執筆者:Ruben Rodriguez Samudio(早稲田大学法学研究科講師・パナマ共和国弁護士)
A.政府歳出状況
6月8日に開催された国家発展委員会(Consejo de la Concertación Nacional para el Desarrollo)ではヘクトル・エルナンデス経済財政省大臣がパナマの経済状況と政府歳出について報告を行った。エルナンデス大臣が2020年における政府歳入はUS$100ごとにUS$20の赤字が生じたことに対して、2023年では、US$100ごとにUS$86が債務返済に支払われ、残り US$14は様々な投資に回していると述べている。 また、金融活動作業部会(GAFI)のグレイリストについて、エルナンデス大臣はGAFIがパナマ政府に求めているすべての目標を達成し、GAFIの代表がパナマで調査を行うことを発表した。調査結果次第では、10月にグレイリストから取り消される可能性もある。
B.デジタル領収書の成果
パナマ総税局のデ・グラシア局長は、デジタル領収書発行義務の導入によって2022年1月から2023年6月間の徴税はUS$4億500万を超えて、2019年の徴税を超えたと述べた。2023年6月時点では、義務対象納税者の85%は既にデジタル領収書を利用していることも判明した。
2021年の第256号法律により2022年1月からデジタル領収書が義務化された。第256号法律は、商品販売・サービス提供を問わず、すべての取引において、認可された機械、またはデジタルによって領収書を発行する義務を規定している。当時、パナマ弁護士連合会、パナマ計理士連合会、およびパナマ専門職連合会はパナマ憲法第40条においては、リベラルアーツ、弁護士のような知識のみを利用して活動する専門職(Profesiones Liberales)の営業に対する課税が禁止されているため、違憲訴訟を提起したが、判決はまだ下されていない。
A.平均月収の上昇傾向
求人情報専門会社のKonzertaが発表した報告書によると、パナマでの平均月収が全体的に上昇傾向を示している。5月に、Konzertaの検索エンジンサイトに記載された求人からすると、パナマにおける平均月収はUS$1,056(前年同期比1.6%増)だと分かった。そのうち、男性が求める平均月収はUS$1,044、女性の場合US$1,029であった。また、女性応募者数(52.63%)は男性応募者数(47.37%)を上回るにもかかわらず、管理職の場合、男性応募者の方が多い。
しかし、月収上昇傾向に対して、日常生活に必要な商品の物価も高騰している。消費者保護局がパナマ市を中心とした調査結果では、5月に最低限必要な食材(canasta básica de alimentos)の平均はUS$289.64(前年同期比US$9増加)であった。また、統計局の消費者物価指数に関する報告書では、5月時点では家賃と水道光熱費は前年同期比10.9%増加していることが明らかになった。さらに、食材(4.2%)、教育に関するサービス(3.7%)、レストラン代とホテル代(3.3%)も上昇した。これに対して、運送(-9.9%)、健康(-2.6%)、洋服や靴(-1.1%)、通信費(-0.5%)、娯楽(-0.1%)が下降している。
以 上