『パンタナール −南米大湿原の豊穣と脆弱』 丸山 浩明編著 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『パンタナール −南米大湿原の豊穣と脆弱』 丸山 浩明編著


ブラジル、パラグアイ、ボリビアにまたがる世界最大級の熱帯低層湿原パンタナールの多用な生態系の包括的な保全と、地域社会の持続可能な発展について、人文地理、自然地理、農・獣医学の5人の専門家が地元の研究者と協力して10年間にわたって行った実証研究の成果。

ブラジル領南パンタナールを中心に調査を行い、第?部自然環境ではパンタナールの形成史、地形・気候と水文環境、自然環境条件の違いにともなう生物多様性分布、それらを支える生息環境、地表水と地下水の複雑な交流環境を論証している。第?部では先住民と17〜18世紀前半に侵入した欧州人の植民による開発の歴史、導入された牧畜の盛衰と文化、エコツーリズムの発展とそれによるスポーツフィッシングにより翻弄される漁民、第?部では伝統的ファゼンダ(農牧場)経営や粗放的牧畜経営を事例により解明し、人間による自然堤防の破壊などによる水の流れの変化の伝統的な生態学的知識と科学的知識の相克を分析し、この調査結果のまとめとして生態系破壊の諸相、環境保全への取り組みと課題、持続可能な発展への取り組みを提言している。

(海青社2011年9月 295頁 3800円+税)

『ラテンアメリカ時報』2012年春号(No.1398)より