ガリシア人移民の農園主の7人の子の三女として生まれた著者は、三男のフィデルと三男のラウールという、後にキューバ革命を成し遂げその後現在に至るまで国家のトップにいる三人の兄をもっ。フアーナは兄たちの革命運動とゲリラ戦を支援していたが、革命政権がやがて共産主義に偏ったことを嫌い、反体制派支援にまわり、1964 年にキ ューバを脱出してメキシコに亡命し、65年からマイアミに在住して反カストロ政権批判を続けるが、70 年まで CIA と接触し支援を受けていたことを本人も認めている。
カストロ家の家族関係や愛憎や、フアーナがなぜ特にフィデルと対立するようになったかを、1999 年にメキシコ人ジャーナリストのコリンズとの膨大なインタビューで語ったが、その時はなぜか出版を拒絶した。奇しくもキュー バ革命 50 周年に当たる 2009年に再びその原稿の修正作業を行い、出版されたのが本書である。
この間の経緯やフアーナの目からみた三人の兄の実像、キューバ革命政権の変容、革命戦争を戦った男達の人となり(例えば、ゲバラは共産主義を持ち込み、工業相として原油開発の可能性を潰してソヴィエト連邦の援助に従属さ せ、最後は冒険者に戻ってキューバを去ったと酷評している)、なぜ CIAに協力し、その後離反したか、などをあか らさまに述べ、最後に最も親しかったラウールに「民主化への脱皮」を呼びかけている。もとよりファーナの一方的な言い分で描かれた部分が少なくないが、キューバ革命にっいて長年取材してきた訳者の8頁にわたる詳細な解説「畦ったキューバ革命の裏面史」があって、本書の内容の背景がよく分かるようになっている。
(フアーナ・カストロ マリーア=アントニエタ・コリンズ インタヒュー・構成 伊高浩昭訳 中央公論新社 2012年3月 491頁 3,300円+税)