3大国つまりブラジル・アルゼンチンそしてメキシコに有利な
状況が見込まれます。すると小国のウルグアイやチリには逆風になるとか。ボリッチは演説の中でベネスエラを援護する方向で発言。それはアメリカやECがその国を制裁しようとする姿勢を咎め、国でなく国民を考えてほしいとしました。国への制裁で傷つくのは国より国民だというわけです。
中道左派ではなく共産党・新左翼の立場での発言でした。ところがその後、同国には人権・人道問題があるとコメントしました。これは与党の中道左派の考えです。チリ共産党員の首都圏の区長は他国のことに口を出すな,チリにもその問題はあるだろうと厳しいクレームをしました。ボリッチと共産党は仲間なのか敵なのか良く分かりません。ボリッチの2重の考え方がこうした問題を呼ぶわけですね。2枚舌ではなく、違う考えが彼の頭の中にあるのでしょうか。

さてチリに戻ってきて、木曜日に今年の年次教書の発表を国会議事堂で実施しました。午前中に始まったのですが、何と3時間半も演説が続きました。過去最高の長さとか。私は気合が入っていないので1時間ちょっとでテレビを見るのを止めました。そしてその中継を見られなかった人のために夜9時のニュースの時間に全テレビ局で教書の縮小版を発表。半時間でした。他の人には信じられないほどの長時間労働ですが、彼にとってマイクの前で話をするのは楽な仕事なのでしょうね。さすがに翌日はモネダ宮殿には行かず、自宅でオンラインで働いたとか。

さて新聞に教書のエラーが書かれました。例えば、彼は2012年以来新しい刑務所は建設されていないとコメント。(いや。作られている〉。精神病はチリ成人の4人に一人がかかっているが、そのうちわずか20%だけが治療を受けている。(病院関係者がその数字には根拠がないと否定)。それから同じようですが、手術の順番待ちがこの一年間で短くなった(医療関係者がそんな事実はないとコメント)。

しかしチリには報道の自由がありますね。年次教書のエラーをすぐに発表するなんて。

さてボリッチは政府は国民の事を考え必要な提案をし、国会で成立して実施になる。その例として最低賃金のアップ、週40時間労働・・・とかコメントすると議場は大喜びでした。

北部の不法移民問題で、軍隊の助けを得たとし、出席していた陸軍長官に舞台から感謝の言葉を送りました。

リチウムに関しては、近い将来にチリは世界1のリチウム生産国になるとしました。また鉱山のローヤリティ税を増やし国民のために使用するとしました。

今年50周年を迎える軍事革命について、民主主義を守るためチリ政府としてピノチェットの革命を認めることはないと言うと出席者は総立ちで歓声をあげました。

もちろん右翼議員は椅子に座ってブスッとしていましたが。

この教書で一番大事と思われるのは新税制ですが、これが通らないとほとんどの計画が実施できません。右翼はボリッチは増税を訴えるが、私たちはそれに反対するとコメント。議会でもめるでしょうね。

2)新憲法委員会

先の選挙で一番票を集めたのはサンティアゴの共和党のルイス・シルバですが、70万票を超えました。彼は過去50年のチリの歴史を見て、最も尊敬するのはピノチェットだとしました。個人的にも
大統領としても彼のやったことはチリにとって、チリ人にとって素晴らしい業績になっているとしました。共産党はすぐに彼に噛みつきましたが。共和党はこの新憲法委員会で国民に喜ばれる立派なものが出来なければ、党としては現行憲法を継続することにしたいと発表。そうでしょうね。

「経済」

1)銅価格と為替

銅の価格は少し上がって3.79ドル。そのため為替もチリペソが強くなって1ドル800ペソでした。

2)4月のGDP 

予想されていた通りかなり沈んでいます。予想ではマイナス0.5%からマイナス1.5%になるだろうでしたが、中銀発表でマイナス1.1%でした。鉱業
より商業が落ち込み、衣服・食料・車などでなんとマイナス7.7%でした。今年の通年でマイナスにならないためにはかなり風を入れ替える必要がありますね。

3)マンションの価格

ラ米で価格の高い都市は1位がモンテビデオ、2位がサンティアゴ、3位がメキシコ市、そして4位はブエノスアイレスでした。チリもそこまで上がったわけですね。10年前とは大きな違いです。

4)女性の進出

ソフォファ(経団連)の会長に女性のナバロが選ばれました。歴史上初めての女性議長です。チリでは男女の差がずいぶん少なくなりましたね。

「一般」

1)大気汚染

月曜日に首都圏で準非常事態宣言が出され、車の通行禁止拡大や薪などのストーブ使用禁止令が出ました。確かに丘の上から街を見るとスモッグが覆っています。バルパライソ州のベンタナ地区にあるコデルコの精錬所は汚染問題があります。コデルコは、約60年の歴史を閉じて、その工場を閉めると発表しました。その地区には他に幾つかの工場があります。それらを全部、閉めるのかと聞かれた自然保護省大臣は検討中ですと回答しました。

2)発砲事件

とうとうチリもアメリカみたいになりました。首都圏の学校で14歳の生徒が教室で発砲しました。死傷者は出ませんでしたが、警察に逮捕されました。彼の家を捜索すると武器のほかに麻薬が見つかりました。教書でボリッチは犯罪抑制は最も重要な仕事になると言っていますが、こうして犯罪事件は増加しています。麻薬組織の動きは目を見張るほどとか。それから今週は南部のマプチェの事件が17件も起きました。その一つですが、学校に放火があり、建物が燃え上がりました。それに関し内務大臣が新しい手を打つとしました。現在、特別区として軍隊の駐在を認めていますが、それだけでは問題解決にはなっていません。詳しい数字はしりませんが、同地区に駐在する兵隊の数はチリ全土の5%にもならないでしょうから、現行の2倍にすればもっと監視ができるかもしれません。それからいつも言うようにその暴力組織の収入減になっている麻薬関連の捜査をもっとやれば彼らの暴行を抑えることになるのでは?             以    上

「6月5日ー6月11日」

「政治」

1)ボリッチ動向

年次教書が終わってからテレビの番組に出演しました。そこで種々の質問を受けましたが、そのうちの二つで回答できず混乱しました。一つ目は社会騒乱の時、ボリッチは議員だったのですが、警察は市民を傷つけるのを仕事にしているのかと批判していたのに、今は犯罪を抑えるのは政府として最重要事項であり警察の力を発揮させたいというのは矛盾していないか?もう一つは大統領恩赦で、犯罪は抑えると言いながら強盗犯人を恩赦しているのは矛盾していないか?でした。

もちろん、最初の項はやっている仕事が違うわけで、野党議員でピニェラ政権を潰したい議員の時はデモ隊が盛り上がるのが目的だったわけです。デモ隊が犯罪を犯しても、それ以上に重要なのはデモを盛り上げることでした。恩赦の件は、対象者は法務大臣の提案を受け、それを認証したとしてきましたが、(つまり法務大臣の責任)彼の秘書がボリッチも恩赦対象者を詳しく調べ内容を分かってサインしたとコメントしたことから、他人の責任ではなく彼が凶悪犯人を恩赦の対象にしていたわけです。そのため、ちゃんと回答できず、他の問題に口をはさんだりして惨めでした。

しかし先週の長々と続いた教書は一般市民の共感を得て、市民調査で彼を支持するとしたのは今までの30%からかなり上がり41%になりました。先の教書で一番重要な項目と思われる新税に関し、ボリッチはモネダ宮殿に財界首脳を招待して面談しました。チリをよくするためには新税制が必要なので、どうすればあなたの支援を得られるかと聞いたのでしょうね。野党からそんなコソコソする動きでなく国会で堂々と論議すべしという声が出ています。新聞の論調に増税案より経済成長率を上げる案を検討する方が大事なのではとされました。

今年の9月に軍事革命50周年記念日が来ますが、ボリッチと共産党の間にそれに関する見解で相違点が見られるとか。一方的にピノチェットが悪いとする見方と、民主主義は軍事政権下だけではなくアジェンデ時代にもなかったとする考えもあるわけです。もっとも識者によるとボリッチやそのグループはアジェンデの時代のUP(人民連合)の考え方(動き)を正しく把握していないとしています。なんでもよい点と悪い点があるわけですね。

厚生年金6回目の引き出し

政府がそれを止めようと言っているのに6回目の引き出し案件が国会で討議されました。提案したのは与党側です。結局、下院で拒否され次の1年間、同じ問題は議題にしないとなりました。この法案に賛成したのは48名、反対したのは63名でした。

今週のボリッチは新税制法案、その6回目の引き出し案、風邪などの病院問題、イサプレの問題が頭痛の種だったのでしょうね。来週はもう一つ問題が増えます。教員組合が首都圏でストに入ると宣言しているからです。教員に政府が約束した報酬・金額の未払額の早期支払いを組合は訴えていました。ピニェラ政権の時は新左翼・共産党は彼らと一体になって行動していたのですが、それが政権が変わっても全く変化がないことから教員組合はがっかりし、政府への抗議行動をとることにしたわけです。ボリッチも議員の時代は、いかにも正義の味方の行動・発言をしてきましたが、自分が責任を取る立場になると自分が批判していた「敵」と同じことをしているのでしょうね。

厚生大臣・教育大臣の二人を更迭せよとする声が出ているとか。チリに報道の自由は無いとする国際機関の見解がありますが、かなり自由はあると見えますが、どうでしょう。

2)イサプレ民間健康保険

大問題になっています。最高裁判所がイサプレに過去に過剰に徴収した金額を各自に払い戻すように判決を出したわけですが、その額が過大だったためイサプレ企業の生死にかかわることなりました。それを何と第3法廷のビバンコ裁判官が、週の始めにイサプレは全員に支払うのではなく、支払い要求の訴えを出した人だけに払えばよいとするコメントをしました。少額の支払いを受ける人は、大多数でしょうが、そんな手続きをすることはないでしょうから、イサプレの支払う額は激減するでしょう。まさかビバンコ裁判官がイサプレから金をもらって方針を変えたということはないでしょうが。

その辺を突かれた最高裁判所長官はこれは最高裁判所が行っているのではなく、それを担当する第3法廷の問題だとしました。さぁこの先どうなるでしょう。この件であちこちから吊るし上げになっているビバンコは最高裁判所の顔としてマスコミ担当の仕事もしていましたが、それを今週辞任しました???そして何と第3法廷は金曜日にビバンコ案を消し、当初の通りにイサプレは全員に支払えとしました。最高裁判所長官、政府高官などから圧力がかかったの?いやはや。まるでテレビのドラマ番組みたいでした。

3)新憲法委員会

この水曜日にボリッチも参加して正式開会式が行われ、正副議長が選ばれました。正議長ヘビアは最右翼の共和党から出た女性です。確かにチリは男女の差が無くなっていますね。12月に新憲法案を仕上げ、国民に提案します。国民の望む憲法が用意されるかな?与野党の同意があり、4つの委員会を作って月曜日から正式に起動する由。ところで左翼の国会議員がこの新憲法委員会は右翼側の勢力が強く、その方向で成立するだろう。従って私たちとすればその新憲法案を否定することになるはずだ。まったく逆に新憲法案が連続して否決されれば民主主義の危機になるはずだという意見も出ています。新憲法案が出される前に結論の心配がされています。

「経済」

1)経済成長率

OECDの発表では今年のチリの予想成長率はマイナス0.1%です。それをチリ政府は何とかプラス成長にしたいと頑張っています。

2)消費者物価IPC

5月のそれは0.1%と大きく下がっています。一時期、1%に近づいていましたからね。過去12か月で8.7%でした。

3)銅価格と為替

銅価格は先週とほとんど同じ3.80ドル。為替はチリペソが堅調で785ペソでした。

「一般」

1)病床

コロナの問題はほとんど消えました。新規陽性者は毎日50名以下で、陽性率は0.5%ほどです。ところが新しい風が来ました。インフルエンザを含む肺関係の病気で、特に年少児の問題がひどく多くの病院で90数パーセントの病床が使用されています。今週生まれたばかりの赤ちゃんが病気で緊急病床が必要になりましたが、何と病床のあるペルーの国境に近いアリカに行く必要があると言われたそうで、それも出来ずに赤ちゃんは死亡。その後に同じようなケースが出て死亡者が二人になりました。大混乱ですね。コロナ問題の時、医師組合幹部が厚生大臣を批判しています。あの頃も病床が不足して最初は大混乱でしたね。ピニェラは私の政権での問題解決の手腕をボリッチにお伝えしたいとしました。ボリッチは返事しません。肺炎問題のピークは2,3週間後と予想されていますから、この先しばらくの間、この問題は大騒ぎになりそうです。現在の厚生大臣はその問題をうまく抑えられないから誰かほかの人に替えた方がよいとのコメントが出ています。

2)犯罪

多くの問題があり解決策が良く分からないのは最近の傾向ですが、今週新しい犯罪が起きました。それは高圧鉄塔の破壊です。鉄塔に爆弾を仕掛け二つに折るのですが、それがバルパライソ州(第5州)と南のビオビオ州(8州)で起きました。右翼グループか左翼グループの犯罪かまだ分かっていませんが、その辺のひったくり犯とは全く違った犯罪グループですね。彼らが捕まらない限りこの犯罪は継続するでしょう。 以  上

「6月12日ー6月18日」

「政治」

1)ボリッチ動向

欧州連合EU委員長のフォン・デル・レイエンがチリを訪問しモネダ宮殿でボリッチと面談しました。彼女はチリに来る前にアルゼンチンを訪問してエネルギー関連で合意事項に達したとか。そしてチリでもグリーン水素イニシアティブの新規プロジェクトで合意が出来たらしい。そのほかリチウム開発でも合意に達したとか。リチウムが人気のある鉱物なのは当然ですが、ボリッチの国有化宣言の後、その政策がどのように実現するかを外国資本は見守る動きとか。アジェンデの時の様なら、チリではなく他の国に投資するのでしょう。ボリッチはEUとは経済関係だけでなく文化などの分野でも連立していきたいとしました。

その後、バルパライソ州の政府の別荘でテロリスト対策関連の臨時会議が行われ懸案事項に関して討論されました。その中でボリッチがしゃべったことがどこかに流されたとか。どこにでも味方か敵かわからない人間がいるわけです。集まったのは議員や政府関係者とかで約20名とか。ボリッチは犯人を捜せとその20人を全員調べさせようとしたらしいが、野党RN党の議員が自分がやったとしました。しかし犯罪行為とは思わないとしました。

その他ボリッチはアラウカニア州に飛んで、テムコとピツルフケン間の鉄道の路線開所に参加。集まった人と握手や抱擁をしてお祝いしました。先日、新聞の風刺でボリッチは次の右翼政権のために道路の整備をしているとされましたが、右翼も左翼も内部の問題が軽減しません。例えば、ボリッチは新左翼ですが、そこには3政党があります。それがバラバラ。そして他の左翼中道とコンタクトはほとんどなし。その中道左翼の中心のキリスト教民主党DC, そして社会党もPPD党も昔の勢いはなくなりました。逆に右翼の方も中心の国民改革党RNが今週の盗聴事件や元区長の事件で評判最悪になりました。それよりもっと右のUDI党は、最近共和党に自分たちの基盤を奪われ、チリ政党の最右翼ではなくなりました。つまり各党がバラバラでピノチェット崇拝型の共和党だけニコニコしています???

外交

チリはラテンアメリカで唯一のアメリカ簡易入国ビザを使える国ですが、今週、同国の共和党がバイデン大統領にそれを止めるよう要求しました。アメリカ各地で、主にカリフォルニアでチリ人の犯罪グループが活発に行動しています。それらの犯人グループはその簡易ビザでアメリカ入国しています。もちろんアメリカだけでなく、欧州でもチリ人犯罪グループは、例えばスペインで行動しています。チリで外人グループの犯罪、特にベネスエラが注目されますが、外国ではチリ人が犯罪人として目立っているわけです。悲しい現実。

新税制

それから新税制問題がすっきり進みませんが、大蔵大臣は国の経済成長率を上げれば問題解決になるという意見があるが、それだけでは政府の目指す方針の実現には到達できないとコメントしています。

教育問題

学力テストが行われましたが、国語・数学の結果がなんと過去10年で最低レベルとか。この分析と対応が急がれますね。コロナ問題の間、チリは世界的にも珍しいほど長期間、授業は全部オンラインでした。それがこの学力テストの低いレベルになった原因なのかもしれませんが、現在はほぼ100%クラスでの授業になっています。

汚職

ビタクラ前区長のトレ・アブラが汚職で裁判になっています。公金を自分の懐か政治資金に流用したとされています。彼はサンティアゴのビタクラ区長を10数年続けた有名人ですが、最後は惨めな終わり方になりました。彼の所属する右翼のRN党は彼に不正があれば裁くのは当然だとしかコメントしていません。

「経済」

1)銅価格と為替価格

1ポンド3.88ドルと1か月ぶりの高価格でした。そのため1ドルは793ペソと少しペソ高になっています。

2)ワイン

チリからの輸出の新しい目標はインドで、今年は大きな進歩があるらしい。さてチリのワインは値段が安い割においしいと言われていましたが、それが少しづつ替わり高級ワインの生産が増えたらしい。ところが、今週、輸出ワインの国際価格比較が発表されましたが、1本あたりで一番高価のはアメリカで73ドル。続いてフランス。チリは下の方の9位で29ドル。まだ高級ワインには遠いですね。

「一般」

1)犯罪

先週、高圧鉄塔の2か所で爆弾騒ぎがあったと書きました。今週はニュブレ州の鉄道路線の鉄橋に爆弾が破裂しました。橋は壊れなかったですが、線路は分断されました。もちろん、この先使用可能かどうかは詳細に調べる必要がありますね。その他に南部でカトリックの教会が襲われ燃えました。そして今日の日曜日、パイジャコでトラックの基地が襲われ、12台のトラックが全焼しました。

政府はこのテロリスト対策を新法案で対応するように国会に働きかける見込みです。ボリッチは現行法案ではテロリストに有効な対応ができないとしています。その組織に警察が(もしくは軍隊も含め)どのように対応するかが焦点ですね。銃撃戦になったら射殺しても良いとするのでしょうか?現在ビオビオ(第8州)とアラウカニア(第9州)に特別区として軍隊が駐屯していますが、今回事件のあったのはその南のリオス州。そこで内務大臣は特別区の拡大を考えているとか。

2)インフルエンザなどの肺炎関連病

先週、赤ちゃんが死亡した事件ですが、都内には空いた緊急病棟がなくペルーとの国境のアリカまで行く必要があるとされました。ところが同じ日に都内のラス・コンデス病院に空いた緊急病床があったとか。その病院に昨年行ったことがあります。すると大きな声が起こり、厚生省はコントロールも出来ないのかと。毎日、病床の使用率が発表されますから、政府は各病院とコンタクトしているはず。どうしてこんな惨めな事件が起きるのでしょう。詳しい事情は分かりませんが、厚生省は大臣は触らずに次官の一人を交代させました。この問題で、馘首にしたのか自主退職なのでしょう。これに関し、新左翼はその後任を自分たちのグループから出すように要求しました。ボリッチはそれを拒否して、その分野で経験のある人間を使用するとしました。内務大臣で同じエラーをしましたからね。

さてコロナ問題の時、医師協会は大声でピニェラ政権を批判しました。その会長をしていたイスキアはボリッチの仲間になり、新政権が出来た時、彼女は内務大臣になってナンバー2の地位に就きましたが、大臣の力はなく、ほんのわずかの期間で現内務大臣に交代しました。さて現在インフルエンザなどでかなりの混乱が起きていますが、医師協会はボリッチ批判をそれほどしません。どうしてかな?

今週から5歳以上の生徒・学生は学校でマスクをつけるよう指示が出ました。厚生省は市民にインフルエンサの予防注射をするよう呼び掛けています。土曜日の新聞の一面に65歳以上のインフルエンザのワクチン接種率はわずか57%だと書かれました。80,90%くらいが望ましいのですが。厚生省の宣伝が拙いのか、中高年が気にしていないかですね。

コロナ問題の時、ピニェラは良く働きました。チリのワクチン接種率は世界のトップクラスでしたから。それだけワクチンを大量に輸入し、それを無料で市民に

与えたわけです。ボリッチもこのインフルエンザで同じように頑張らなければ。

3)大学ランキング

世界大学ランキングで世界のトップ200に入ったチリの大学はただの1校。それはアンドレス・ベージョ大学でした。200-300位に入ったのはカトリカ大学とデサロジョ大学でした。一番古いチリ大学はいつもランキングに入りますが、今年は例外でした。以 上

「5月19日ー6月25日」

「政治」

1)ボリッチ動向

モネダ宮殿で多くの関係者の前でマプチェの件について新提案をしました。それは昨年11月に、彼がアラウカニア州のビジャリカを訪問し、そこでマプチェ問題に本格的な対応をしたいと発表しました。それがこの新提案になったわけです。「平和と理解」というテーマでマプチェ問題を検討する委員会を作り、本格的な対策案を考えるとします。現在の新憲法委員会でも先住民問題は対応が議論されますが、それに並行してこの委員会が働くわけです。委員には同地区の国会議員やピニェラの時に大臣をしていた人など、顔が知られた人がメンバーになっています。

さて最近、オーストラリアで先住民問題が話題になっています。そこでも、隣のニュージーランドでも先住民が住んでいるところへ、欧州人、イギリス人が侵入し殺人暴行を繰り返して領土を取り上げたわけですね。チリでも同じです。チリがスペインから独立したとき、アラウカニア地区はチリ国の領土には入っていませんでした。つまりオーストラリアの例と同じなわけです。木材会社の森林に入って木材を伐採する(盗伐)の場合でも、マプチェはここは自分たちのものだと言います。そして彼らの放火事件はずっと継続です。ところでチリの政府はマプチェに特例をいくつも実施しています。例えば、彼らの子供が大学に行くのに特別な奨学金を出すとか、土地を無料か安い値段で譲り渡すこともしています。さぁ、この委員会や新憲法委員会がマプチェ法案を作成し、マプチェの承認を得られるかな?

さてボリッチは週末に最南端のマゼラン州に飛び、そこで南極基地と南米最南端の町プエルト・ウィリアムズを訪問します。彼の実家のあるその州へは頻繁に行きますね。「バケーションではない、仕事に行くのだ」と彼は言うでしょうが。もちろん、あちこちからこれだけの大水害になっているのに何人もの大臣・政府高官を連れて何故、外遊するのだ(外国ではないですけれど)という声が出ています。

土曜日の午前中に、そう書いたのですが、なんとその日の夕方、首都圏の方に戻ってきて水害地を訪問したとか。仲間内からお頼みがあったのでしょうね。でも惨めだったのは、記者団を前に「私がパタゴニアに行ったことを批判する議員がいるがそれは間違っている。この視察は5か月前に決まった事だ。また今回のように大災害が起こっても、私一人がその対応に当たるのではなく組織として機能するわけで、私がサンティアゴにいなかったことを批判するのは当たらない」としました。それなら、そう言う代わりに「南の視察の仕事を途中でやめ、皆さんの様子を確認するため戻って来ました」とすれば市民に喜ばれたのでは。

2)世論調査

市民調査で政府のインフルエンザなどの健康問題につき、政府方針は正しいかと問い合わせるとイエスが27%、ノーが71%でした。これに少し関連しますが、コロナ問題で入院している人が、今週は10名とか。一時は1万人もいたのですから、如何に激減したか分かります。ワクチンの効果があったと言われます。

で、今の厚生大臣を支持するは47%、それから文部大臣を支持するは39%でした。

そしてボリッチを支持するはそれらより低い30%、不支持は65%と大差です。人気がないですね。

3)新左翼

新左翼の3政党で最大手は革命民主党RDですが、その女性議員ぺレスが議会の副議長職から外れました。彼女の同棲者がアントファガスタで不動産関連の不正をしたからと言われます。彼は政府の職に就きながら、自分の経営する会社を使って政府と契約して2重に収入を得ていたと、野党のUDIが訴えたからですが。もう野党も与党も同じですね。誰かを上手くだまして楽をしようとするわけです。政府から支払われたその簡易住宅建設費用も正しく使われたかはっきりするでしょう。

新聞に新左翼最大の危機と書かれました。そしてちゃんとそれらの関係者が過去にどんなことをしていたかの文書が掲載されています。それらの関係者は全員がRD党員です。「自分たちは市民のために働く・戦う。右翼の人間とは違う」と言っていたのですが。

ボリッチは報道陣を前にして、問題があればとことん追求する。不正は見逃せないとしました。家屋省の大臣や次官が調査されます。

これをやると政府内の混乱は更に大きなことになりますが、一般市民からはボリッチもなかなかやるねと評価されるでしょう。もちろん彼はそれを狙っているわけです。新左翼の崩壊もあり得るほどの大事件になるかもしれません。もちろん旧左翼(社会党など)はこのチャンスを使って過去の勢力を取り戻そうとしますね。

4)外交

アメリカの共和党が訴えていたチリが持つアメリカ入国の簡易ビザの取り消しについて、チリ米国間で合意に達し、情報の交換を条件にチリの特権を維持することになりました。

「経済」

1)銅価格と為替

銅の価格はポンド当たり3.85ドルと先週とほとんど同じ。週日に一時3.93まで上がったのですが。為替は1ドル805ペソでした。

2)公定歩合 

中銀はそれを少し下げると言われましたが、結局は下がらず、11.25%を維持しました。その中銀の予想ですが、GDPは今年の場合、マイナス0.5%からプラス0.25%の間です。そして来年は1.25%から2.25%になるだろうとのこと。株式市場IPSAは長い間、5700ポイント以上をキープしていましたが、残念、この週末は5680に下がってしまいました。大蔵大臣と新税制の件で面談をしていた経営者グループは全く同意に達することはなかったとネゴの終焉を確認しました。ボリッチ大丈夫かな?

3)5月の小売

11か月連続で前年対比で下がっています。5月は10.8%減少でした。その数字は過去3年で最悪。つまり5月の売り上げはそれほど悪かったわけです。それに関連するのでしょうが、会社の都合で退職させられた社員が今年の1-4月で15.2万人もでました。前年対比29%も上昇で心配されます。

「一般」

1)水害

30年ぶりの大水害だそうです。首都圏だけでなく、近くのいくつかの州で川の氾濫が続き、それが住宅地区に流れ込み、多くの家屋が床上浸水までなっています。首都圏と隣の州を結ぶ幹線道路もあちこちで河川の水が道路を覆い、一部で走行禁止になっています。橋が壊れたところも出ています。既に死傷者も出ています。現在、住居から外に出られない状態の人が1万人にも上るとか。水が家屋の中に侵入してくれば落ち着いて生活できません。政府は被害者の援助を考えています。

ビーニャやバルパライソのホテル・レストランはこの3連休でサンティアゴから30万台の車が外に出ると予想されたときは、そのうち何台が自分たちの町に来るだろうと喜びの推測をしていたのですが、結局はほとんどゼロと言う最悪の結果になりそうです。3連休の最後の日、月曜日も雨の予報が出ていますから、まだ被害は増加しそうです。もちろん地区によって雨量は異なりますが、少ないところで100ミリ、そして200,300ミリの所もかなりあるとか。

いくつかの地区で病院や警察署にも浸水が起こり、移転をするべきか検討するとか。

金曜日の夜のテレビニュースはほとんど100%水害の報告でした。南の方のラハの滝は有名な観光地ですが、その近くの橋で見物してた観光客を警官が危険として、橋を出るように指導したらしい。橋が壊れれば死亡事故になりますからね。

2)観光

5月のサンティアゴ空港の使用率は21%アップとほぼコロナ問題前のレベルに戻りました。国際線は30%の上昇で、一番増加したのはサンティアゴとサンパウロ間でした。

以  上