【季刊誌サンプル】日本チリ外交関係126年の歩みと展望 ―協力・連携の更なる深化に向けて 渋谷 和久(在チリ大使) - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

【季刊誌サンプル】日本チリ外交関係126年の歩みと展望 ―協力・連携の更なる深化に向けて 渋谷 和久(在チリ大使)


【季刊誌サンプル】日本チリ外交関係126年の歩みと展望 ―協力・連携の更なる深化に向けて

渋谷 和久(在チリ大使)

本記事は、『ラテンアメリカ時報』2023年夏号(No.1443)に掲載されている、特集記事のサンプルとなります。全容は当協会の会員となって頂くか、ご興味のある季刊誌を別途ご購入(1,250円+送料)頂くことで、ご高覧頂けます。

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日本チリ外交関係126年の歩みと展望 ―協力・連携の更なる深化に向けて 渋谷 和久(在チリ大使)

2022年、チリと日本は外交関係樹立125周年を迎えた。この関係は、1897年9月25日の日本チリ修好通商航海条約の締結に始まり、アジア太平洋諸国の中で最も古い。しかし、この条約の締結前にも、日本国民のチリ来訪や巡洋艦購入等の接点があった。

第二次世界大戦後、歴代の総理4名や皇族がチリを訪問、1990年の民政移管後、全てのチリ大統領が訪日している要人往来に見られるように、両国は強固な二国間関係を築いており、2018年、バチェレ大統領訪日時には「戦略的パートナーシップ」関係に引き上げられた。同年、チリはOECD/DAC援助受取国リストから卒業したが、日本は草の根・人間の安全保障無償資金協力等の開発協力による支援を各地で継続しており、多くのチリ国民から感謝されている。

2022年3月にチリ史上最も若い大統領として就任したボリッチ現大統領は、大の日本文化ファンで文学やポップカルチャーに大きな関心を有している。2022年11月のタイAPEC(アジア太平洋経済協力)における日チリ首脳会談や、2023年5月4日、林外務大臣のボリッチ大統領表敬及び外相会談等、両国の友好関係は更に強化している。

本稿では、長年の両国関係の基盤となる経済関係を中心に、これまでの振り返りと今後の展望を見ていきたい。

資源開発(銅鉱山等)
チリにとり銅産業の重要性は計り知れず、チリ政府は世界における銅生産量シェア28%を維持し、2030年までに年間銅生産量700万トン、2050年までに同900万トンへ増加させる目標を掲げている。銅の埋蔵・生産・輸出量など世界一のチリは、日本にとっても最大の供給国であり、銅生産量世界一のエスコンディーダ鉱山含め、現在日本企業が出資等している鉱山は13にのぼる。

第二次大戦後、急速な工業化で鉱山資源の確保が必要となり、豊富な銅資源を有するチリが日本企業にとって魅力的な投資先となった。1990年代に投資が本格的に進み、資本参加、開発・創業における技術協力、資金援助などを通じて、日本企業はチリの銅鉱山開発に重要な役割を果たしてきた。近年、水不足の深刻化に伴い、工業用水の確保が困難となる中、日本企業が出資する鉱山では海水淡水化の技術を活用している。また、労働者の確保が困難となり、人件費の高騰や生産性の向上及び安全の確保が課題となる中、鉱山機械の無人化や稼働データによる鉱山運営の効率化が進んでいる。更に、環境規制によるリサイクル義務化により、世界初の鉱山用廃タイヤリサイクル事業が日本企業の出資を受けて開始している。

また、環境対策や山災害を防止する重要性から、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)や国際協力機構(JICA)等は採掘・処理現場での防災と保安、環境汚染物質の処理・除去、その測定と分析に関する技術指導を中心とした技術協力を実施してきた。

さらに、気候変動に伴い再生可能エネルギーへの注目も高まる中、チリは太陽光や風力などの再生可能エネルギーにも適し、多くの日本企業が投資を進めている。脱炭素化の先端を行くチリらしく、100%再生可能エネルギーを活用している鉱山もある。

チリは、電気自動車などのバッテリーの原料として需要が伸びているリチウムも世界一の埋蔵量を誇る。開発が不充分だった同資源に関し、ボリッチ大統領は2023年4月に国家リチウム戦略を発表。国内に60以上あるとされる塩湖でのリチウム開発を国際入札で認め、世界最大のリチウム生産国にすると同時に、塩湖