「移動」の時代に「日系」と呼ばれる人の言語文化教育を中心に、日本語につながる人たちがどのように日本、日本語、日本文化と向き合い交渉し越えていくのかについて、人類学や社会言語学等専門分野の異なる研究者による論集。
まず「南米日系日本語教育の創造性と多様性」(松田金沢大学研究所教授)で全体のイメージを示し、ブラジル日系4世の継承語・文化保持の可能性(坂本上智大学院教授)、「日系」人のアイデンティティ形成と教育について(水上貴雄(公財)海外日系人協会事務局次長ほか)、文化的言語的に多様な子どもたちのことばの教育に関する実践(中島永倫子国際交流基金日本語専門家・櫻井千穂大阪大学准教授ほか)、「日系」のことばと文化の創造性と多様性(中井同志社女子大学教授。ボリビアの事例(ダニエル・ロング東京都立大学教授)、最後にことばと文化の見方を見直しアイデンティティを考察している(岡田浩樹神戸大学教授)。3人のブラジル、ボリビア等生まれの当事者によるコラムも添えられている。
よりよい言語的・文化的に多様な社会をつくっていこうとするヒントを与えることを目標に編まれた、示唆に富んだ論考集。
〔桜井 敏浩〕
(くろしお出版 2022年10月 231頁 2,800円+ISBN978-4-87424-914-7)
〔『ラテンアメリカ時報』 2023年夏号(No.1443)より〕