連載エッセイ257:硯田一弘 「南米現地最新レポート」その47 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ257:硯田一弘 「南米現地最新レポート」その47


連載エッセイ254

「南米現地最新レポート」その47

執筆者:硯田一弘(アディルザス代表取締役)

「2023年7月2日発」

いよいよ2023年も半分折り返して7月になりました。

今日から最低賃金が改定されて、これまでのGs.2,550,307/月から5.1%上がってGs.2,680,373/月になりました。

https://www.ultimahora.com/abdo-benitez-decreta-aumento-del-salario-minimo-en-g-130000#:~:text=El%20presidente%20Mario%20Abdo%20Ben%C3%ADtez,1%20de%20julio%20de%202023.

昨年改定時の為替がGs.6,862/US$で今日のレートがGs.7,288/US$ですから、昨年改定時の米ドル換算がUS$372、今回の改定時がUS$367で、米ドル高に合わせた調整と理解すると賃金の高騰というイメージは払拭されます。

https://www.xe.com/es/currencycharts/?from=USD&to=PYG

日本の賃金は円安の進行で、米ドル換算するとどんどん目減りしている訳ですが、逆に外国人から見ると日本の物価がどんどん下がっているイメージなので、世界中から観光客や買い物客が集まる訳です。

先月はベネズエラ時代の友人の息子(現在は米国の投資銀行の中堅社員)が新婚旅行で日本に来たのですが、宿泊先は一泊10万円以上の超高級ホテル。最低賃金では南米でも超最低レベルのベネズエラですが、優秀な人材はいち早く国外に脱出して、相応の地位に就いている訳で、彼我の実力差を見せつけられた印象です。

ネットフリックスで人気のシリーズ、『Buying Beverly Hills』というドキュメンタリー番組では、メキシコから移民してきたユダヤ人が一代で築き上げた高級不動産屋の内幕を紹介していますが、ここに登場する住宅は、安いものでも数億円、高いものは数百億円という物件で、それが割とカジュアルな感じで売買されている過程を販売員のインタビュー等も交えて紹介されており、こんな世界もあるのだと感心させられます。

https://www.netflix.com/py/title/80993568

その後パラグアイ経済が徐々に発展するにつれて国境の幹線道路沿いにも税関の拠点が整備されてきて、現在は全国に95の事務所と473の出張所が輸出入貨物の管理に当たっています。陸路にある税関は、乾いた港=Puerto Secoとも呼ばれています。

日曜日はパラグアイ・ブラジル国境はほぼガラガラでスンナリ通過出来て、アルゼンチン国境までは途中で朝市見物をしても1時間で到着しました。しかしブラジル・アルゼンチン国境で予想を超える渋滞の為に、肝心の滝見学に割く時間が短くなってしまい、お客様には申し訳ないことをしてしまいました。

で、今日の言葉inmobiriarioですが、パラグアイでは引き続き外国人を中心に不動産投資が盛んで、南米地域の不動産取引の人気スポットになっていると報じられています。

https://www.lanacion.com.py/negocios_edicion_impresa/2023/06/29/paraguay-vuelve-a-ser-la-capital-del-ecosistema-inmobiliario-de-la-region/

昨年末から移り住んでいるエステ市周辺の地域は、南米のビバリーヒルズと形容される様な地域で、Netflix番組に出てくるような高級住宅がゴルフ場を中心に沢山あってなかなかの壮観です。

https://imo.com.py/property/casa-en-el-parana-country-club/

こうした不動産投資ブームは2010年代のペルーの首都リマでも発生しており、当時はバブルと言われていましたが、10年以上経過した今でもバブルが崩壊するどころか、確実に価値の上昇が続いています。

https://www.adirzus.com/post/%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%81%AE%E8%A8%80%E8%91%89inmobiliario-%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%A2%E3%83%93%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%82%AA-%E5%BD%A2-%E4%B8%8D%E5%8B%95%E7%94%A3%E3%81%AE-%E8%8B%B1-real-estate-housing

その一方、通貨の下落が止まらない隣国アルゼンチンからは公式レートの半分程度の価値となっている為替レートを利用して違法な燃料の輸入が続いています。

https://www.lanacion.com.py/negocios_edicion_impresa/2023/06/30/ingresan-al-mes-100-millones-de-litros-de-combustible-ilegal/

この記事の写真では、5500という数字を示したプラカードが写っていますが、これは1リットルGs.5,500≒110円という意味。アスンシオンのガソリンスタンドではGs.7,100≒143円で売られているもので、二割以上安いメリットを享受しようと中国製の安価なバイクやチリのイキケから入る日本製中古車を利用する層の人達の人気を集めています。

パラグアイの不動産ブームを支えるのは、そのアルゼンチンの富裕層。通貨価値下落という点では共通している日本の皆さんもパラグアイの不動産に投資して資産価値の目減りを防いでは如何でしょうか?

「7月9日発」

現在お手伝いをしている日本からの進出企業ですが、昨年7月に会社登記を行って1年以内で製品の初出荷にこぎつけました。工場への機械が搬入されて半年での製品出荷、これは外資企業の誘致に熱心なパラグアイでも相当早いスピードでの達成であろうと思います。

昨日金曜日の朝、待望のトラックが工場に来て、1パレット分の製品を載せて工場のすぐ近くにある税関に持ち込みました。

https://www.google.co.jp/maps/place/ALGESA+-+Administraci%C3%B3n+de+Aduana+Terminal+de+Cargas+Km+12/@-25.4910379,-54.7268057,1120m/data=!3m1!1e3!4m6!3m5!1s0x94f686f27bbedde3:0xe803671dab231585!8m2!3d-25.4910379!4d-54.7224283!16s%2Fg%2F1ptwrptg4?entry=ttu

四方を陸に囲まれたパラグアイでは島国日本とは全く異なる国境管理が行われており、税関も皆とではなく道路に沿ったところに存在しています。

そもそも税関というのは、その国に輸入されたり輸出されたりする貨物の価額に対して一定の税金(関税)をかけて国内産業を保護したり、重要な国産品の過剰な国外流出を規制する為に存在しているもので、税金を管理する財務省の管下の組織となっているのが一般的です。

税関に関する法制度は1846年には導入されていましたが、パラグアイ最初の税関庁は1907年に首都アスンシオンのパラグアイ川沿岸に設置されました。

その後パラグアイ経済が徐々に発展するにつれて国境の幹線道路沿いにも税関の拠点が整備されてきて、現在は全国に95の事務所と473の出張所が輸出入貨物の管理に当たっています。

今回出荷した貨物は、工場の近くにある民間企業が運営するロジスティックセンターの中に配置されていて、いつも通っている道路ながらここが税関であることに気付きませんでした。

通りから少し奥まったところにある入口のゲート


構内では通関手続きを待つトラックが整然と並んでいます。

ここでトラックはbáscula(台貫秤)という巨大な体重計の上を通過して重さを図り、貨物の検査を受けます。https://www.kamacho.co.jp/about_truckscale/

船で輸出入をするときは船荷証券(Bill of Lading)という受取証を運送会社が発行して、このBLを輸出者が輸入者に渡すことで荷物の受渡が行われるのですが、陸送での輸出の場合、BLの代わりにCRT(Conocimiento Rodoviario de Transporte)という書類がトラック会社から発行され、これが貨物の証券として通用します。

陸続きの南米大陸域内では、ALADI(Asociación Latinoamericana de Integración)という組織が域内貿易のルールも取り決めていて、こうしたウェブページも参照しながら出荷の準備を行う訳です。

https://www2.aladi.org/sitioAladi/facComTransporteLogistica.html

一方で、日本や南米以外の国々への輸出はパラグアイ川沿いにある川港から艀に乗せられて出荷し、ウルグアイやアルゼンチンの外洋港で積み替えられて仕向先に向かうことになります。輸入の場合も逆にアルゼンチンやウルグアイで川艀に載せ替えられて荷物が運ばれるために、沿岸部の都市よりは時間がかかりますが、ブラジルでも穀倉地帯のマトグロッソ州などよりは安価な物流網が形成されています。

パラグアイの税関は必ずしも国境脇に事務所がある訳ではなく、税関通過後に余計な貨物の出し入れが無いように、国境にはトラックの貨物を透視する大型スキャナーが設置されて不法な輸出入が行われない様に厳重に監視されています。

普通の生活の中では気付かないですが、こうした仕組みの御蔭で色々な品物が手に入る便利な生活が支えられていると思うと、道路では時として邪魔者扱いされるトラックにも感謝の気持ちが湧いてきます。

「7月16日発」

日本ではマイナンバーカードの導入が錯綜して政権運営にまで支障を来していますが、パラグアイでは今週、身分証明書(南米ではCedulaという呼称が一般的)とパスポートにICチップが埋め込まれたものが登場しました。

https://www.lanacion.com.py/pais/2023/07/10/identificaciones-expide-a-partir-de-hoy-cedulas-y-pasaportes-electronicos/

上の写真のイメージはICチップが露出している裏側で、表には本人の顔写真と氏名が記載されています。

日本のパスポートやマイナカードにはとっくにICチップが埋め込まれていますので、何を今さらという印象を持たれるかもしれませんが、身分証明書制度という点に絞ってみると、パラグアイでは1924年(大正13年)1月に、南米でも最初の身分証明書が交付されたようで、身分証明に個別の番号を振り当てるという制度は来年で百周年を迎える訳です。

https://www.hoy.com.py/nacionales/los-96-anos-de-la-cedula-el-documento-de-identidad-en-el-tiempo

これまでも何度も書いてきましたが、南米各国で古くから導入されている身分証明書は、銀行の手続きや病院のカルテ等、生活のあらゆる場面で本人確認に使われており、これがある御蔭で各種手続きが素早く行われます。日本のマスコミが何故斯様に国民の不安を煽る報道ばかりするのか?全く理解に苦しむところです。健康保険証でも運転免許証でもパスポートでも、既に個別の番号が振り当てられている訳で、これを統合するメリットは極めて大きなものです。逆にこれが導入されないデメリットの方が極めて大きいことを関係者は自信も持ってもっと周知すべきです。

ところで、先週末はお客様を案内して2019年12月以来3年半ぶりにアルゼンチンに行ってきました。

今回は拙宅から僅か40㎞のイグアスの滝アルゼンチン公園(イグアスの滝はブラジルとアルゼンチンの国境を流れるイグアス川の下流にあるので、両側に公園があります。)に出向いたのですが、以前は割と簡単に入国できた国境が大渋滞で、入国の手続きに1時間半もかかってしまいました。パラグアイ側を朝8時過ぎに出発したのですが、滝公園の入り口に着いたのは正午近く。現在パラグアイとブラジル・アルゼンチンは1時間の時差があって、伯・亜の方が1時間進んでいるので、パラグアイ時間で言うと11時前に到着した訳で、所要時間は約3時間。

日曜日はパラグアイ・ブラジル国境はほぼガラガラでスンナリ通過出来て、アルゼンチン国境までは途中で朝市見物をしても1時間で到着しました。しかし予想を超える国境超えの為に、肝心の滝見学に割く時間が短くなってしまい、お客様には申し訳ないことをしてしまいました。

ところで、昨日の日経新聞に「アルゼンチンの6月のインフレは115%」という記事が出ましたが、今回の日帰り旅行でも右肩下がりで下落を続けるアルゼンチン・ペソの凄みを実感してきました。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1402O0U3A710C2000000/?n_cid=kobetsu

このグラフだと右肩上がりに見えますが、それだけペソの価値が下がっているということです。

アルゼンチンでは絶対に日本やパラグアイのクレジットカードを使ってはいけません。このグラフでは本日の1ドルは265ペソということになっていますが、実際には日経の記事にあるように、並行レートでは500ペソを超えるペソ安相場となっている訳です。

因みにパラグアイ側国境のエステ市にはブラジルやアルゼンチンとの取引をするために沢山の両替商が店を構えていて、パラグアイの通過グアラニだけでなく、米ドルとブラジル・レアルやアルゼンチン・ペソといった近隣通過だけでなく、日本や台湾の通貨との交換も行っています。

https://www.cambioschaco.com.py/

https://www.bonanzacambios.com.py/

https://www.maxicambios.com.py/

https://www.mydcambios.com.py/

これらの両替商は独自の交換レートで集客に努めていて、そのレートが微妙に異なるのも面白いですし、同じ会社でもアスンシオンとエステ市ではレートが異なる(殆どの場合、需要の大きなエステの方が良いレート)というのも、周囲を陸続きの国境で囲まれたパラグアイの面白い特徴と言えます。一週間前に両替に行った時のレートは1ドル465ペソくらいでしたが、今や500前後となっていて、アルゼンチン通貨が如何に脆弱であるか良く判ります。実際、先週末の日帰り旅行で立ち寄ったスーパーマーケットでも、混雑した店内のお客さんは全員現金で買い物をしていました。ペソ紙幣は持てば持つほど価値が下がるので、早めに使ってモノに換えるのがアルゼンチンでの生き残り術なのです。

最後に宣伝です。

今年も日本ラテンアメリカ協会のオンライントークイベントでお話しをします。2023年7月27日(木)21:00-22:15(日本時間)、08:00-09:15(パラグアイ時間)(申込み締切:7月24日)

https://latin-america.jp/archives/58313

今回は今お手伝いをしている進出企業の現状について、また昨年末に引っ越したブラジル国境の街の様子などについてご報告する予定です。よろしければ是非ご参加ください。

「7月23日発」

パラグアイの西の端アスンシオンから東の端エステ市近郊に引っ越して半年以上が経過しましたが、アスンシオンが隣接していたアルゼンチンClorinda市が人口6万人強の寒村なのに対し、エステ市の川向うFoz do Iguaçu市は人口約30万人、イグアスの滝への観光客だけで年間150万人を迎え入れる為、経済規模は200万人のアスンシオン首都圏よりも大きいイメージで、週末ならクルマで30分で行けるので、かなり頻繁に国境を超えています。

で、ブラジルにクルマで行って感じるのは、高齢者idosoに対するサービスの良さ。駐車場には身障者・妊婦さん専用のスペースの他に、Idoso専用の場所があって混雑したスーパーでもクルマが停めやすい。そればかりか、滝や三国国境観光の入場料も通常の半額。

因みに何歳からidosoと見做されるかというと、なんと60歳から。総人口の三人に一人が60歳以上という日本ではありえない厚遇で、日曜日はブラジルに渡るのが週末の愉しみになっています。ショッピングセンターの映画館も半額。先週は久しぶりに土曜日と日曜日の二日間にわたって映画館に出向きました。

土曜日はパラグアイ側エステ市でインディジョーンズ、日曜日はブラジル側フォス市でミッションインポッシブル。パラグアイの料金は週末なので少し高くてGs.35,000=約700円という大人普通料金。ブラジルは高齢者割引適用で、R$17.1=約500円。

81歳のハリソンフォードも61歳のトム・クルーズも共にIdosoですが、銀幕の中では年齢を感じさせない大活躍。と言ってもインディの方はデジタル技術を駆使して代役がアクションしてた訳ですが。こういう風潮がハリウッドでのストライキの根底にある訳です。

ミッションインポッシブルのIMFは架空のImpossible Mission Forceですが、実在のIMF(International Monetary Fund)が世界のGDP成長率マップというのを公表しており、これが面白いのでご披露します。

https://www.imf.org/external/datamapper/NGDP_RPCH@WEO/OEMDC/ADVEC/WEOWORLD/GUY

緑色が濃いほど成長率が高いということで、パラグアイの色はベネズエラやガイアナと共に南米大陸の中では目立っています。

来週は日本ラテンアメリカ協会のオンラインイベントで、パラグアイの投資環境と三国国境の魅力についてお話しします。まだ参加できますので、御興味ある方はご登録ください。もちろん無料です。  https://latin-america.jp/archives/58313

改めて調べてみると日本でもシニア割引は存在しますね。

https://seniorguide.jp/article/1000805.html

「7月30日発」

パラグアイでは7月30日が友情の日El dia de la Amistadとなっています。そういう訳で、今日は色々なお店や道端で友達へのプレゼントが売られています。友人へのプレゼントで思い出すのはベネズエラの「秘密の友達」(Amigo Secreto)。記憶に定かでないのですが、11月になると事務所の中の幹事役が、くじ引きか何かで「あなたの秘密の友達は○○さん」と告げてきて、その友達にプレゼントを用意するように言われ、秘密の友達の日に皆でプレゼントを贈り合う(ただし贈る相手も貰う相手は別の人)という面白い習慣がありました。ラテンアメリカでは友情を非常に重視して、一度友人になると色々な意味でお互いを尊敬しあいます。

実は昨日、日本語でフェイスブックメッセンジャーへの友達アクセスが届きました。フェイスブックでは、知り合いが変なメッセージを送って来ることがあって、殆どの場合、アカウントを誰かの乗っ取られて怪しいサイトに誘導する、という悪用パターンが多いので、今回もこうした偽の友達候補だろうと思い、悪用パターンを見抜いてみようと何度か遣り取りしたところ、本人から直接電話がかかって来て、実在の人物であることが判明しました。彼は東京生まれの日本人ですが、幼少期に親に連れられて米国に渡り、今は整形外科医としてイエメンの平和維持キャンプで医療行為に従事しており、夜勤の合間にフェイスブックが紹介したこちらのアドレスにアクセスした、とのこと。AI=人工知能に関しては、最近は人間の仕事を奪い、大変な世の中になる、という警告記事を多く目にしますが、今回知己を得たA君は、人工知能が紹介してくれた初めての友人ということになります。

友情を示すAmistadをテーマに、2016年7月2日にも言葉をお送りしました。もう7年前の記事ですが、パラグアイのユニークな部分は変わっていませんので、再掲します。

==パラグアイの言葉 amistad(アミスタド)=友情 英:friendship 葡:amizade==

先週日曜に第二パナマ運河の開通式典が開催され、台湾の蔡英文総統が式典に出席、中国の習近平主席は早々に招待を断ったことが日本でも大きく報じられていましたが、蔡英文総統はパナマの後、パラグアイを訪問しました。このためにアスンシオン市内では幹線道路の両脇に青天白日満地紅旗が飾られ、至る所で歓迎式典が催されました。

http://taiwantoday.tw/ct.asp?xItem=245889&ctNode=2318

http://newsok.com/article/feed/1033352

左:蔡総統 右:カルテス大統領

台湾を独立国として認め、正式な国交を結んでいる国は現在僅か22カ国しかないのですが、パナマもパラグアイもその貴重な友好国に含まれて居ます。パラグアイと台湾とは1957年の国交樹立ですから、来年が60周年となる比較的新しい関係と言えます。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taiwan/data.html

この訪問を当地abc紙は「Amistades verderas」(真の二国間友好関係)と報じていますが、貿易分野では隣国のブラジルやアルゼンチンを押しのけて最大の輸入相手国となっている中国との外交関係が今後どのようになるのか?に大きな注目が集まる今回の蔡総統訪問であったのです。

http://www.abc.com.py/edicion-impresa/editorial/amistades-verdaderas-1494963.html

パラグアイには所謂チャイナタウンと言えるような場所はありませんが、中国人が多く集まるエリアでも、多くは台湾の人達で、この台湾人が中国大陸との貿易の懸け橋になっています。過去においては現カルテス大統領の前任ルゴ大統領が中国との国交樹立を目指した時期がありましたが、ルゴ氏は公私混同の行き過ぎで議会から弾劾され、その後の2013年選挙で実業家であるカルテス氏が大統領に就任した訳です。(次期東京都知事も実業家でしょうか?)

パラグアイと日本とは1919年に国交を結んでいますので、あと少しで日巴外交関係樹立100周年(今年は日本移民移住80周年)となる訳ですが、パラグアイと他の国の関係はどうなっているのでしょうか?台湾との国交を持っていると言う事は裏返すと中国とは正式の国交を樹立していない事を意味しています。一方で、パラグアイは北朝鮮とは国交を結んでいます。(ペルーでも拙宅の近くに北朝鮮大使館があって、独特の雰囲気を醸し出していました。)

パラグアイは南米でも小国ながら、外交における存在感は木曜日に行われたMercosur(南米南部共同市場)の会合でも十分に示されました。この会合で、次期Mercosurの幹事国としてベネズエラに順番が回ることをパラグアイ政府は拒否、民主主義の行われていないベネズエラの現状に正式に遺憾の意を表明し、左派同志で互恵関係あったアルゼンチンやブラジルとはハッキリと一線を画する態度を表明しました。

http://www.abc.com.py/edicion-impresa/politica/paraguay-rechaza-la-entrega-de-la-presidencia-del-mercosur-a-venezuela-1494628.html

これは長期間に亘ってチャベス政権と後継のマドゥロ政権の圧政に苦しむ多くのベネズエラ国民を大いに勇気付ける意思表示であると言えます。

一方、残念なことにアスンシオンにあったフランス領事館は本国の外交予算不足の煽りを受けて、6月20日に閉鎖され、先週から領事業務は全面的に在アルゼンチン大使館で執り行われることになりました。

http://www.abc.com.py/edicion-impresa/politica/el-consulado-frances-cierra-sus-puertas-en-asuncion-1489611.html

これは小国ゆえの経済効果の少なさが原因なのでしょう。

台湾は別名フォルモサと呼ばれますが、formosaというのはポルトガル語で「美しい、麗しい」と言う意味。16世紀に台湾を訪れたポルトガルの船員がこの地の美しさに感動してこの名が付いたそうです。多くの国と国交が無くてもしたたかに成長を成し遂げてきた台湾のように、パラグアイも他の南米大国に迎合することなく独自の発展を見せており、いずれ南米のFormosaと呼ばれるような気がします。

ところで今週の言葉Amistadですが、パラグアイ東端の街Ciudad del Esteとブラジルの滝の街Foz do Iguaçuとを結ぶ橋Puente de la Amistad(友情の橋)が1965年の架橋以来初の大改修工事を終えて本日全面再開通しました。先にお伝えしたアルゼンチン人が押し寄せるのは南端の街Encarnacionですが、友情の橋の改修でアルゼンチンから東街への流入が増えることでしょう。
(この橋はブラジル・パラグアイ国境ですが、ブラジル・アルゼンチン国境もすぐ南の橋で渡れます。)

先述の通り、今年は日本のパラグアイ移民80周年の記念の年で、これからも色々な行事が行われ、両国の友好関係が一層強化されることになるでしょうから、是非パラグアイの動きにもご注目下さい。

以   上