執筆者:桜井悌司(ラテンアメリカ協会常務理事)
2023年上半期(1月~6月)におけるラテンアメリカ関連セミナー(政治、経済、貿易、投資、社会関連で、文化的なものを除く)の開催状況をリストアップしてみた。このリストは2022年から開始したものである。2022年開催分は、途中から開始したので一部漏れがあることが思われるが、2023年上半期は、ほぼカバーしたものと考えている。
ラテンアメリカ関連のセミナーと言えば、ある程度主催者が限定されていることもあり、ここでは、「ラテンアメリカ協会」、「ジェトロ・アジ化経済研究所」、「JICA(国際協力機構)」、「その他組織」の4組織主催のセミナーに分類した。
表1は、2023年上半期に開催された4組織主催のラテンアメリカ関連セミナーの回数である。これによると、4組織全体では、合計62回で対前年同期比、41%の伸びを示した。オンラインに加え、ハイブリッドのセミナーもコロナ5類への移行に伴って、今後も増加するものと思われる。ラテンアメリカ協会主催のセミナー回数は、18回で、前年同期比の50%増である。その他組織主催のものも29回と前年同期比21%増となっている。
表1 ラテンアメリカ関連セミナーの主催者別開催件数(2022年上半期~2023年上半期)
主催者 | 2022年上半期 | 2023年上半期 | 伸び率 | 2022年通年総数 |
ラテンアメリカ協会 | 12 | 18 | 150% | 24 |
ジェトロ・アジ研 | 2 | 7 | 350% | 12 |
JICA | 8 | 8 | 100% | 23 |
その他組織 | 22 | 29 | 120.8% | 37 |
合計 | 44 | 62 | 140.9% | 96 |
表2は、ラテンアメリカのどの国、どの地域を対象としているかを分類したものである。
それによると、ブラジルが最も多く21回(前年同期比16回)で以下中南米全体が18回(14回)、メキシコ7回(1回)、アルゼンチン4回(1回)、コロンビア3回(1回)、ペルー3回(1回)、パラグアイ3回(1回)と続く。残りは2回の地域・国は、南米、カリブ海諸国、アマゾン地域、米国、チリ、グアテマラ、ドミニカ共和国となっている。ブラジルが常に圧倒的に多いが、メキシコも昨年同期に比較して、7回と急激の伸びている。
ラテンアメリカ協会が、外務省・日本大使館やJICA事務所による小国の紹介を積極的に行っている。
表2 ラテンアメリカ関連セミナーの対象国・地域別分類(2023年上半期)
国・地域名 | ラ米協会 | ジェトロ・アジ研 | JICA | その他組織 | 合計 |
中南米全般 | 8(3) | 1(1) | 3(4) | 6(6) | 18(14) |
南米 | 1(0) | 0(0) | 1(0) | 0(1) | 2(1) |
カリブ海諸国 | 0(0) | 0(0) | 0(0) | 2(1) | 2(1) |
アマゾン地域 | 0(0) | 0(0) | 1(0) | 1(0) | 2(0) |
ブラジル | 3(3) | 4(1) | 2(3) | 12(9) | 21(16) |
アルゼンチン | 1(0) | 1(0) | 0(0) | 2(0) | 4(0) |
ウルグアイ | 0(1) | 0(0) | 0(0) | 1(0) | 1(1) |
米国 | 2(1) | 0(0) | 0(0) | 0(0) | 2(1) |
グアテマラ | 1(0) | 0(0) | 0(0) | 1(0) | 2(0) |
ニカラグア | 1(1) | 0(0) | 0(0) | 0(0) | 1(1) |
パナマ | 0(1) | 0(0) | 0(0) | 0(0) | 0(1) |
ホンジュラス | 1(1) | 0(0) | 0(0) | 0(0) | 1(1) |
エクアドル | 0(1) | 0(0) | 1(0) | 0(0) | 1(1) |
パラグアイ | 2(1) | 0(0) | 1(0) | 0(0) | 3(1) |
メキシコ | 1(0) | 2(0) | 1(1) | 3(0) | 7(1) |
チリ | 0(0) | 1(0) | 0(0) | 1(1) | 2(1) |
ペルー | 0(0) | 2(0) | 1(0) | 0(1) | 3(1) |
ベネズエラ | 0(0) | 0(0) | 0(0) | 0(1) | 0(1) |
コロンビア | 1(0) | 1(0) | 0(0) | 1(1) | 3(1) |
キューバ | 0(0) | 0(0) | 0(0) | 0(0) | 0(0) |
コスタリカ | 0(0) | 0(0) | 1(0) | 0(1) | 1(1) |
ホンジュラス | 1(0) | 0(0) | 0(0) | 0(0) | 1(0) |
ドミニカ共 | 1(0) | 0(0) | 1(0) | 0(1) | 2(1) |
ハイチ | 1(0) | 0(0) | 0(0) | 0(0) | 1(0) |
合計 23年 | 25(18) | 12(7) | 13(8) | 31(29) | 81(62) |
合計22年 | 12 (12) | 2 (2) | 8 (8) | 23 (22) | 45 (44) |
(注)複数の国を対象とする場合は、各国毎にカウントした。( )内は2022年上半期の数字
表3から表6は、それぞれ、ラテンアメリカ協会、ジェトロ・アジア経済研究所、JICA、その他組織が具体的にどのようなテーマで講演・セミナーを行ったかを紹介したものである。今後とも各組織で多くのラテンアメリカ関連セミナーの開催を期待したい。
表3 ラテンアメリカ協会主催セミナー 6月26日時点
開催日 | テ ー マ | 講 師 | 参加者数 |
1/24 | 2023年の対中南米外交を展望する | 小林麻紀 外務省中南米局長 | 114名 |
2/2 | ラテンアメリカのサッカーとワールドカップ | 山田彰 ラテンアメリカ協会常務理事 | 50名 |
2/7 | ブラジルを中心とした2023年の南米経済見通し | 木阪明彦 ブラジルMUFG バンク頭取 | 63名 |
2/15 | JICA中南米2所長報告会(パラグアイ、ニカラグア) | 福井康 パラグアイ事務所 高砂大 ニカラグア事務所 |
89名 |
2/28 | 米国の対中南米政策 | 渡辺亨司 米国住友商事ワシントン事務所調査部長 | 49名 |
3/7 | 中南米との通商政策 | 三浦聡経済産業省通商政策局中南米室長 | 42名 |
3/28 | ブラジル農業の可能性と食料安全保障について | 加藤茂治 豊田通商(株)食料生活産業本部COO | 67名 |
4/4 | メキシコ政治経済情勢の現状と見通し | 福嶌教輝 駐メキシコ合衆国特命全権大使 | 62名 |
4/20 | ~Español in USA~英語混じりの新スペイン語スパングリッシュが米国の公用語になる日」 | 瀧澤寿美雄氏メヒココンサル代表 | 46名 |
4/21 | 急速に進む中南米のDXへの取り組み | 荻原淳史 NTTデータブラジルディレクター | 33名 |
5/11 | コロンビアの政治経済情勢の現状と見通し | 高杉優弘 駐コロンビア共和国特命全権大使 | 114名 |
5/19 | 味の素グループの中南米事業 ~現状と展望~ | 佐々木達哉 味の素株式会社 取締役執行役専務 | 78名 |
5/24 | JICAのドミニカ共和国及びハイチ事務所の活動について | 渡近藤貴之 JICAドミニカ共和国事務所長 野田久尚 JICAハイチ支所長 |
72名 |
5/25 | GOOGLE MAPSで疑似体験するアルゼンチン発見 | 相川知子 異文化コミュニケーター | 56名 |
6/2 | 前川製作所の海外展開、特にラテンアメリカでの事業への取組みと今後 | 前川正雄 前川製作所名誉顧問 | 61名 |
6/14 | 日本発祥プロバイオティクス製品の世界市場深耕と拡大 | 根本篤 ブラジルヤクルト商工株式会社社長 | 41名 |
6/15 | 日本-ブラジル-中米へと展開する地域警察協力 | 山口尚孝 JICAグアテマラ事務所長、代田文 | 43名 |
6/23 | 小粒でもピリリと辛いパラグアイ | 中谷好江 駐パラグアイ特命全権大使 |
表4 ジェトロ・アジア経済研究所主催セミナー 6月26日時点
開催日 | テーマ | 講師 |
1/24 | 2023年の中南米の政治経済の展望(メキシコ、コロンビア、ペルー) | メキシコ所長 ボゴタ所長 リマ所長 |
2/1 | 2023年の中南米の政治経済の展望(ブラジル、アルゼンチン、チリ) | サンパウロ所長 ブエノスアイレス所長 サンテイアゴ所長 |
2/2 | 「ラテンアメリカ諸国が選択した道:『ラテンアメリカ・レポート』Vol.39, No.2の発行にあわせて」 | アジア経済研究所、近田亮平、三浦航太、柴田修子、尾尻希和、北条真莉紗 |
2/3 | 日伯食品・農業合同セミナー | 農林水産省との共催 ブラジルの輸入業者、キッコーマン、JICA、ジェトロ関係者 |
2/28 | 対立が深まるラテンアメリカの政治・社会―ブラジルとペルーの混乱 | 近田亮平、菊池啓一、清水達也、上谷直克 |
3/16 | ルーラ新政権が始動―ビジネス環境の変化の見通し | 古木勇生 ジェトロ・サンパウロ |
6/7 | メキシコグアナフアト州投資セミナー 7 | デイエゴ・シヌエ・ロドリゲス州知事、中畑貴雄メキシコ所長、グアナフアト州との共催 |
表5 JICA主催セミナー 6月26日時点
開催日 | テーマ | 講師等 |
1/20 | ウチナーンチュ―としての在日南米人 | 藤浪海 関東学院大学 |
2/9 | 在外ブラジル人としての在日ブラジル人 | グスターボ・メイレレス 神田外語大学 |
2/9 | 日本生まれペルー育ち-私のアイデンティティは世界のどこへ?- | 大城 成美 (JICAペルー事務所) |
3/14 | スペイン語、ポルトガル語学力を活かして国際協力で活躍する | 野村明香他JICA職員 |
3/17 | 大河川を流れる時と人〜アマゾン日本人移民史への招待 | ファクンド・ガラシーノ(JICA緒方貞子平和開発研究所 研究員) |
6/3 | 「日系人」の変遷とNikkeiの意味 ― 日系コミュニティと日系社会の違い | 小嶋茂 JICA横浜 |
6/7 | 中南米・カリブ地域セミナー ~開発のプロが現地からビジネスチャンスや課題を発信~ | JICAメキシコ事務所 次長 大里圭一他メキシコ、ドミニカ共、コスタリカ、エクアドル、ブラジル、パラグアイ事務所 |
6/10 | 「移民」と「移住者」の歴史 ―偏見や差別を超えるために | 小嶋茂 JICA横浜 |
表6 その他組織主催セミナー 6月26日時点
開催日 | テーマ | 講師 | 主催者 |
1/12 | カリブ地域とメキシコのコロナ危機 | ハイメ・アラゴン=ファロミール(アンティル大学准教授) | 上智大学イベロアメリカ研究所 |
1/17 | ”Brazil—Japan Cooperation: From Complementarity to Shared Value” (Springer社)の出版記念講演 | 浜口伸明、子安昭子、山崎圭一、河合沙織、舛方周一郎他 | 神戸大学、ブラジリア大学 |
1/24 | メキシコ投資セミナー、メキシコでのビジネス、ヌエボレオン州モンテレイ市 | メキシコ大使、ジェトロ、Invest Monterrey | メキシコ大使館、Invest Monterrey,フェガモ法律事務所 |
1/27 | Book Launch Seminar “Brazil-Japan Cooperation: From Complementarily to Shared Value | 浜口伸明 神戸大学他 | ブラジリア大学、神戸大学 |
2/13 | アマゾンの野生のチョコレート | 武田真由子 | 日本ブラジル中央協会 |
2/16 | 日系企業のメキシコ・アグアスカリエンテス州進出好機セミナー | テレサ・ヒメネス州知事 | 在日メキシコ大使館 |
2/22 | ルーラ新政権のブラジルと日本ブラジル関係 | 小林麻紀 外務省中南米局長 | 日本ブラジル中央協会 |
2/22 | ラテンアメリカとカリブの高齢化:高齢者に対する社会保障と生活の質 | IDB関係者 | 米州開発銀行(IDB)アジア事務所 |
3/9 | ラテンアメリカIT人材育成事業成果報告会 | 経済産業省、ブラジル政府、ジェトロ、関係企業 | 経済産業省 |
3/14 | ノルデスチから見たブラジルを語る | 佐野 浩明 在レシフェ 総領事 | 日本ブラジル中央協会 |
3/17 | 中南米への食産業展開・輸出促進報告会 | 農林水産省、ジェトロ、JICA関係者 | 農林水産省 |
3/20 | スペイン語圏に学ぶ家父長制批判のABC-搾取から女性解放論を考える- アルゼンチン | エビハラヒロコ | ラテンアメリカ探訪 |
3/25 | 日伯フォーラム(ブラジル研修を語る) | 石田博士(朝日新聞社)他 | 日本ブラジルかけ橋の会 |
4/15 | らしくない国ウルグアイ~南米のイメージを覆す | 田中径子 元ウルグアイ国日本大使 | NPO法人イスパJP |
4/20 | 知られざるブラジル発フィンテックの実力 | アルベルト・モントゥファーEBANXアジア太平洋ビジネス開発責任者他 | 日本経済新聞社 |
4/21 | 味の素特別顧問の西井孝明氏との昼食講演会 | 西井孝明 味の素前社長 | 在日ブラジル商工会議所 |
4/26 | ブラジルと日本 両国関係の展望 | オクタヴィオ・コルテス駐日ブラジル大使 | 日本ブラジル中央協会 |
5/8 | ラテンアメリカと日本の婚姻平等同性婚の法制化への道 | 近田亮平 アジ研 畑恵子 早稲田大学名誉教授他 |
在日メキシコ、アルゼンチン、ブラジル大使館 |
5/16 | ブラジル投資・規制アップデイト2023(インフラ投資、公共入札、金融規制、ESG/環境) | 西村あさひ等の関係者 | 西村あさひ法律事務所 |
5/23 | 延べ10年にわたるブラジル駐在を語る | 市川亮太氏時事通信前サンパウロ支局長 | 日本ブラジル中央協会 |
6/5 | キューバ・ビジネスセミナー | ミレナ・ペレス キューバ商業会議所展示イベント部長他 | UNIDO、在日キューバ大使館 |
6/9 | 観光セミナー「サルサと音楽の国コロンビア」 | Beto、日本サルサ協会 サルサダンス特定認定指導員等 | 在日コロンビア大使館 |
6/10 | コーヒー生産国グアテマラの現実 | 谷口稜子JICAグアテマラ事務所企画調査員 | NPO法人イスパJP22 |
6/16 | アフリカ・中南米でのIT教育と雇用創出 ~ポストアジアの人材発掘とその可能性 with Japan~ | 野呂浩良 氏 (株)ダイビック 代表取締役 | 国際開発機構(FASID) |
6/16 | 第2のピンクタイドをどう解釈するか 「ブラジル」 | 舛方 周一郎(東京外国語大学講師) | 上智大学ィベロアメリカ研究所 |
6/23 | 第2のピンクタイドをどう解釈するか 「アルゼンチン」 | 大場 樹精(上智大学 非常勤講師) | 上智大学ィベロアメリカ研究所 |
6/24 | ともに夢見る未来―ブラジル人住民のキャリア形成と職業アスピレーション | 谷口智彦 近畿大学教授他 | 愛知県立大学 |
6/24 | 合評会「世界の中のラテンアメリカ政治を読む」 | 舛方周一郎、宮地隆廣他 | 東京外国語大学25 |
6/30 | 第2のピンクタイドをどう解釈するか 「チリ」 | 浦部 浩之(獨協大学教授) | 上智大学ィベロアメリカ研究所 |