『移行期の正義とラテンアメリカの教訓 — 真実と正義の政治学』 杉山 知子 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『移行期の正義とラテンアメリカの教訓 — 真実と正義の政治学』 杉山 知子


「移行期の正義」とは、独裁、権威主義体制、内戦、紛争、戦争下での人権侵害に対し、真実と正義を求める動きであるとし、1980年代後半から90年代前半にかけてのラテンアメリカや東欧での権威主義体制から民主主義体制への移行期にみられた。そのアプローチとしては、名称や目的、運営形態は様々であるが「真実委員会」の活動を中心としている。

本書は、移行期の正義とは何かを概念、先行研究から始め、冷戦期とその後のラテンアメリカと米国・OAS(米州機構)との関係を概観した後、アルゼンチンの軍政下での国家テロリズム、チリのピノチェット政権後民政下での真実追究とピノチェット逮捕後のチリ社会の変化、エルサルバドル内戦と和平合意後の真実・正義と和平構築をそれぞれ分析し、最後にそれらの事例を中心に、ラテンアメリカや世界各地における移行期の正義のアプローチや傾向、今後の課題を考察している。各章の間に、歴史上関わりのある人物を通して見える世界、さらに映画を通して学ぶ世界の14 のコラムが挟まれており、問題への関心を高め理解の一助になっている。

(北樹出版 2011年10月 201頁 2300円+税)

『ラテンアメリカ時報』2011/12年冬号(No.1397)より