日本貿易振興機構(JETRO) アジア経済研究所でアルゼンチン、その中でも社会保障制度に注力して研究を続けてきた著者が、アルゼンチンにおける福祉国家の性格、形成過程、近年の変容とその評価を総合的に分析したもの。
1946 〜 55年のペロン第一次政権の労働組合を支持基盤にして発展させた国家コーポラティズムと福祉国家の形成、夫人が率いるエバ・ペロン財団の活動とペロニズムの浸透、1955年のクーデター以後、軍政と民政との間での政権交替、1973年からの第二次ペロン政権と1980年代の「失われた10年」を経て、メネム政権下でのネオリベラリズム経済移行と2001年のアルゼンチン経済危機による貧富の格差の拡大という歴史の流れの中で、それぞれの時代の福祉政策の変化を丹念に辿り、最終章でアルゼンチンの福祉国家の位置づけとラテンアメリカとアジアの福祉国家との比較し、特性を探っている。
〔桜井 敏浩〕
(旬報社 2011年10月 312頁 7000円+税)
『ラテンアメリカ時報』2011/12年冬号(No.1397)より